天にひびき 1

 少し前に、おもしろいクラシック音楽漫画がはじまったと聞いたのですが、その単行本が出ました。読んでみました。

天にひびき 1
やまむらはじめ/少年画報社・ヤングキングOURS/2009

 ヴァイオリンを習う少年・久住秋央(くずみ・あきお)。彼は幼馴染の美月の父がコンマスを務めるオーケストラの練習を美月と見ていた。しかし、客演指揮者の曽成とオケの息は全く合わない。休憩後、練習場にやってきたのは曽成ではなく、彼の娘だという秋央と同い年くらいの少女。その少女は父の代理だと言って、いきなりオケを指揮し始めた。それまでの練習とは全く異なる音、演奏をするオケ。そしてその演奏と、少女の指揮に魅了された秋央。
 それから9年。秋央は音楽大学に入学し、ヴァイオリンを学ぶ。思うような演奏ができず、思い悩む日々が続いていた。そんな秋央は新入生歓迎会に誘われる。会の途中、遅れてやってきた指揮科の1年生、曽成ひびき。9年前、あの指揮をした、あの少女だった…。


 クラシック音楽漫画といえば、あとがきでやまむら先生ご自身も書いているとおり、先日連載が終了し映画が公開中の「化物タイトル」(あとがきより)がある。やまむら先生も連載を始める前は、かなり迷ったらしい。クラシック音楽を聴くのは好きで、趣味だけど、それを題材に仕事として漫画を描いていいのか。結局編集部の粘り強いアタックと、取材で話した演奏者たちの話に感銘を受けて、連載を始めたそう。勿論クラシック音楽漫画は他にも何作品もあり、それぞれ個性的な音楽家たちを描いている。いろいろな漫画家が、それぞれの視点で、考えで、さまざまな方向からクラシック音楽の世界にアタックするのは大歓迎だ。この「天にひびき」もバンバンやってほしい。読んで、まずそんな感想が出てきました。

 さて、内容。ひびきちゃんがとにかく可愛い。父の代理だと言って、説明もなしにいきなり指揮を始めてしまう。オケの団員も気がつけば演奏をしている。指揮をしているひびきちゃんの表情の豊かさ。目線、しぐさの多様さ。活き活きとした指揮に、私も引き込まれてしまった。オケを導き、どんな音を奏でたいかイメージし、演奏者たちにそれを指示する指揮者。指揮者にもいろいろなタイプがある。指揮の仕方にもいろいろある。先日のVPOニューイヤーコンサートのプレートルのように、あまり動作はしないが目線で合図するという指揮者もいる。どういう指揮がベストとは言えない(演奏者もだけど)。この1巻を読んだ後、「はて、指揮者ってどういう存在なんだろう?」と考え込んでしまった。今も答えを出せていない。でも、同じ楽曲でも指揮者が違うと演奏はまるで違う。ありがたいことに、この漫画には作曲家の吉松隆先生による「指揮者のお仕事」コラムがついている。漫画本編とコラム、そして自分の耳でさまざまな演奏を聴きながら、指揮者がどんな存在なのか、指揮者はどんなことを考えて音楽に向かっているのか、考えてみたい。

 一方、そのひびきの指揮に魅了され、その音を出したいと思いつつも求めれば求めるほど違うものになってしまい、模索中の秋央。レッスンでも先生にダメ出しされてばかり。秋央の演奏に対する悶々とした悩み方は、自分を見ているよう…。ひびきと再会した秋央は、ますますひびきの音楽に魅了され、理想の音への遠い遠い距離に失望し焦りながらも、少しずつ変わってゆく。秋央が音楽に対して思いつめていく様、そしてひとつの答えを出し一歩を踏み出したのに、共感する。今後、秋央がどう変わっていくのか楽しみ。

 そして、ひびきのこの言葉に「その通りだ!」と感じた。
そっちはいつだって演奏できる自分の楽器があるでしょう! ね!
自分の音楽を探すことはいつだって出来るって事よ!
指揮者ってのはさ いつもそばに自分の楽器(オケ)がある訳じゃないんだから
つまり 私が思う様な音楽を奏でられるのはまだまだ先ってこと!
それだって絶対確実って訳でもなし…
でも だからこそ
だからこそ強く つよく 自分の内に音楽を奏でておかなくちゃなんないんだ
(210~212ページ)

自分の演奏できる楽器がすぐそばにあって、演奏できるということは、とても幸せなこと。以前twitterで生演奏を聴くことについて話していたことがあったのだが、その時「自分の楽器を持っていて、それを演奏できる。つまりいつでも自分で演奏して、生演奏を聴くことができるって、恵まれていることなんだな…」と思った。まさにそれ。指揮者を目指すひびきにとって、楽器はオーケストラ。自分で演奏する訳ではなく、それぞれの楽器を演奏する演奏者たちをまとめなくてはならない。すぐに演奏して、自分の音楽を形に出来るとは限らない。だからこそ難しいし、指揮をする前に音楽のイメージ作りをする必要がある。天真爛漫でカラッとした性格に見えるひびき。でも、その内にどんな音楽を蓄え続けているのか。ひびきの指揮に関する話は2巻以降かな。9年前とどう変化したのか、成長したのか、楽しみです。

 秋央とひびきの他にも、個性的な音楽家たちが続々。ひびきと同じ指揮科の梶原。ちょっとKYなところがありますが、今後どんな音楽に対する考えを見せてくれるのか。秋央と同じヴァイオリンの深音(みか)さん。美人です…。一方、渡欧した美月ちゃんはいつ帰国するんだろう。そして、ひびきの父・曽成が最後のコンサート後にひびきに言ったあの言葉。気になります。

 ということで、2巻を待ちます。
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by halca-kaukana057 | 2010-01-05 22:35 | 本・読書


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