音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉

 気になっていたので読んでみた。


音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉
岡田 暁生/中公新書・中央公論新社/2009


 「音楽の聴き方」というタイトルから、音楽を聴く上でのマニュアルのように読めますが、私はひとつのヒントとして受け取りました。メインはクラシック音楽についてですが、ジャズなどについても語られています。読んでいて、難しい内容だと感じました。古今東西の音楽に関する文献の引用や参考文献が多いです。一言で言ってしまえば、「はじめてのクラシック」(黒田恭一/講談社現代新書・講談社/1987)を難しくしたような本だと感じました(ちょっと乱暴なまとめ方ですが)。ただ、黒田さんの本と違う点は、「音楽についてもっと語ろう」と述べている点。

 まず、「いい音楽」とは何なのかという問いから始まり、それがこれまで個々人が置かれてきた環境やその環境とどう関わってきたか、好みや価値観などからなる「内なる図書館」によって左右される。「いい音楽」と感じるのは、その音楽と相性が合った時であり、それはこれまでの音楽体験がベースになっている。確かにそう思う。好きな音楽の傾向というのはある。

 そして、音楽を語ること。音楽を演奏する、聴く、語ることは、18世紀には繋がっていた。しかし、相当のテクニックを要求される作品が増え始めた19世紀になると、自分で演奏はするけれどもプロの演奏家の演奏を聴き、評論家が音楽を語る。演奏すること、聴くこと、語ることが分裂してしまった。

 分裂してしまっても、演奏する際、言葉が必要になる時がある。プロのオケの練習の際、指揮者は言葉で様々な指示を出す。その言葉・比喩の巧みさを例に出し、私たち一般の音楽愛好者も、「音楽を語る言葉」を知り、今度は自分なりの音楽を語る言葉を生み出してどんどん語ろう。また、音楽理論も勉強すればもっと音楽を面白く聴き、語れるだろうと述べている。

 私自身、コンサートに行ったり、CDやラジオで聴いたりして、その音楽のよさ、魅力を言葉にしたい、言葉で誰かに伝えたいと強く思うことがある。こうしてブログに書いたり、家族や友達に話してみたり。しかし、「高音がキラキラしていて」「音が繊細で…」「ダイナミックで迫力満点」…なかなか感じたことを表現できる言葉を見つけられず、「凄かった」「素敵だった」で終わることもある。作曲家は音のままで自分の想いを表現し作品にできたが、残念ながら私は言葉でないと表現できない。人に伝える時、語る時も言葉だ。ならば、語彙・表現を増やせばいい。また、音楽理論もその助けとなってくれる。音楽理論を学ぶことで、作品の構造や音・和音、調性などに隠れているその作品の魅力や作曲家のメッセージを読み解くことも出来る。聴いて語るだけでなく、ピアノで演奏する時にも役立つ。やっぱり音楽理論は勉強しておいたほうがいいと実感。さらに、音楽理論だけでなく、その作曲家の時代や国の文化、歴史、言語なども勉強しておくといい、ともある。

 また、語るのを躊躇する理由に、「よくわからない」「あまり好きじゃない」という感想を持ってしまったというのもある。そんな時、判断を保留にしておいている。ドビュッシーがその一例だった。タイトルに惹かれて聴いてみたものの、ピンとこない。とらえどころがない。苦手なのかな…でも、それだけなのかな…と保留にしておいたら、「前奏曲集」で興味を持ち、パラパラとうつろう、とらえどころがないのが魅力なんだと感じ、今では徐々に他の作品も聴いてみています。他にも、ベートーヴェン「交響曲第7番」もあまり好きな作品ではなかったのですが、小林研一郎指揮日本フィルのコンサートで聴いて、好きになった。「炎のコバケン」の熱血で血湧き肉躍る演奏に、他の聴衆と一緒になって魅了された。演奏だけでなく、演奏前に小林さんが作品解説をしてくれたのだが、それがとてもわかりやすく、後で演奏を聴く時のポイントになった。あのコンサートは今でも強烈に記憶している。
 というように、保留にしておいて、また聴く機会があるかもしれない、何かの機会で印象がガラリと変わるかもしれないと、「好き/嫌い・苦手」と結論づけるのはしないようにしている。

 私はこれからも色々な音楽に触れていきたい。演奏することも、聴くことも。そして、語ることも。クラシック音楽だけでなく、ポップスやジャズ、民謡やトラッド、演歌・歌謡曲、アニソン…。世の中には本当にたくさんの、星の数ほど音楽がある。その音楽に少しでも多く触れて、好きな、親しみを持ち続ける音楽に出会いたいなと思う。

 最後に、色々な音楽に触れ、語るという意味で、ある歌の歌詞を引用したい。アニメ「けいおん!」劇中歌「私の恋はホッチキス」から。「けいおん!」(2期「けいおん!!」)で歌われる歌の中でも、特に好きな歌のひとつです。 
今の気持ちをあらわす 辞書にもない 言葉さがすよ

「私の恋はホッチキス」(放課後ティータイム/作詞:稲葉エミ/作曲:前澤寛之/編曲:前澤寛之)より



【過去関連記事】
はじめてのクラシック
とらえどころが無い魅力 ドビュッシー「前奏曲集」
熱血ベートーヴェン
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by halca-kaukana057 | 2010-11-06 22:50 | 本・読書


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