作曲作品に込めた、シベリウスの見た風景

 先日、久々にコンサートへ行ってきました。ピアノと声楽のリサイタルだったのですが、後半がなんとオール・シベリウス・プログラム。しかも、「5つの小品(樹の組曲)」op.75も。つまり、「樅の木」op.75-5を生で聴ける…!シベリウス作品を生で聴いたのは、これまで一度だけ。市民オケの「フィンランディア」でしたが…感想は割愛します。2度目のシベリウス作品コンサート。op.75以外には、歌曲を。聴いたことのない作品です。楽しみです。

【プログラム】
シベリウス:5つの小品op.75
(ピヒラヤの花咲く時、孤独な松の木、はこやなぎ、白樺、樅の木)
:歌曲集「6つの歌」op.88
(青いアネモネ、二本のバラ、白いアネモネ、アネモネ、いばら、花の運命)
:水仙 JS140(1925)
/駒ヶ嶺ゆかり(メゾソプラノ)、相馬泉美(P)


 まず、「5つの小品」op.75.第1曲「ピヒラヤの花咲く時」の冒頭のささやくような甘い音から、すっかり音とその表現する風景の世界にハマってしまいました。何度も書いておりますが、「ピヒラヤ(Pihlaja)」とは、フィンランド語で「ナナカマド」のこと。そのナナカマドの白く小さな花が、春のそよ風に揺れて、甘い香りがしてくるような…そんな風景が心に浮かびました。第2曲「孤独な松の木」。こちらは低音が響く作品。松の木といっても、日本の松のように曲がりくねった松ではなく、フィンランドの松はすっと真っ直ぐなのだそうです。第3曲「はこやなぎ」は日本だとポプラにあたります。葉が風に揺れてさらさらと音を出している様が浮かびます。第4曲「白樺」。このコンサートを聴いた日は晴れて、白樺の白い幹と青々とした葉が初夏を思わせました。この「白樺」は難しいです。指使いも見ていたのですが、手の交差も多いし高音のキラキラした音を出すのは、ただ鍵盤を押しただけでは出ないかと。そして第5曲「樅の木」。現在練習は休んでいますが、これまで譜読みをして練習したのを覚えていて、音や指使い、楽譜が頭の中に浮かんできました。低音は本当に魅力的です。

 op.75を全曲、生で聴いて、「樅の木」だけでもまだ本格的な練習を始められていないのに、op.75を全曲通して演奏できたら…と思ってしまった。op.75に出てくる木々は、シベリウスの身近にあったもの。私の住んでいる地域でも、5つのうちの3つは身近で見ることができる。シベリウスが見たであろう風景と、私が見ている風景。それを、演奏することで重ねあわせ、つなげられるのではないか…。もちろん、フィンランドと日本は違う。いくらシベリウスは20世紀半ばまで長生きしたからといっても、時代も違う。それでも、作曲家が遺した作品で、私たちはその想いや考え、音に何を込めたかったのか。何を見て、感じていたのか、紐解くことができる。直接通じ合わせることはできないけれど同じような気持ちを、その作品を演奏することで託したり、作品を聴くことで感じたり自分に重ね合わせることができる。op.75を全曲演奏して、シベリウスの見ていたであろう風景を見たい…。そう強く感じました。
 思うだけなら簡単なのですが…。「白樺」なんてどうするんだ、おい。まぁ、今すぐでなくてもいい。最近よくこの言葉を書くけれども、小さくてもいい、ずっとその灯を、心の中にともし続けていたい。いつかチャンスが来るかもしれないから。


 さて、次は歌曲集。この「6つの歌」op.88は全て花の名前がタイトルに。しかもやけに「アネモネ」が多い。駒ヶ嶺さんが解説してくださったのですが、フィンランドで春になると一番に咲くのがアネモネなのだそう。なので、フィンランドの人々はアネモネを、春を告げる花だと大切にしているそうです。最初の3曲はF.M.フランセンの詩、あとの3曲はフィンランド国歌でもお馴染みのルーネベルイの詩です。歌詞は全てスウェーデン語。歌詞がわからないので、ただ、曲と歌だけをじっくりと聴いていました。曲はシベリウスの雰囲気が感じられます。特にルーネベルイの3曲。

 声楽のコンサートのよいところは、歌詞がわからなくても、歌声や抑揚、迫力や微妙な強弱、歌手の表情などで、歌詞を補えるところだと思う。声楽を聴くなら、一度はコンサートで、生で聴くことをオススメします。CDで聴くのもいいですが、生だと、本当に会場の空気を伝わって声が響いているのが感じられます。

 最後の「水仙」。作品番号が付けられていない、超マイナーな作品です。勿論知りませんでした。作曲年は1925年。シベリウス晩年の作品です。シベリウスが若い頃を思い浮かべて書いた作品なのではないか…と駒ヶ嶺さん。水仙に対して自分が持っているイメージと、この作品でのイメージが異なっていて面白かったです。

 ちなみに、駒ヶ嶺さんは「日本シベリウス協会」理事。シベリウスのエキスパートです。知っている作品も、知らない作品も、たっぷりとシベリウスに浸かれました。シベリウスといえば交響曲や数々の交響詩です(私もそう思います)が、ピアノ小品や歌曲といった小規模な作品も、身近に感じられていいな…と思ったコンサートでした。

 ちなみに、「6つの歌」op.88の歌詞はこちらをどうぞ。
梅丘歌曲会館「詩と音楽」:ジャン・シベリウス 「 6つの歌 Op.88 」
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by halca-kaukana057 | 2010-06-18 23:24 | 音楽


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