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初音ミクと「あかつき」キャンペーン

 このブログで何度も取り上げている、金星探査機「あかつき」メッセージキャンペーン。当初、12月25日締め切りだったのが、2週間延びて来年1月10日までになりました。まだの方は、是非!

JAXA:「お届けします!あなたのメッセージ、暁の金星へ」~「あかつき」メッセージキャンペーン~の募集期間延長について

 この「あかつき」メッセージキャンペーンで、面白いムーヴメントが起こっています。ニコニコ動画を中心に、色々なメカニックを作ったり、実験したりしているモノづくりが好きな人々(プロもいますし、アマも頑張ってます)が集う「ニコニコ技術部」。その「ニコニコ技術部」メンバーで人工衛星を作って、宇宙へ飛ばそう(本気で)というプロジェクト「ソーシャル・メディア衛星開発プロジェクトSOMESAT」。その「SOMESAT」のメンバーである「超電磁P」ことエンジニアの森岡澄夫さんが中心となって、「ニコニコ技術部」「SOMESAT」のマスコット的存在のキャラクタであり、音声合成・デスクトップミュージック(DTM)ソフトウェアであり、ヴァーチャルシンガーである「初音ミク」のイラストを「あかつき」に載せようと、ネット上で名前・メッセージを集めています。

ニコニコ技術部wiki:匿名100名募集! ミク絵を金星探査機に貼りませんか?
金星探査機「あかつき」に初音ミク絵を搭載する署名プロジェクト 応援ページ
↑ここから署名ページへ行けます。英語、ロシア語、フランス語、ハングル、中国語にも対応!

 「あかつき」へのメッセージは個人でも応募できますが、団体での応募も受け付けています。A4サイズの用紙に団体名、個々人のメッセージと名前を記入したものを送ると、それがアルミプレートに刻印されて「あかつき」に搭載されます。メッセージと一緒に描いたイラストも、白黒ですが刻印されます。この団体応募を活用して、集めた名前・メッセージ、「初音ミク」のイラストを団体として参加・応募し、載せてもらおうという計画です。

 当初は100人のつもりでしたが、ネット上でどんどん話が広がり、さらに海外からも参加する人々まで出始め、現在6000名以上の名前・メッセージが集まっています。この活動に対して、JAXA広報担当の阪本成一先生から、1万人を越えたら搭載予定のアルミプレート100枚のうち1枚貸切OKと。

 勿論、これまで個人で応募された方の参加もOKです。現在も募集中。ミクと一緒に金星へ、いかがですか?応募は上記ニコニコ技術部wiki特設ページからどうぞ。



 この活動に対して、ネット上で賛否両論が出ています。初音ミクを載せる意味はあるのか、オタクの暴走だ、世界に対して恥さらしだ、ふざけている等など。ここからは、私の考えを書きます。少し長くなります。





 まず、この初音ミク「あかつき」キャンペーン(略して「金星ミク」)にはおおむね賛成です。実際、私も参加しました。以下、賛成である理由を書きます。

 まず、宇宙開発を幅広い層の人々にアピールするきっかけとなるから。
 宇宙や天文の話題は、普段それに興味がない人にとっても、時に魅力的なものとなります。例えば、今年7月22日の日食。多くの人々が空を見上げ、部分日食を観察したり、天気が悪かった地域の人もテレビ中継で皆既日食の様子を楽しんだり。先日のふたご座流星群も話題となり、コミュニティサイトの注目ワードランキング1位になりました。私のこのブログの、ふたご座流星群に関する記事も、多くのアクセスをいただきました。

 しかし、そのような大きな宇宙・天文イベントがなければ、興味のある人しか動かないのも現実です。JAXAはこの「あかつき」キャンペーンの他にも、「きずな」クリスマスメール、「イカロス」メッセージキャンペーンなど、一般の人々が気軽に参加できる広報イベントを数多く企画しています。ネット上だけでなく、筑波や相模原など各施設の一般公開も年に1・2回行っていますし、JAXAの職員・研究者たちが全国行脚して一般市民と意見交換する「JAXAタウンミーティング」も各地で開催されています。先日は宇宙関係機関・企業などが一緒になって、宇宙や科学技術の最先端について紹介するイベント「宙博ソラハク2009」も開催され、大盛況だったそう。このように、色々な手を尽くして宇宙研究・開発・技術をアピールしているけれども、やはり、食いつくのは興味のある人々。JAXAの公式サイトでどんなにアピールしても、公式サイトを定期的に見ているのも、興味のある人が中心だと思う。

 興味がない、それは確かに仕方ない。でも、宇宙研究・開発・探査は科学者や技術者たちだけのもの、宇宙に興味を持っている人々だけのものではない。空を見上げればそこに宇宙がある。確かに、専門的な内容は難しいし、私も興味は持っていても理解しきれていないことは多い。「あかつき」の技術的な仕組みや、金星のことも、知らないことが沢山ある。でも、知らない・わからないからといって、拒絶されているわけではないと思う。むしろ、プロジェクトに関わっている科学者・技術者たちは、もっとたくさんの人に、少しでもいいから知ってもらいたいと思っているのではないだろうか。だからこそ、こういう広報イベントが存在する。宇宙はどうなっているのか。宇宙を知って、わかることは何か。広報イベントをきっかけに、それを考えてほしいと、願っているのではないだろうか。

 それでも、広報イベントに参加する人の層・幅には限界がある。だから、より多くの層に訴えられる存在、懸け橋となってくれる存在が必要だと思う。今回は、「ニコニコ技術部」「SOMESAT」が中心となったので、そのマスコット的キャラクタである初音ミクが選ばれた。これが「ニコニコ技術部」「SOMESAT」が中心でなかったら、別の懸け橋となるキャラクタや人物になっていた可能性もある。「金星ミク」のおかげで、「あかつき」や「あかつき」キャンペーンのこと、金星探査のことをより幅広い層にアピールすることが出来ている。ただ、「初音ミクを金星へ!」で終わらずに、「あかつき」そのもののことも知ってほしい。「金星ミク」に参加するだけでなく、個人として、または学校や職場など他の団体で「あかつき」キャンペーンに参加することも大切だと思います。(ここが「おおむね」賛成の理由。ミクだけで盛り上がるのはどうかと思う)


 そしてもうひとつの理由。宇宙開発に新たな風を吹き込みたいから。
 宇宙研究・開発というと、真面目な科学者や技術者たちが日常生活から離れたところでやっているというイメージがあります。私も、そんなイメージを持っていたことがありました。興味はあるけど、そこで研究されていることは遠い宇宙のこと。でも、そんな「中の人」科学者や技術者たちも同じ人間。仕事に遊び心も持ちたいと考えている。例えば、「はやぶさ」などを打ち上げた日本の固体ロケットM-Vやそれ以前の固体ロケットシリーズの「性能計算書」の表紙には、お酒のラベルのパロディがデザインされている。また、電波天文衛星「はるか」のプロジェクト名「VSOP」は、お酒好きな天文学者たちがお酒の名前に絡ませようと、無理やりこじつけたものだそうだ。

 宇宙開発・研究にも、ちょっとしたユーモアや遊びがあっていいと思う。親しみを感じられるし、そこからまた新たな活動の可能性も広がる。人々の宇宙開発・研究への見方も変わるかもしれない。この「金星ミク」で、何かが変わるかもしれない。それに期待してみたい。

 また、宇宙研究・開発を応援する方法が増えたというのもある。ひとりひとりの声も、集まれば大きな声になって、「中の人」に届くだろう。宇宙は私たちから物理的にも心理的にも「遠い」ところにある。でも、その心理的な距離を少しでも短くすることは可能だと思う。

 以上、私の意見でした。
 「金星ミク」だけでなく、「あかつき」も応援してね。これが私の最も言いたいことです。
by halca-kaukana057 | 2009-12-17 23:44 | 宇宙・天文

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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