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「かぐや」月に還る

 6月11日午前3時25分、月周回衛星「かぐや(SELENE)」は予定通り月面に落下しました。

JAXA:月周回衛星「かぐや(SELENE)」の制御落下結果について
朝日新聞:月探査機「かぐや」、役目を終えて月面に落下
時事通信:研究者「これからが本番」=解析待つ多数のデータ-「月の起源」解明に向け・かぐや

 落下予定時刻前に起きて、空を見てみました。空一面雲に覆われて、月の光すら見えませんでした。朝になり、ニュースで「かぐや」が予定通り落下したことを聞いて、思わず目頭が熱くなってしまいました。名前の通り、月に還った「かぐや」。「かぐや」も、「かぐや」の運用・開発・設計・打ち上げなどに関わった全ての方々に、本当にお疲れ様、ありがとうと伝えたいです。

 思えば、「かぐや」と愛称が付く前、搭載する名前とメッセージを募集していた時、このブログでも力を入れて宣伝しました。「かぐや」(当時は「SELENE」)のことをもっと多くの人に知ってもらいたい、「かぐや」のミッションや「かぐや」のこと、月や宇宙をもっと身近に感じてもらいたい。自分の名前とメッセージを載せることで、それが出来るはず…と思ったのです。それから、集まった名前は41万件。打ち上げられてミッションが開始されてからは、美しいハイビジョン映像や詳細な月面データに注目が集まり、「かぐや」によって私たちの月のイメージも塗り替えられたと思います。その41万件の名前とメッセージも、月に到着しました。私が生きている間に月へ行くことは無いだろうけど、名前だけでも連れて行ってくれてありがとう。

その時の記事:月に願いを…「セレーネ」プロジェクト +α
(2007.2.13)

 「かぐや」が月で運用中、月を見上げると「かぐや」のことを思いました。今も観測を続けているんだろうな。「かぐや」にはどんな風景が見えているのかな、と。「はやぶさ」もそうですが、ただの探査機に感情移入してしまう不思議な感覚…。そして、送られてきた映像や画像、データに驚いたり感動したり。それらの観測データは、まだ解析済みでないものの方が多いそうです。本格的な研究はこれから。「かぐや」が観測したデータを用いて、論文を書く研究者もいるでしょう。そして、月の謎が明らかになっていく。「かぐや」の運用は終わりましたが、「かぐや」による月の研究はまだ終わっていません。まだまだこれからです。今後の研究にも期待したいです。「かぐや」の解析データは、11月に公開されるそうです。楽しみ。

 最後に、ニコニコ動画に「かぐや」の最期に寄せた動画があったので載せておきます。観ていたら、また涙が…。今日の雨は涙雨だな。
ニコニコ動画:かぐや~「Last Night, Good Night」
 *ニコニコのアカウントがない方ははてな経由で→こちらから

「かぐや」月に還る_f0079085_229069.jpg

4月に撮影した月。

 「かぐや」の活躍が、今後の更なる月探査に繋がるように…。
(今月17日には、アメリカの月探査機「ルナー・リコナイサンス・オービタ(LRO)」が打ち上げられます。)






【以下追記】

 ネットを徘徊していて、「かぐやを何故月に落とすのか」「月に落としたらごみになるじゃないか」「月にごみを増やすな」という意見がかなりあって、正直がっかりしました。運用チームがそういうことを考えずに、月探査をしているわけがないじゃないですか…。では、何故「かぐや」を月に落下させたのか。調べてみました。「朝日小学生新聞」に詳しいことが書いてあったので、引用します。

Q(質問) いつ、どこにかぐやを落下させるの?
 A(祖父江さんの答え) 11日の午前3時30分ごろ、月の表側(月の東経80度、南緯63度付近)に落下させる予定なんだ。残りの燃料と月の表側に落ちるタイミングを計算して決めた。
 衛星を予定通りの時間・場所に落とす(制御落下)技術を確かめるのもかぐやの大事な使命の一つ。これからの探査ではこの技術が必要とされている。

 Q もし制御落下させなかったら、どうなるのかな?
 A 自然に月面に落ちるか、ぶつかるだろう。月の周りを回る人工衛星は、適当な間隔でエンジンをふかして軌道修正しないと、軌道が変わってしまう。月の重力の大きさが、場所によって違うからだ。
 かぐやの燃料はほとんど残っていない。軌道修正のためのエネルギーもあとわずかしかない。
 今もっとも月面に近いところで高度10~30キロの間を回っている。月の一番高い山は約10キロある。

 Q どういう方法で落下させるの?
 A エンジンをふいて、秒速数メートル減速させると、すべりこむように落下する。ちなみに、今、秒速1.6キロで飛んでいるよ。

 Q 月面に落下させたかぐやはどうするの?
 A 月面にそのまま残すんだ。地球に返すには行くのと同じだけの燃料がいる。月をできるだけ長く観測するかぐやの目的と、回収のための技術を考えると、今は月に残す方法をとるしかない。
 かぐやは、アルミニウム、シリコンなど、月にもある物質でできているから、残しておいても月の環境を変えてしまう心配がないんだ。燃料のヒドラジンは月にないものだけれど、酸素がなくても自分で燃える物質だ。これは落下時に燃えてしまうし、もし残ったとしても宇宙空間で蒸発するから問題ない。

朝日小学生新聞:かぐや 月周回衛星(6月8日)より


 ただ適当に落下させているわけではなく、狙った所に落下させる=今後、月にローバーや有人の月着陸船などを着陸させる時には必要な技術。それを実践しているのです。
 あと、月から回収できないのかという意見も見受けられますが、そのためには沢山の燃料を打ち上げの時から積み込む必要があります。その分だけ衛星は重くなり、ロケットの推力も増やさないといけません。さらに、衛星も重くなるので、その分観測機器を載せられなくなることも。「かぐや」が膨大なデータの観測が出来たのは、積み込んだ沢山の機器のおかげ。それを、サンプルリターンをするわけでもないのに帰還用の燃料で積み込めなくなったら、そっちの方が残念です。無駄なものは積まない。宇宙機にとって大事なことのひとつだそうです。

 また、落下させるにしろ、素材も選んであるんですね。今、月には「かぐや」の残骸がゴロゴロ転がっているというわけではないのです。

 以上、調べてみた結果でした。
by halca-kaukana057 | 2009-06-11 22:12 | 宇宙・天文

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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