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「わからない」と放り投げる前に

 昨日の「原点を振り返って」の詳しい内容です。

 今ピアノはソナチネアルバムを進んでいる(実際は7番で滞っている)が、これは勉強のための曲と割り切って、楽しみのための曲を何かやりたいと考えた。楽しみのための曲、つまり、好きな曲。弾きたいと思っている曲。そう言えば、グリーグ「アリエッタ」以来そういう曲に挑戦してこなかった。ようやくピアノへの意欲が戻ってきた証拠か。

 さて、何を弾こう?と考えている間に、「数学ガール フェルマーの最終定理」を読んだ。この中で、数学を愛する才媛・ミルカさんが中学生のユーリに数学の問題を出すシーンがある。ミルカさんの出す問題は、一筋縄では解けない問題だ。そんな問題を出されたユーリは、反射的に「わからない」と答えるがミルカさんは「だめ。ちゃんと考えなさい」と言いきる。ユーリはそれまで出された問題をもとに考え、答えを出す。間違っていても、考え直して正しい答えを導く。答えを導いたユーリに対して、ミルカさんはほほ笑みかける。ユーリがその問題を自分で考え、答えを導くのをじっと待ち、見守っていたのだ。

 そんなユーリとミルカさんのやり取りを読んで、ハッとさせられた。自分自身も、ユーリと同じような行動をしているではないか、と。ぱっと見て難しそう、間違うのが怖いと感じると、思考停止して「わからない」「私には無理」と思ってしまう。だが、そこで出した「わからない」は、ちゃんと考えないまま出した答えだ。本当に考えたの?考えようとしたの?そのものの、本当の姿を見ようとしたの? …していない。

 これまで、色々な曲を「弾いてみたい」「憧れの曲」だと言ってきた。近い目標もあれば、遠い目標もある。だが、それら「弾いてみたい」曲の多くに、私はまだ手を付けていない。楽譜を見て、ぱっと見て「わからない」と思考停止してしまっていたからだ。弾いてみたいのに、憧れているのに、「わからない」「まだ無理」と、ちゃんと考えもせずに諦めるなんて…嫌だ。好きだから、それらの曲をCDで聴く。いいなぁ、好きだなぁ、演奏できたらいいなぁと思う。やっぱり好きなんだ。憧れに、少しでも近付きたいと思う。その気持ちは変わらなかった。

 「数学ガール フェルマーの最終定理」を読んで、私の心は決まった。弾きたいと思い続けている曲、憧れの曲に取り組んでみようと。ぱっと見難しそうな楽譜でも、「わからない」と放り投げない。まずは譜読み。何がわからないのか、具体的に、どの部分がどうわからないのか。曖昧なままにしないではっきりさせよう。音、音の長さ、指使い、拍子、記号…。ひとつひとつ、紐解いてみよう。その作品に、正面から向き合ってみよう。

 以前、「この鍵盤の向こう側」の記事で、私にとってピアノ演奏とは、楽曲を「演奏できるようになる」ことがゴールではなく、その作品を演奏することを通して、音楽の歴史や作曲家が作品に込めた想いや考えを読みとり表現したいと書いた。その気持ちは、今も変わらない。偉大な作曲家たちが言葉ではなく、音楽で表現した想いを、楽譜を読み込んで知りたい。演奏でそれを表現したい。そのためには、「わからない」で終わらせず、ねばり強くひとつひとつ楽譜を読み込むことが必要だ。


 さて、では何の作品に取り組むか。色々考えたが、やっぱりあの曲が弾きたい。

 私の最大の憧れの曲、シベリウス「樅の木」(「5つの小品(樹の組曲)」op.75-5)。

 約1年前、弾こうと挑戦したが挫折した。でも、今度は挫折しない、挫折したくない。まずは「弾くこと」は考えず、楽譜を読み込むこと、楽曲を読み解くことから始めよう。あの嵐のようなアルペジオも、楽譜を見て「無理だ…」と放り投げたくなるが、今度は放り投げない。あのアルペジオもひとつひとつ音を読んでいけば、何か見つけられると思う。これまで、「樅の木」は何度もCDで聴いてきた。交響曲第4番と第5番の間に作曲された後期の作品で、ロ短調の深い静けさが魅力。…という作品に関する情報は知っている。でも、本当にこの作品の全てを知っているのか、知ろうとしてきたのか。最大の憧れの曲と言ってきたが、私は随分と後ろ向きな態度だったことを自覚した。

 現在、14小節目まで譜読みして、片手ずつ音をとってみている。実際に音をとってみて、こんな音で構成されていたんだ…と気づくことがいっぱいある。たった14小節なのに。実は3声で、中音部がメロディーになっているとか、左手の低音がこれまで弾いたことがないような低さで驚いたり。CDで聴いた時は気が付かなかったけど、実際に弾いてみると「あれ?こんな音だっけ?」と思うところもある(読み間違いしていないか、何度も確認しちゃったよ)。これから、読み進めていけばさらに発見は増えるだろう。あの澄んだ、暗い、静かな深い音色の秘密を、ひとつひとつ味わいかみしめながら、紐解いていきたい。

 最後にもう一度言いますが、今は「樅の木」を「弾くこと」を目標にはしてません。まず、しっかりと譜読みして、「わからない」箇所を無くすことが目標です。


 ソナチネ7番は続けます。第1楽章はひとまず置いておいて、2・3楽章に進もう。2楽章のトリルもハマると面白いです。きれいに、コロコロと弾きたいなぁ。

 無駄に長文になりました…。お付き合いくださり、ありがとうございます。
by halca-kaukana057 | 2009-11-04 22:00 | 奏でること・うたうこと

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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