2010年 10月 07日
「はやぶさ」カプセル:ただいま微粒子回収中
帰還から、もうすぐ4ヶ月が経つ小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」。現在も、帰還したカプセルの中身を調べる作業が続いています。そんなサンプル回収状況でちょっとした動きが。
◇読売新聞:「はやぶさ」に微粒子、地球外物質の可能性
10月6日のこの記事。公式発表を待たずにフライングの記事でした。この報道もあったので、JAXAでは毎週月曜の公式記者会見を、この6日木曜に繰り上げることに。
◇松浦晋也のL/D:はやぶさサンプル回収;10月6日午後5時半からの記者会見
記者会見詳細です。
◇ITmedia News:はやぶさから微粒子、新たに100個 地球外の可能性「チャンス広がった」
◇朝日新聞:はやぶさカプセルに微粒子 イトカワで採取の可能性も
◇毎日新聞:はやぶさ:「微粒子」多数見つかる 地球外の可能性
まず、ここまでの経緯を。「はやぶさ」のカプセルの内部には、「サンプルコンテナ」という容器があり、その内部に「サンプルキャッチャー」という「イトカワ」のサンプルが入っているかもしれない容器が入っています。その「サンプルキャッチャー」はA室とB室に分かれていて、「イトカワ」への1回目のタッチダウン(離着陸)の時にはB室に、2回目のタッチダウンの時にはA室にサンプルが収められるようになっていました。「はやぶさ」が「イトカワ」にタッチダウンした時、イトカワの表面に向かってサンプラーホーン(「はやぶさ」の本体から出ている長い筒のようなあれ。)の内部で弾丸が発射され、イトカワに打ち込まれます。イトカワはとても小さな天体で、しかも内部はスカスカであるため重力はとても小さい。そのため、ちょっとした衝撃でものがふわりと飛んでいってしまいます。もし、人間がイトカワへ行って表面でジャンプをしたら、そのまま宇宙空間へ飛んでいってしまいイトカワには着地できない…そのくらい小さな重力です。話を戻して、弾丸の衝撃で浮いたイトカワ表面のサンプルはそのままサンプラーホーン内部を上昇、その上部でサンプルキャッチャーに収められる…という仕組みでした。しかし、実際はイトカワ表面で弾丸はうまく発射されず。それでも、1度目のタッチダウンの際ははやぶさがイトカワ表面で大きくバウンド。その衝撃で、イトカワの微粒子がサンプラーホーンの中に入って、そのままカプセルへ入ったのではないかとされています。実際、イトカワの重力を再現できる実験施設で、イトカワ表面を模した砂地上にサンプラーホーンに見立てた筒を落としたところ、サンプルが筒の中へ飛んで入った(NHK「追跡!AtoZ」でその動画が放送されてました)。この実験から、弾丸は発射されなかったけど、イトカワのサンプルが回収できた可能性がある…と現在調べているところです。
しかし、微粒子が思った以上に小さく、さらに数も多かったのでなかなか回収できない。詳しい分析をするためには、サンプルキャッチャーから取り出して、石英の容器に入れて分析施設に送る必要があるのに、うまく取り出せない。そこで、新しくヘラを開発して(松浦さんのブログに画像があります)、なかなか回収できなかった微粒子を回収し、電子顕微鏡で観察したらかなりの数の微粒子が採取でき、その中にもしかしたら地球外の物質があるかもしれない…現在ここまで。
【追記】
この記者会見のあとで、その微粒子の画像が公開されました。
◇JAXA:宇宙科学研究所(ISAS):「はやぶさ」カプセルから採取された微粒子の電子顕微鏡写真
わずか6mmのヘラに、小さな小さな微粒子が、しっかりと見えています。本当に小さな微粒子だけど、「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルの、大事な大事な中身。帰還できて、無事にカプセルを回収できて(しかもそのカプセルが一般に公開されている!)本当によかった、あらためて「ありがとう」と感謝の言葉を伝えたいです。
(追記ここまで)
これから、石英の容器に入れた微粒子を、分析施設に送り詳しい分析をします。ここで登場するのが「SPring-8」。スプリング8で、含まれる元素の種類や原子の並び方などを分析。さらに、微粒子を薄くスライスして結晶構造も調べます。0.001mm以下のものを薄くスライスして、観察する…凄い。気が遠くなりそうです。電子顕微鏡やそのスライスする機械は、どんなものなのだろう。
現在微粒子を回収したのはA室。1回目のタッチダウンで使われたB室も、もうそろそろ中身の回収作業に入るそうです。このB室の方が、イトカワのサンプルが入っているのではないかと考えられている。イトカワのサンプルかどうか判明するのはまだまだ先になりそうです。でも、今この作業が出来ているのは、無事「はやぶさ」が帰還して、カプセルを回収できたから。何年でも待ちます。ゆっくり、じっくりと作業できることを願ってやみません。
いつか、「はやぶさ」が成し遂げたことが当たり前に理科の教科書に載ったらいいな。そして、その頃、本格的な太陽系大航海時代になっているように…。
◇参考:マイコミジャーナル:【レポート】「はやぶさ」 - カプセルのサンプル回収はどうなっている?
SPring-8については、通常ページを観ても難くてよくわからず…。しかし、こんなこともあろうかと!(使い方違うw)キッズ向け漫画があったのでそれを参考にしました(汗
SPring-8 Web site:四コママンガ エイトハカセ
「はやぶさ」に関連して、現在政府では、「元気な日本復活特別枠」要望に関するパブリックコメントを実施し、国の事業に対する国民の皆様からのご意見を広く募集しています。 JAXAからは、「はやぶさ」後継機(「はやぶさ2」)、現在は大気圏で燃え尽きてしまうHTV(国際宇宙ステーション補給機)の回収機能付き「HTV-R」、災害状況を宇宙から詳しく観測できる陸域観測衛星「だいち(ALOS)」の後継機「ALOS-2」、初号機である「みちびき」を含む準天頂衛星の2・3機目についてなどについて、要望を出しています。日本の宇宙開発が盛り上がっている今、ここで終わらせるわけにはいきません。意見・要望を政府に届けるチャンスです。
◇JAXA:お知らせ:「元気な日本復活特別枠」要望に関するパブリックコメント~政策コンテスト~ 予算編成にあなたの声を!
締め切りは今月19日(火)夕方5時まで。
◇読売新聞:「はやぶさ」に微粒子、地球外物質の可能性
10月6日のこの記事。公式発表を待たずにフライングの記事でした。この報道もあったので、JAXAでは毎週月曜の公式記者会見を、この6日木曜に繰り上げることに。
◇松浦晋也のL/D:はやぶさサンプル回収;10月6日午後5時半からの記者会見
記者会見詳細です。
◇ITmedia News:はやぶさから微粒子、新たに100個 地球外の可能性「チャンス広がった」
◇朝日新聞:はやぶさカプセルに微粒子 イトカワで採取の可能性も
◇毎日新聞:はやぶさ:「微粒子」多数見つかる 地球外の可能性
まず、ここまでの経緯を。「はやぶさ」のカプセルの内部には、「サンプルコンテナ」という容器があり、その内部に「サンプルキャッチャー」という「イトカワ」のサンプルが入っているかもしれない容器が入っています。その「サンプルキャッチャー」はA室とB室に分かれていて、「イトカワ」への1回目のタッチダウン(離着陸)の時にはB室に、2回目のタッチダウンの時にはA室にサンプルが収められるようになっていました。「はやぶさ」が「イトカワ」にタッチダウンした時、イトカワの表面に向かってサンプラーホーン(「はやぶさ」の本体から出ている長い筒のようなあれ。)の内部で弾丸が発射され、イトカワに打ち込まれます。イトカワはとても小さな天体で、しかも内部はスカスカであるため重力はとても小さい。そのため、ちょっとした衝撃でものがふわりと飛んでいってしまいます。もし、人間がイトカワへ行って表面でジャンプをしたら、そのまま宇宙空間へ飛んでいってしまいイトカワには着地できない…そのくらい小さな重力です。話を戻して、弾丸の衝撃で浮いたイトカワ表面のサンプルはそのままサンプラーホーン内部を上昇、その上部でサンプルキャッチャーに収められる…という仕組みでした。しかし、実際はイトカワ表面で弾丸はうまく発射されず。それでも、1度目のタッチダウンの際ははやぶさがイトカワ表面で大きくバウンド。その衝撃で、イトカワの微粒子がサンプラーホーンの中に入って、そのままカプセルへ入ったのではないかとされています。実際、イトカワの重力を再現できる実験施設で、イトカワ表面を模した砂地上にサンプラーホーンに見立てた筒を落としたところ、サンプルが筒の中へ飛んで入った(NHK「追跡!AtoZ」でその動画が放送されてました)。この実験から、弾丸は発射されなかったけど、イトカワのサンプルが回収できた可能性がある…と現在調べているところです。
しかし、微粒子が思った以上に小さく、さらに数も多かったのでなかなか回収できない。詳しい分析をするためには、サンプルキャッチャーから取り出して、石英の容器に入れて分析施設に送る必要があるのに、うまく取り出せない。そこで、新しくヘラを開発して(松浦さんのブログに画像があります)、なかなか回収できなかった微粒子を回収し、電子顕微鏡で観察したらかなりの数の微粒子が採取でき、その中にもしかしたら地球外の物質があるかもしれない…現在ここまで。
【追記】
この記者会見のあとで、その微粒子の画像が公開されました。
◇JAXA:宇宙科学研究所(ISAS):「はやぶさ」カプセルから採取された微粒子の電子顕微鏡写真
わずか6mmのヘラに、小さな小さな微粒子が、しっかりと見えています。本当に小さな微粒子だけど、「はやぶさ」が持ち帰ったカプセルの、大事な大事な中身。帰還できて、無事にカプセルを回収できて(しかもそのカプセルが一般に公開されている!)本当によかった、あらためて「ありがとう」と感謝の言葉を伝えたいです。
(追記ここまで)
これから、石英の容器に入れた微粒子を、分析施設に送り詳しい分析をします。ここで登場するのが「SPring-8」。スプリング8で、含まれる元素の種類や原子の並び方などを分析。さらに、微粒子を薄くスライスして結晶構造も調べます。0.001mm以下のものを薄くスライスして、観察する…凄い。気が遠くなりそうです。電子顕微鏡やそのスライスする機械は、どんなものなのだろう。
現在微粒子を回収したのはA室。1回目のタッチダウンで使われたB室も、もうそろそろ中身の回収作業に入るそうです。このB室の方が、イトカワのサンプルが入っているのではないかと考えられている。イトカワのサンプルかどうか判明するのはまだまだ先になりそうです。でも、今この作業が出来ているのは、無事「はやぶさ」が帰還して、カプセルを回収できたから。何年でも待ちます。ゆっくり、じっくりと作業できることを願ってやみません。
いつか、「はやぶさ」が成し遂げたことが当たり前に理科の教科書に載ったらいいな。そして、その頃、本格的な太陽系大航海時代になっているように…。
◇参考:マイコミジャーナル:【レポート】「はやぶさ」 - カプセルのサンプル回収はどうなっている?
SPring-8については、通常ページを観ても難くてよくわからず…。しかし、こんなこともあろうかと!(使い方違うw)キッズ向け漫画があったのでそれを参考にしました(汗
SPring-8 Web site:四コママンガ エイトハカセ
「はやぶさ」に関連して、現在政府では、「元気な日本復活特別枠」要望に関するパブリックコメントを実施し、国の事業に対する国民の皆様からのご意見を広く募集しています。 JAXAからは、「はやぶさ」後継機(「はやぶさ2」)、現在は大気圏で燃え尽きてしまうHTV(国際宇宙ステーション補給機)の回収機能付き「HTV-R」、災害状況を宇宙から詳しく観測できる陸域観測衛星「だいち(ALOS)」の後継機「ALOS-2」、初号機である「みちびき」を含む準天頂衛星の2・3機目についてなどについて、要望を出しています。日本の宇宙開発が盛り上がっている今、ここで終わらせるわけにはいきません。意見・要望を政府に届けるチャンスです。
◇JAXA:お知らせ:「元気な日本復活特別枠」要望に関するパブリックコメント~政策コンテスト~ 予算編成にあなたの声を!
締め切りは今月19日(火)夕方5時まで。
by halca-kaukana057
| 2010-10-07 23:43
| 宇宙・天文