【8.23はやぶさ講演会】 「はやぶさ」川口先生講演会レポ

 本題です。小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーである、川口淳一郎先生の講演会レポです(運よく入場することができました。感謝)。川口先生のお話を生で聞くのは、2年前の「JAXAタウンミーティング」以来。あの時はまだ、「はやぶさ」が地球へ帰還できるかどうか、「はやぶさ2」もどうなるか、未定なこと、心配なことも多い時期でした。それでも、その時川口先生のお話を聞いて、ますます応援しようという気持ちになりました。そして、今年6月13日、「はやぶさ」は幾多のトラブルを乗り越え帰還。カプセルも無事回収され、現在分析のための微粒子の回収作業が続いています。帰還し、そのミッションを成し遂げることが出来た「はやぶさ」(カプセルにイトカワのサンプルが入っているかはまだまだわかりません。でも、それも楽しみのうち)。運用は終了して、川口先生がどんなことを語られるのか、とても楽しみにして行きました。

・2年前のJAXAタウンミーティングのレポ:宇宙教育とはやぶさ JAXAタウンミーティングに行ってきた

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講演会チラシ。例の「イトカワぱん」も一緒にw
(「イトカワぱん」レポはこちら:小惑星イトカワ丸ごと回収!? 「イトカワぱん」を食べてみた 【8.23はやぶさ講演会:番外編】)
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講演会チラシ裏。プログラムとプロフィールなど。

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 会場には、大勢の人が。若い学生さんから、お年寄りまで年齢層は幅広く。JAXAタウンミーティングの時は、高校生が中心であとは大人が4割程度だったのに。「はやぶさ」に、こんなに多くの人が関心を持っているのだなぁと思うと、嬉しくなりました。

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 壇上の幕。垂れ幕の横のお花が気になる…
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 これって、まさかイトカワ…?うん、イトカワに見えるw

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 壇上には、「はやぶさ」模型もありました。特注したそうです。ブレブレ写真で申し訳ないです…(私自身の撮影技術を磨かないとなぁ)。

 講演会の司会進行は、川口先生の母校である県立弘前高校放送部の生徒さん。県内屈指の放送部だそう。とても爽やかな声で、うまく司会していました。川口先生も、放送部に所属していたそうです。大先輩の講演会の司会を出来るなんて、嬉しいだろうなぁ。

 講演会に先立ち、川口先生への弘前市名誉市民賞授与式がありました。市長さんの挨拶などの後に、川口先生も受賞の挨拶。この挨拶の前に、中学生から花束を贈られた川口先生。そのまま挨拶へ。あれ?この花束持ってくれる人いないの?ときょろきょろされてましたw(私もw)
 挨拶では、本当は賞は辞退しようと思っていたこと、もっと静かに故郷に帰ってきたかったけれども、若い人や弘前の人にとって刺激になれば、と。更に、花束を持ったままのせいか、「引退会見のようになっているのですが…」と苦笑いしつつも、これからの科学技術・宇宙開発を担う若い人材を育てていきたいと話されていました。

 授賞式の後、講演へ。講演の詳しい内容は、後述します(とても長いので)。大まかな内容は、小惑星サンプルリターン計画立ち上げから、「はやぶさ(Muses-C)」プロジェクトスタートへの経緯。「はやぶさ」は何を目指したのか。「はやぶさ」はロボットであること。イオンエンジンの仕組み。小惑星を探査すると何がわかるのか。「はやぶさ」打ち上げから地球スウィングバイを経て「イトカワ」へのタッチダウン、タッチダウン後の通信途絶と復活、帰途でのイオンエンジン異常とどう回復させたか、そして帰還・カプセル回収。現在絶好調飛行中のソーラーセイル実証機「IKAROS(イカロス)」と「はやぶさ2」。これまで川口先生が携わった数々の宇宙探査計画や、プロマネとしての「はやぶさ」運用での、津軽出身としての”気質”。「はやぶさ」を経て、これから、日本の科学技術・宇宙開発をどうしていきたいか…。

 講演で感じたのは、「挑戦すること」の意義。「はやぶさ」計画の元となる小惑星探査計画が宇宙科学研究所(ISAS:まだJAXAとして統合される前の宇宙研)で立ち上がったはいいが、NASAと共同で研究を進めていたのに、NASAは小惑星にランデブーして探査する計画をさっさと独自で立ち上げてしまった(「ディープスペース1号」)。日本は深宇宙・惑星探査はビギナーだった時代。「NASAに計画を盗られた!」と感じて、NASAでもためらうような計画を立ち上げないと太刀打ちできない…とハッタリ半分でスタートしたのが「はやぶさ」でした。でも、当時はイオンエンジンもなく、「はやぶさ」のイオンエンジン(「μ10」)が開発されるまで18年かかった…。宇宙探査・宇宙開発は計画しても、すぐに実現できるとは限らない。技術的な問題、予算の問題、他のプロジェクトとの兼ね合い。探査機が出来ても、打ち上げるロケットもなくてはならない。だから、とても時間がかかる。それでも、新しいことに挑戦する。「挑戦しないと、新しいことは出来ない」という川口先生の言葉が印象的でした。実際打ち上げられた後も、度重なるトラブルを試行錯誤で乗り越えてきた。不安要素はあるけれども、全部が壊れたわけじゃないから、とにかくやってみる。「はやぶさ」だけでなく他の探査機・人工衛星の運用でもそうですが、宇宙開発は様々な分野の専門家が集まって、知恵を絞って、地道に地道に運用しているのだなと感じました。

 また、生まれ故郷である弘前…津軽地方の人の気質を象徴する言葉として、「じょっぱり」という言葉も。津軽弁で「非常に頑固な、強情な、簡単に考えを曲げようとしない」という意味合いの言葉です。基本的にはネガティヴな意味合いで使われますが、最近では「こだわる」と同じようにポジティヴな意味でも捉えられるようになってきました(例えば、版画家の棟方志功は典型的な「じょっぱり」かと)。その「じょっぱり」…何が何でもやり通す信念が津軽出身者として息づいているのかもしれない、と。まさに「はやぶさ」の運用は、何が何でも帰還させる、何が起こっても諦めないという運用チームの気持ちがダイレクトに伝わってきました。その根元に、もしかしたら川口先生の「じょっぱり」もあったのかな…?科学技術の最先端である宇宙機の運用にも、人間の感情や気質も関係する、のかもしれない(あくまで私の考えです)。不思議なものだなぁと感じました。
 このあたりに関しては、NHK青森放送局のサイトに、川口先生のメッセージが載せてあるのでそちらをどうぞ。
NHK青森放送局:青森から宇宙へ はやぶさ 地球帰還:青森のみなさま

 ちなみに、この日、NHK青森放送局で独占インタビューをしたのですが、そのインタビュー動画もあります。9月22日までの限定公開です。川口先生が語ってます。
NHK青森放送局:青森から宇宙へ はやぶさ 地球帰還:独占インタビュー

 「はやぶさ」などのことを一通り復習してから講演に臨んだのですが、難しいと感じる部分もありました。まだまだ勉強不足だと痛感。それでも、生で、川口先生ご本人の言葉で、「はやぶさ」の帰還とこれからの深宇宙探査についてのお話を聞けたのは、本当に嬉しかったです。2年前のJAXAタウンミーティングでの講演の結びの言葉がこの2つでした。
・JAXAは、「はやぶさ」の前途は、まだまだ厳しいですが、なんとか地球帰還にむけて努力して参ります。
・若人には、わきたつような意欲をもって、挑戦を求めてほしいと思います。それが未来を拓くはずです。

 「はやぶさ」が無事帰還して、この言葉を読み返すと、何とも感慨深いです。講演中の川口先生の表情も、いつもの落ち着いた冷静(だけど内容は熱い)な語り口調ではありますが、清々しさを感じました。何より、会場の聴衆の方々が、熱心に聞いている。メモをとる人も多い。「はやぶさ」がどれだけ注目されたかを実感しました。講演の最後のほうで、今後の科学技術・宇宙開発についても触れていましたが、「はやぶさ」で終わり、または「はやぶさ2」を実現したら終わり、なのではなくて、科学技術は長い目で続けていく必要性があるということが今回の講演で伝わればいいなと感じました。

 この講演会は夜開催されたのですが、昼間には小学生対象のイベントもあり、「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」の上映(普通のホールなので、平面スクリーンでの上映)と、小学生たちから川口先生への質問コーナーなどがあったそうです。ニュースで様子を観ましたが、そっちにも参加したかったなぁ(大人一人だけどw)。こどもたちが川口先生のお話をどんな表情で聞いていたか、何を感じたのか、その場にいたかったです。

 講演が終わって、ホールを出ると、空には月が。あの月よりも遠くから「はやぶさ」は還って来たのだな、そしてこれからもあの月よりももっと向こうを目指すのだなぁ…と感じながら、月を見ながら歩いた夜でした。





 ここから、講演会の詳細です。

 会場は撮影可だったので、パワーポイントも大方撮影してきました(途中切り替えが速くて、撮影できなかったところも)。あとはひたすらメモ(正確ではないですが…)。それらを元に、講演内容を箇条書きにします。(括弧で私の補足を入れます。強調部分は太字やアンダーラインで書きます)

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○「はやぶさ」の成果を実感して欲しい
 ・「はやぶさ」は、人類史上初の、地球圏(深宇宙:月よりも向こう)以外の天体に離着陸し、帰還した宇宙機。
 ・「はやぶさ」のカプセルを相模原、筑波、東京丸の内で展示したが、このカプセルは実際に天体に行って戻ってきた「本物」。アメリカのスミソニアン博物館には、アメリカの宇宙開発の歴史と誇りを示すために、数々の本物が置いてはあるが、アポロの月着陸船は模型。他の天体へ行って戻ってきた「実物」を置いている博物館は、世界中どこにもない。世界で唯一、日本が往復飛行の技術を持ち、さらにその実物を展示し、発信している。いつか青森でもカプセルを展示できるかと思うが、そのカプセルという「証拠」が持つ本物の力を噛み締めて欲しい。

○「はやぶさ」のミッション
 ・「はやぶさ」本体は冷蔵庫ぐらいの大きさ。
 ・目指したのは「サンプルリターン」
 ・「はやぶさ」は工学技術実証機…5つの重要技術の実証
  1.イオンエンジンで惑星間航行
  2.自律的な航法と誘導で、天体に接近・着陸すること
 3.微少重力下の天体表面のサンプルを回収すること
  4.カプセルを帰還、サンプルを回収
  5.燃費のよいイオンエンジンとスウィングバイを併用した加速操作(「パワースウィングバイ」のこと。世界で始めて「はやぶさ」が成し遂げました!)
 ・何よりも惑星間往復飛行を目指した


○推進機関と「はやぶさ」のイオンエンジン
 「はやぶさ」が惑星間往復飛行を出来たのは、イオンエンジンがあったから。少ない燃料で飛ぶことが出来た。

○なぜ、深宇宙を目指すのか→深宇宙には資源がある。
 ・丸い天体(地球や月、火星など)では、重い鉱物は地下深くに沈んでしまっている。一方、丸くない天体(小惑星)では、重い鉱物も表面にある。だから、小惑星。
 ・深宇宙港をラグランジュ点に作り、そこから探査へ…というのは、イオンエンジンは燃費はいいけど力が弱い。1円玉2枚分を押す力しか出ない(でも、ずーっと推進していれば、大きな力になるのがポイント)
 ・まず地球を出るには大きな力が必要。そして地球から、直接月や火星など、重力の大きな天体に行くのはナンセンス。また大きな力がいる。だから、深宇宙港を作って、宇宙船を乗り換える。
 *「はやぶさ」の技術で、再使用可能な惑星往還宇宙船が出来る。実現できる!

○宇宙大航海時代の宇宙船といえば…
 「宇宙戦艦ヤマト」と「スタートレック」のエンタープライズ号(まさかこの話題が出るとはw特にヤマトw)
 →どちらも大推力と高速でのガス放出は両立しないので、急加速することや地球周辺から発進することは難しい。

○「はやぶさ」のはじまり
 ・きっかけは、25年前、1985年、宇宙科学研究所(ISAS)での「小惑星サンプルリターン小研究会」
 ・この年、ハレー彗星を観測する「さきがけ」「すいせい」打ち上げ。
 ・当時は化学ロケット(通常のロケットエンジン)しかなく、往復の実現は不可能でした。
 ・90年代はじめ、NASAと小惑星ランデブー(小惑星に接近する)、彗星のダストを持ち帰る研究を共同でしていた。NASAは兄貴分とは違う、はるか上の存在の人だった。日本はまだビギナーだった。
*ところが、NASAは独自に「スターダスト」「ディープスペース1」計画を立ち上げてしまった。盗られてしまった!!
 …NASAもためらうような計画でないと…と思ってハッタリで切り出したのが「サンプルリターン計画」。

「高い塔を建て(挑戦しなくては)先の水平線は見えてこない」
 ・コピーをしてもだめ。
 ・新しいことに挑戦しなければ、新しいことはできない。

○「はやぶさ」の形
 ・イオンエンジンが横に付いているのはなぜ?→地球の公転に合わせて飛ぶため。ハイゲインアンテナ(頭に付いている丸いアンテナ)を地球に向けて、太陽電池パネルは太陽に向けて発電し、イオンエンジンを動かす。

○「はやぶさ」はロボット
 ・ロボット…日本人にとって身近な存在。…一方、アメリカは有人。
 ・着陸の時、上下に動かすのは高度計があるからそんなに難しくない。難しいのは水平方向に動かすこと。
 ・イトカワに着陸する時、着陸地点(「ミューゼスの海」)は40m.着陸しようとしていると、イトカワが動いてしまう。
 →これを解決したのが「ターゲットマーカ」。フラッシュで光るようになっているが、フラッシュをたく宇宙機は他にない。

○自律的な航法について
 ・地球の自転軸は常に変動している。それによって誤差が出るが、3億km彼方の「イトカワ」だとその誤差は300kmになってしまう。「イトカワ」の大きさは500m.精度が足りない。
 →そこで、「はやぶさ」自身が観測して、イトカワとの相対的位置を決めるしかない。光学と電波を併用して、探査機を航行させたのは世界初!
 ・星を背景にイトカワを写す。(「はやぶさ」には「スタートラッカ」というカメラが付いていて、星座の星を写して、それを元に自分の位置を認識することができます。凄い!)

○イトカワに到着
 ・観測をして、イトカワのあちこちに地名を付けた。
 ・着陸地点:「ミューゼスの海」←国際天文連合「こんな小さな星に”海”はない」とダメ出しされたw(その後、名称として認められました)
 ・イトカワの姿:到着前は月や他の小惑星と同じようにクレーターがあると考えられていた。CGイラスト(池下章裕さんによる公式のイラスト画像)も、当初はクレーターのある小惑星として描いていた。しかし、実際は砂地ばかりのゴツゴツした小惑星だった。なのでイラストも描きなおした。

○イトカワはどんな天体か
 ・端っこにゴツゴツした岩石が集まっている。
 ・月のような一度流体になった丸い天体なら、密度が高く重い物質は沈んでしまう。
 ・イトカワは粉体。粉体の岩石だと振動でより分けられる(分化される):「ブラジルナッツ効果」
 ・イトカワは「がれきの寄せ集め」「ラブルパイル構造」。密度は低い。←「はやぶさ」のイトカワ探査の最大の科学面での成果
 ・月の公転周期と自転周期が同じなのは、月内部の密度による。地球に近い面…”海”:重い玄武岩。裏側の”山”:軽い斜長石
 (これについては初めて知りました。そうだったのか!)
 
○小惑星探査で何がわかるのか
 ・地球を調べたいなら、丸くない天体を調べよう。地球内部は溶けてしまっているので、取り出して調べても地球形成当時の物質について知ることはできない。
 ・溶けたことのない小天体には、地球を構成していた物質が残っている。
 ・太陽から離れ、遠くへ行くと冷たくなる…太陽系の冷蔵庫。アミノ酸やたんぱく質など、生命の起源も残っているかも←そこをサンプルリターンする。

○「はやぶさ」の故障
 ・2度目のタッチダウン後、化学エンジンの燃料漏れを起こす。一旦は燃料バルブを閉めて燃料漏れを止めることが出来た。しかし、その後配管に凍結。再び燃料漏れ。姿勢制御できなくなり、通信途絶。電力も喪失。
 ・姿勢が乱れても、「はやぶさ」は主軸まわりの回転に落ち着くように設計されていた。
  →見失っても、いつかは太陽を受けて発電し、電力を確保。交信もできるようになるはず…。
*しかし、復旧のために必要なもの…
 1.温度が冷え切っていて、「はやぶさ」が待っている周波数がわからない。
 2.「はやぶさ」が送信してくる周波数もわからない。
 3.「はやぶさ」がどんな速さで回転しているかもわからない。
  →だから、アンテナで通信できる時間もわからない。
*そこで、地上の制御指令装置のソフトも書きなおした。
 ・短い指令(コマンド)に分割。どのタイミングでも受信できるように繰り返す。
 ・周波数も網羅的。
 ・1年間続けるつもりでいた。1年やって見つからないと、予算が下りない…。

*しかし、7週間で指令が全て届き、「はやぶさ」からの電波が受信できた!!担当者も夢じゃないかと思うほど、幸運でした。
 ・1bit通信→「テレメータ」(探査機の状態を示す数値が表示される機器)で確認。1データを得るのに30分かかる。それでも、「手を振り返してもらう」運用を続けた。「がんばれ、はやぶさ」
 ・姿勢を制御しないと、探査機が死んでしまう…イオンエンジンのキセノンガスと、太陽光圧で姿勢制御。
 ・「太陽風」と「太陽光輻射圧」は異なるもの。「輻射圧」は光のエネルギーの流れ。「IKAROS(イカロス)」はこれを利用して飛んでいます。

○イオンエンジンが壊れた!寿命が来てしまった
 ・エンジンAの中和器と、エンジンBのイオン源を併用。ダイオードで繋がれていた。
 ・どうなるかわからない、でも、できるならとにかくやってみる。試行錯誤の連続だった。
 ・しかし、エンジンAの中和器は不安定…「中和(ちゅうか)神社」へ向かった。
  「中和器」だから「中和神社」ってないの?検索したらあったw
  普段は開いていない神社だが、わざわざ開けてもらった。「何しに来たの?」と聞かれたw
  「はやぶさ」のことを宮司さんに話したら、ご存知だった。嬉しかった。
  神頼みはあくまで個人で。JAXAは関係ありません。
 *科学技術の限界は、当事者としてよく理解している。一方で、成功を願うのは、我々も人間として共通の願い。幸運が訪れることを願う気持ちがあってもいいはず。
 →逆に、幸運以外の科学技術部分を徹底したか、確認するきっかけになった。

○イオンエンジンのクロス運転のリスク
 ・電力不足(ロックアップ)の危険性。実際起こったが、遮断装置がうまく動いた。
 ・機器の絶縁が熱で破壊されてしまう危険性。TCM(帰還軌道修正)の間、ずっと心配だった。「はやぶさ」のイオンエンジン面に太陽光を当てないように、細心の姿勢制御を続けた。
 ・とにかくハラハラした。
 *そしてクロス運転成功!!
  ・「そうしてまで君は」(「はやぶさ」帰還カウントダウンサイトより)

○とにかく帰還にこだわった。飛行成功は「技術より根性」
 ・「さきがけ」と「のぞみ」での悔い。
 ・「惜しくも…」ではダメ。とにかく帰還させる!!
 ・2回目のタッチダウン前に「もう帰ろう」という話もあった。が、危険を冒してもサンプリング、着陸したかった。
 ・行方不明になっても、「帰還できなければ果たせぬ夢に終わる」。気持ちを張り続けた。

○帰還へ
 ・TCM-1(2010.5.12)で地球が見えた。
 ・この時、和歌を詠んだ。
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 *6月13日…「はやぶさ」に地球を見せたかった。
 ・カプセルを分離してしまうと、「はやぶさ」本体の運用の必要はない。でも、皆ボランティアで地球の撮影に全力を注いでくれた。
 ・画像はたった1枚だけ。途中でデータを送りきれず、途切れている。強いスミアも←「はやぶさ」が涙を溜めて地球を見ている…(以前行われた的川泰宣先生の講演会では、この発言に「プロマネがこわれた…!」とチーム内が騒然としたんだとかw
 ・大気圏再突入の画像。(何度観てもかなしく、美しいです。聴衆の皆さんも見入ってました)
 ・カプセルは驚異的な精度で着陸した。
 ・本当はウーメラへ行くつもりだった。しかし、カプセルがすぐ見つかったので、行く必要がなくなった…。
 ・ヒートシールドは探せないかと思った。でも、見つかった!
 ・大気圏再突入の時に一句。
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 ・カプセルについて詳しく。カプセルの「インスツルメントモジュール」に、アンビリカルコードが残っていた!アンビリカルコードでカプセルは「はやぶさ」本体と繋がれ、「はやぶさ」から電力を7年間も得ていた。いわば「へその緒」。ビーコンは「産声」。「新星児」の誕生とも言える。
 ・カプセルの重さは、「はやぶさ」の4%ぐらい。人間を「はやぶさ」に置き換えると、約2kg。赤ん坊のようなものです。

 ・カプセルを見て一句。
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(「へその緒」に感涙…。)

 ・カプセル内は現在初期分析作業中。片っ端から探している。大変。

○「はやぶさ2」について
 ・「はやぶさ」プロジェクトが立ち上がって15年。次のプロジェクトがないと、知識や技術の伝承はできない。
 ・「はやぶさ2」は地球に再突入させず、地球スウィングバイさせて、ラグランジュ点に係留したい。
 ・科学のみならず、宇宙探査への展望を若い世代に伝えたい。

 *太陽系には、興味深い天体が沢山ある。土星の衛星・タイタンはメタンの雨が降る。地球の生命体とは別な生命体もありうるのかもしれない。侵食地形も、懐かしい河原のよう…。エンケラドスにも間欠泉がある。火星よりも、木星・土星系に熱源があり、生命の可能性があるのかも。


○津軽出身の者として
 ・「技術より根性」…じょっぱり
 ・津軽の文化・気質:耐え忍ぶのとはちょっと違うかも。やり通すことを信念とする気質は津軽に根付いているのかも。
 ・簡単によそを受け付けない風土性。大学を過ごした京都にも似たところがある。
 ・地方文化に固有性を見出して育てる気風。
 ・高校の反骨性も影響している。
 ・私自身、天邪鬼。三日坊主で飽きっぽく、すぐ違うことをしたがる。(えええw

○「世界一」でなくてはならないと思います
 ・アメリカ・NASAでは「はやぶさ」が1番だと報道してない。スターダストが1番だ、と。
 ・自国への誇りを持たせる
 ・一方日本は…「2番じゃダメなんですか」
 ・「宇宙基本計画」にも惑星探査は明示されていない。
 ・「イカロス」、世界初のソーラーセイル。

○なぜ「MUSES-C(はやぶさ)」は立ち上がれたか
 ・バブル崩壊後だったが、投資に対する理解は残っていたのではないか。これは幸運だった。
 ・「はやぶさ」は当時のISASが提案:「先端的な研究・技術開発」という性格が税金の投資先として適切だと認識された。
 ・「はやぶさ」は国際的レベルでは低予算。(本当に低予算です)。でも、ハイリスク・ハイリターン。
 ・1995年当時の政府関係、宇宙開発委員会関係の皆様方の深いご理解と先見の明があった。
 *科学技術にハイリスクの投資は不可避。この認識が継続され続けることを願っています。

○「はやぶさ」は先達の成果の上にあり
 ・「はやぶさ」を開発・運用してこれたのは、独自の宇宙開発・宇宙科学を追究してこられた諸先輩方の礎の上に立ってこそ。
 ・これらをリセットしなおすことなく、発展させることがわれわれに与えられた使命。
 ・先達が築いてわれわれに託してこられた蓄積を、次の世代にうまく継いでいけるかが試されている。
 ・次の世代の方々には、是非誇りを持って引き継いでいただきたい。(勿論です!私は宇宙・科学関係分野の人間ではないですが、この成果を何らかの形で、次の世代へ語り継ぎたい。それが、また何かの芽となれば…)

○おわりに
 ・科学技術の成果が出るまでには、長時間を要します。
 ・近視眼的な成果に目を奪われがちだが、政策上の理解がほしい。
 ・教育とは国が将来を作るための投資。先進科学技術を通してこの国を誇れるように思わせ、国民であることに自信と希望を与えてこそ未来がある。
 ・科学技術とは、つねに挑戦です。
 ・高い塔を建てなければ、(科学技術の)次の水平線は見えてきません。
 ・未来とは未だ来ぬもの。でも待っていても来ない。
 ・未だ来ぬものは、水平線の彼方にある。


 以上が講演内容でした。約1時間15分程度でこの内容。濃かったです。続いて、学生さんたちからの質問コーナーがありました(質問者は事前に決まっていたようです)。


・Q1(中学生):「はやぶさ」のカプセルが帰還したのが、ウーメラ砂漠だったのはなぜ?

 A:当初はアメリカの予定だった。しかし、向かう小惑星が変わり、軌道も変わってしまった。カプセルは西から東に向かって帰って来る。さらに北から南に向かって進入してくる。こう考えると、着陸地点はウーメラしかなかった。オーストラリア政府には、大変感謝しています。


・Q2(高校生):川口先生の「はやぶさ」への愛情がとても感じられたのですが、「はやぶさ」との通信が途絶えた時の心境は?

 A:全部が壊れていたわけではないから、復旧できるところはあるはずと思っていた。必ず帰ってこさせる。生きていて欲しいと思っていた。
 (この回答に対して、質問者の高校生君「やっぱり川口先生とはやぶさは親子なんだなぁと…」場内笑w川口先生も苦笑い?)


・Q3(大学生):イトカワに着陸する際、アインシュタインの相対性理論は関係あるの?

 A:イトカワのような小さな天体では、あまりない。太陽などの大きな天体だと影響がある。また、今どこにいるのか、軌道計算で使う。(軌道計算…”軌道の魔術師”直伝の軌道のお話をもっと聞いてみたいとも思いました…理解できるかどうかは別として…)


 以上質問コーナーでした。以上、講演会レポはここまで。長くなりましたが、講演のおさらいと自分の中での再読となりました。また、講演の様子が少しでも伝われば嬉しいです。
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by halca-kaukana057 | 2010-08-25 23:00 | 宇宙・天文


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