ファインマンさん 最後の冒険

 「ご冗談でしょう、ファインマンさん」「困ります、ファインマンさん」で、すっかりファインマンさん(ファインマン博士と記述するべきなのだろうけど、親しみを込めて「ファインマンさん」と表記します)のファン(?)になってしまったのですが、ファインマンさんに関する本はこの2作だけではありません。同じく岩波現代文庫から出ている、この本を。


ファインマンさん最後の冒険
ラルフ・レイトン:著/大貫昌子:訳/岩波書店・岩波現代文庫/2004(単行本は1991年、岩波書店より)

 著者のラルフ・レイトンさんはアメリカの高校の数学と地理の教師をされていた方。ラルフさんのお父様が、「ファインマン物理学」の編者で知り合い、また、ドラムが得意だった点も共通し、親友に。レイトンさんは、よくファインマン家を訪れ、ドラムを叩いたり食事を共にしていた。その日も、レイトンさんはファインマン家で食事をしていた。地理の授業の話題から、世界の国々・地域の名前の話になった時、ファインマンさんはいたずら気たっぷりの声色で「タンヌ・トゥーバという国を知っているか」と尋ねる。そんな国など聞いたことも無い、あるもんか!と疑うが、タンヌ・トゥーバの切手がとても美しく子どもの頃集めていた、外モンゴルのあたりに小さく存在する…とファインマンさんは続ける。地図で確かめようと世界地図を見ると、モンゴルの北西に「トゥーバ自治共和国」という国が。さらに、首都の名は「KYZYL(キジル)」。母音がひとつもない、変わった名前。これは面白い!と、行くことを決めてしまったファインマンさん。こんな冗談のようなきっかけから、全ての冒険は始まった…。


 私も「トゥーバ」という国があることは知らず、思わず世界地図で確認してしまいました。ちゃんとありました!とても小さな国でした。さて、このトゥーバに、「首都の綴りが面白いから」という理由だけで、行こうと決めたファインマンさん。しかし、トゥーバはソビエト連邦に自治州として加えられていた。当時、アメリカとソ連は冷戦真っ只中。アメリカ人であるファインマンさんたちがトゥーバに行く方法は、ほとんど無かった。それでも、図書館でトゥーバに関する記述がある本を探し、モスクワのラジオ局の番組にトゥーバ特集をして欲しいとリクエストしたり…。ありとあらゆる手を使って、トゥーバのことを調べ、行く手段が無いかを探る。トゥーバの人と文通することにも成功し、トゥーバの魅力的な文化にも触れてゆく。そんなことをしている内に、事が大きくなり始める…。この展開に驚きました。

 「ご冗談でしょう」や「困ります」を読んだ時も思ったのだが、ファインマンさんは、ちょっとしたことから「面白いこと」を見つけ、それを楽しもうとする。それは、他の人から見たら大したことではないかもしれない。しかし、きっかけは何でもいい。何にでも興味を持ち、好奇心のアンテナを高く、敏感に保ち続けること。面白いと思ったら、あらゆる手を使って調べる。大きな壁があっても諦めない。その姿勢が、ノーベル賞を受賞するほどの発見・研究をもたらしたのだとも思う。だが、専門の物理学の領域にとどまらない好奇心、何でもユーモアを持って楽しもうとする姿勢を、私は尊敬しています。ノーベル賞はもちろんのこと、大したことは出来ないけれど、気持ちだけはファインマンさんのような生き方をしたいと思っています。

 トゥーバ行き計画は難航、様々な方向から攻めてみて、ようやく実現できそうな方法が見つかった。しかし、この時、ファインマンさんはガンを抱え、何度も手術していた。この本では、ファインマンさんの闘病に関しても少し書かれています。もし自分だったら、絶望してしまいそうな状況なのに、トゥーバ行きを夢見てリハビリをする姿に、強さ・たくましさを感じました。トゥーバだけでなく、ドラム演奏や研究も、ファインマンさんの支えだった。そして、レイトンさんやご家族の存在も。

 ふとしたきっかけから始まった、ファインマンさんのトゥーバ訪問計画。十数年後、ようやく実現まで後一歩となりましたが…、まさかの展開に涙が出そうになりました。それでも、ファインマンさんは、最後の最後まで、トゥーバに行くことを夢見て尽力してきた。その過程を楽しんでいた。そう、この本は、結果よりも過程が語られています。ファインマンさんの、無邪気な好奇心と共に。

 「トゥーバ友の会」というものが存在し、現在も活動を続けています。アメリカにありますが、日本語で連絡を取っても大丈夫だそう。興味のある方は、是非!

 ファインマンさんの本を、また読みたいです。いつかは「ファインマン物理学」も読んでみたいな…。

・過去記事:ご冗談でしょう・困ります、ファインマンさん

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉

リチャード P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子 岩波書店



ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

リチャード P. ファインマン / 岩波書店



困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

R.P. ファインマン / 岩波書店




 今年も半年が過ぎたわけですが、読書量がいつもよりも激減しています。下半期は落ち着いて、様々な本を読みたいです。
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by halca-kaukana057 | 2011-06-06 21:44 | 本・読書


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