2011年 06月 14日
海炭市叙景
映画化された作品です。映画のチラシを観て興味を持ったのですが、私の町では上映されず。なので、原作小説を読むことに。
海炭市叙景
佐藤 泰志/小学館・小学館文庫/2010
海のそばにある地方都市・海炭市。海と炭鉱で発展してきた街だが、炭鉱は閉山。街は廃れてゆくばかりだった。その海炭市に生きる人々と、替わりゆく季節を描く。
この作品の著者・佐藤泰志さんのことは、この作品を読んで知りました。芥川賞に何度もノミネートされるも受賞ならず。そして、故郷である函館をモデルにして人々の生きる姿を描くこの「海炭市叙景」を執筆中、自殺してしまう。この作品はつまり、遺作であり、未完の作品。短編集のような形になっていて、18話目で終わっている。この先にどんな物語が続く予定だったのだろうか。読み終えて、まずそれを考えました。
炭鉱で働いていたが、閉山のため職を失った兄とその妹が、初日の出を見に行くという物語から始まる。その兄の話がその後の物語にも出てくることもあるが、それぞれの物語は独立している。海炭市という寂れた街で、人々はそれぞれの人生を送っている。淡々とした描かれ方で、ドラマティックな展開はない。でも、その淡々としているところが現実的に感じられた。私のそばにもありそうな、「日常」だ。
物語に登場する人々は、様々な立場で生きている。それぞれの仕事、悩み、葛藤、希望、絶望。悩みや苦しみを抱えながらも、黙々と仕事に打ち込む人々。前科持ち、暴走族、ギャンブルなど…重いものを抱えている人々。しかし、人生は続いてゆく。現状を変えようと決意する人。もがき苦しんで、光を見出せない人。結果は語られない。それぞれの人々の”人生の一部を切り取ったところ”に、更に現実さを感じました。何かに悩んでいて、苦しんでいて、変えようと思っても、簡単には変えられない。物語が終わっても、その人の人生は続いてゆくんだ…と感じる終わり方に、人間の生きる姿そのものを感じました。どんな状況でも、何が起きようと、街が廃れていこうと、人生は続く。今を生きている。ただ、「生きること」「生きてゆくこと」を、愛おしいと感じる作品でした。
映画版に関しては以下をどうぞ。
◇映画「海炭市叙景」公式サイト
◇YouTube:映画『海炭市叙景』予告編
原作とは違うところもあるみたいです。
海炭市叙景
佐藤 泰志/小学館・小学館文庫/2010
海のそばにある地方都市・海炭市。海と炭鉱で発展してきた街だが、炭鉱は閉山。街は廃れてゆくばかりだった。その海炭市に生きる人々と、替わりゆく季節を描く。
この作品の著者・佐藤泰志さんのことは、この作品を読んで知りました。芥川賞に何度もノミネートされるも受賞ならず。そして、故郷である函館をモデルにして人々の生きる姿を描くこの「海炭市叙景」を執筆中、自殺してしまう。この作品はつまり、遺作であり、未完の作品。短編集のような形になっていて、18話目で終わっている。この先にどんな物語が続く予定だったのだろうか。読み終えて、まずそれを考えました。
炭鉱で働いていたが、閉山のため職を失った兄とその妹が、初日の出を見に行くという物語から始まる。その兄の話がその後の物語にも出てくることもあるが、それぞれの物語は独立している。海炭市という寂れた街で、人々はそれぞれの人生を送っている。淡々とした描かれ方で、ドラマティックな展開はない。でも、その淡々としているところが現実的に感じられた。私のそばにもありそうな、「日常」だ。
物語に登場する人々は、様々な立場で生きている。それぞれの仕事、悩み、葛藤、希望、絶望。悩みや苦しみを抱えながらも、黙々と仕事に打ち込む人々。前科持ち、暴走族、ギャンブルなど…重いものを抱えている人々。しかし、人生は続いてゆく。現状を変えようと決意する人。もがき苦しんで、光を見出せない人。結果は語られない。それぞれの人々の”人生の一部を切り取ったところ”に、更に現実さを感じました。何かに悩んでいて、苦しんでいて、変えようと思っても、簡単には変えられない。物語が終わっても、その人の人生は続いてゆくんだ…と感じる終わり方に、人間の生きる姿そのものを感じました。どんな状況でも、何が起きようと、街が廃れていこうと、人生は続く。今を生きている。ただ、「生きること」「生きてゆくこと」を、愛おしいと感じる作品でした。
映画版に関しては以下をどうぞ。
◇映画「海炭市叙景」公式サイト
◇YouTube:映画『海炭市叙景』予告編
原作とは違うところもあるみたいです。
by halca-kaukana057
| 2011-06-14 22:47
| 本・読書