数学ガール フェルマーの最終定理

 以前読んだ「数学ガール」の続編です。

数学ガール フェルマーの最終定理
結城 浩/ソフトバンク・クリエイティブ/2008


 数学をこよなく愛する才媛・ミルカさんと、数学にハマり始めたバタバタっ娘・テトラちゃんと、数式を解くのが趣味の"僕"、さらに"僕"の従妹で中学生のユーリも加わり、さらに数学の森へ深く進みます。「フェルマーの最終定理」というと、「3以上の自然数nについて、x^n + y^n = z^n となる0でない自然数(x, y, z)の組み合わせがない」(^nはn乗)という数学史上最大の難問とされた問題。何度か耳にしたことはあったが、なにがどうして大問題と言われてきたのか、よくわからずにいた。

 「フェルマーの最終定理」とタイトルにあるので、最初からフェルマーの最終定理を証明していくのかと思ったら、"僕"とユーリの星に関する話、そして数学クイズから始まった。この数学クイズが面白くて、とっつきやすかった。中学生のユーリが加わったことで、高校の数学を忘れかけている数学音痴の私も、考えながら読み進められました。

 これまで、数学は物理学や化学、天文学など「自然科学」とはちょっと違うなと感じていた。天文学なら、望遠鏡で天体を観測し、そのデータを調べて研究する。自然に存在するものを観察して、研究するのが「自然科学」だと思ってきた。こうじゃないかと予想理論をたてることもあるけど、それを実証するために実験・観察する。でも数学は、数は自然に存在するけど、数は無限に作ることもできる。負の数や虚数など、自然界には存在しない数も作り出す。人間の手で作り出すことも出来る。そこが、他の「科学」とちょっと違うなと私は感じていた。

 でも、この本を読んでそれは違うとわかった。数にも素数や偶数・奇数など様々な性質がある。その性質を研究し、新たな問題を発見し、それを証明する。また、負の数や虚数も新しく「定義」されたものだ。新しく定義された数や数式を研究し、また新しい問題を見つけ、さらに定義する。第9章でユーリが言ったように、無理やりこじつけるのではなく、数式で定義する。定義することで、数学の世界はさらに広がる。数学も天文学に似ていると感じた。数学も、最初は整数しかなかった。それが負の数、虚数、複素数平面、幾何学的数論と進歩してきた。天文学も、最初は地動説すら信じられていなかった。それが地動説が証明され、太陽系の惑星がどんどん見つかった。冥王星が惑星から外れたように、観測・研究が進んで定義も変わる。さらに銀河や星雲、星団、ブラックホールなど様々な天体の観測・研究も進み、ハッブルが宇宙が膨張していることを発見し、ビッグバン理論が生まれた。そして今はダークマターの研究が進んでいるように。数学者は今、最前線でどんな研究をしているんだろう?きっとワクワクするような研究をしているに違いない。

 フェルマーの最終定理も、そんな数学の様々な理論、定義を総動員した定理だということが分かった。代数と幾何を関係づけるように、理論も関係づけて証明する。何度読んでも、楕円曲線やモジュラー、フライ曲線が何なのかはよく分からない。でも、ユーリと同じようにわからなくても話を聞いていたいとページをめくった。わからないけど面白い。不思議な感覚だ。

 第1弾では数学入門者だったテトラちゃんも、数学の面白さにハマってゆく。その一方で、その問題を解くカギは持っているのに解けない悔しさを味わう。わかる。何もわからないから解けないよりも、途中までわかっているのにわからないのが悔しい。また、今回ミルカさんはテトラちゃんやユーリに問題を出す。その問題に対して、反射的に「わからない」と言うのに対し、「だめ。ちゃんと考えなさい」とバシッと言うのにドキッとした。私自身、ぱっと見て難しそうだと思うと、反射的に「わからない」と思考停止してしまう。間違うのが怖い、考えようとしていない証拠だ。間違っても、途中までしか理解できなくてもいい。考えずに「わからない、無理」と言わず、まずは考える。まずわからないことをひとつひとつ洗い出し、解明する。そしてわかったことをひとつひとつカギとして考えてゆく。まずは考える。その姿勢が大事なんだ。どんなに難しい問題でも、まずは考える姿勢で挑む。そうミルカさんに教わった。ミルカさんに感謝したい。

 以前読んだ「博士の愛した数式」(小川洋子)でも出てきた「オイラーの式」(オイラーの等式)についても出てきます。ユーリと同じく、完全には理解できていないし、美しいのかどうかもよくわからない。でも、この式には面白いもの、不思議なものが詰まっている。数式にひきつけられる感覚が、少しだけ味わえた。シンプルでエレガントな数式か…。ワクワクする。

 全編にわたって宮澤賢治「銀河鉄道の夜」の一節が引用されていて、賢治好きとして嬉しくなりました。数学の旅も、宇宙の旅と同じぐらい不思議でワクワクする。そして今回は鍵盤大好き少女・エイエイの登場回数も多くて嬉しい。スピンオフ作品として、エイエイ主役で「鍵盤ガール」なんて読みたいな…なんて。演奏は楽譜をなぞるだけじゃない。作曲家が作品に音として込めた想いや、演奏の楽しさと苦悩。うん、読んでみたいな…。誰か書いて(そこまで考えているんだったら自分で書けと言われそうな…。)


 「フェルマーの最終定理」と言えばこの本も。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

サイモン・シン / 新潮社


 歴史読み物感覚で読めるそうだ。買ってきた。さらに、第3弾「ゲーテルの不完全性定理」も発売。ゲーテル…聞いたことない。図書館に入るのが待ちきれないな。買っちゃおうかな。楽しみです。
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by halca-kaukana057 | 2009-10-30 23:37 | 本・読書


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