天にひびき 3

 こちらも待ってました。音大クラシック漫画「天にひびき」3巻です。


天にひびき 3
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2011

 ドイツに移り住み、ピアノを続けている秋央の幼馴染・美月が一時帰国した。秋央に会おうと連絡を取ろうとするが、携帯は繋がらず。部屋を訪ねても不在。翌日、会えるかどうかわからないが秋央の学ぶ大学へやってきた。そこで、かつて師事しことがあるた矢野先生に会い、指揮科の授業を見学しないかと誘われる。美月は是非見学したいと、レッスン室へ。そこへ授業を受けに入ってきたひびき。ひびきの指揮を見て、美月は…。



 2巻の最後で久々に登場した美月。可愛く成長して帰ってきました。ドイツでピアノを学び、コンクールで優勝、リサイタルを開いて演奏活動もしている。そして、秋央に対する態度も変わらない…w
 その美月も、9年前、あのひびきの指揮での演奏を聴いたひとり。美月にとっても、ひびきの指揮は印象強く残ったようです。秋央の幼馴染として、美月はひびきをどう思うのだろうと2巻を読んだ後に思っていたのですが、とても素直な反応でした。寧ろ、秋央とひびきが共に音楽の道を歩んでいることを喜んでいる。ヴァイオリンは続けていたものの、目標も何も持たずに音大まで進んでしまった秋央。それは、9年前のひびきの指揮による演奏が関係してはいるのだが、そのことを一番心配していたのが美月だった。そんな秋央に久々に再会し、さらに一緒に演奏したことで、秋央の変化に気づいた。ひびきの存在に感謝している。
 美月だけでなく、ひびきもそうだが、本当に素直でいい子だ。音楽に対して真摯で、素直に、謙虚に接し、共に歩もうとしている。この2人の音楽に対する、そして同じ音楽の道を歩む仲間に対する姿勢を見習いたい。

 一方、秋央君。美月との演奏で、また自己の足りない部分を実感した模様。それでも、新たな目標を抱き、歩み始めた。懸命に練習に打ち込む毎日。帯で、「凡人」と秋央君のことを表現していましたが…そんな秋央君の等身大の努力に、親近感を覚えます。私も頑張らなくては、と思える。

 この3巻、一気に存在感を増したキャラクタがいます…。そう、表紙にも出てきたヴァイオリンの波多野深香さん。黒髪が美しくナイスバディ。いつも黒尽くめの服装。物静かでいつも冷静…。そんな彼女が3巻では大活躍です。これまで見られなかった面も出てきました。まず、演奏シーン。待ってました!ショスタコーヴィチやプロコフィエフなどのロシア・近現代作品が好きで、特に好きな作品がショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲第1番」。音楽に対しても、華やかなだけの音楽よりも、すぐに壊れてしまうそうな緊張感を持った難解な音楽を追求したいと考えている。しかし、秋央やひびきに出会って、ちょっと違う面も見え始めた。音楽でも、その他の面でも。深香さんも、素直で真摯ないい子です。とっても可愛いですw

 その深香さんの「音楽」に対する考え方も興味深いのだが、11・12話で出てきたひびきの「音楽」に対する考え方がとても興味深かった。特に、11話、外山さんがひびきに「なんで音楽やってるの?」と尋ねた答えが。「楽しいから」と即答したのですが、その後が。
音楽…ううん 音っていうのはさ 只の空気の振動だよね
ある空間にある瞬間生まれ そして消えてゆく 跡かたもなく…
確かにその時そこに存在したのに 次の瞬間には もうどこにもない
ましてその”音”を複雑に組み合わせ 意味を持たせた”音楽”
一回の演奏を元に戻すことも 再現する事も出来ない
でも みんなの心には残る その場に立ち合い 体験した人の心の中には…

(外山)何が残る?

(ひびき)さあ… それがこっちで決められないのも楽しさの一つじゃないかな
でもそういうのが とてもいいね! 楽しい!
(17~20ページ)

 ちょっと長いですが、まさに共感したので引用しました。”音”をあるルールで”音階””調性”として(音階・調性は世界中に沢山ある)、それを組み合わせて意味を持たせ”音楽(音楽作品)”とする。演奏は録音すればCDなどで何回も聴くことはできるが、全く同じ演奏をもう一度演奏することは出来ない。まさに一期一会。そう、音楽とはとても儚いもの。でも、その時の演奏は消えてしまっても、心には何かを残すことが出来る…私も、同じようにそれが音楽の魅力だと思ってきた。二度と同じ演奏は出来ない。だからこそ、今奏でている一音一音に耳を澄まし、どの音も疎かにすることなく演奏したいと思っている(なかなか出来ないけど)。そして、その音楽で様々なものを感じ、想う。演奏者がひとつのイメージを持って演奏しても、受け取った聞き手が同じことを思うとは限らない。聞き手が複数いれば、皆違うことを思うだろう。私もそこが面白いと思います。
 ところで、このひびきの言葉ですが、1巻冒頭に書かれた吉松隆さんの言葉に通じるものがありますよね。これが、この作品のテーマってことなのかな。
 しかし、普段は明るくサッパリとした性格なのに、音楽について語る時のひびきの表情の深さに惹き込まれます。これが、指揮者としての資質ってものか…(私もひびきちゃんにやられている!w

 ひびきと同じ指揮科で、女の子に目がない遊び人の梶原の、違う面もついに明かされます。ただ遊んでいるだけではなかったんだな。梶原の指揮も早く見てみたいなぁ。梶原の考える音楽とは、何か見てみたい。聞いてみたい。

 後半では如月先生門下の合宿。秋央の師で大学でも授業を受けるはずだったが、体調を崩してしまい退職した榊先生に会い、軽くレッスンも受けることに。違う先生についている深香、近くで音楽祭の指揮をする須賀川先生の元へ行く前に榊先生に会ってみたいと言うひびきも行くことに。そして、久々に会った榊先生は…。演奏家にとって、楽器を奏でる身体も楽器の一部。老化や病気で、その身体が思うように動かなくなってしまったら…。昨年腕を故障して、榊先生の気持ちがよくわかる。身体が思うように動かないことで、テクニックは落ちる。でも演奏は辞めない、辞めたくない、諦めたくない。病気などを、音楽を追求することを辞める理由にはしたくない、そんな気持ちが伝わってきました。

 この3巻で出てきた作品で興味を持ったのが、深香さんが大好きなショスタコのヴァイオリン協奏曲第1番。子どもの時祖父の膝の上で聴いた…って渋い趣味ですね。と言うわけで聴いてみたのですが(すみません、手近にCDがなかったので動画サイトで聴きましたすみません…)ショスタコ節がたまらない作品ですね。
 あと、榊先生の前で如月先生が演奏したイザイの「無伴奏ソナタ第6番」も。こちらはまだ聴いていないので、これから聴くのが楽しみです。榊先生が演奏したJ.S.バッハ「シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータより、パルティータ第2番ニ短調 BWV1004の第5曲)」もいい作品ですよねぇ…。

 3巻にも、作曲家・吉松隆さんによる指揮者・オケコラムが。勉強になります。

【関連過去記事】
天にひびき 1
天にひびき 2
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by halca-kaukana057 | 2011-02-04 22:47 | 本・読書


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