青い城

 「赤毛のアン」シリーズ、「エミリー」シリーズで知られるルーシー・モード・モンゴメリ。モンゴメリ作品といえばこの2シリーズだと思っていたのですが、他にも多くの作品があり、日本語で出版されているというのを少し前に知りました。なんと!!
 ちなみに、「赤毛のアン」シリーズは高校生の時にハマり、アンのような生き方ができればいいなと密かに思っていました。でも、シリーズ途中まで止まってしまっています…。どこまで読んだっけ…?


青い城
モンゴメリ:作/谷口由美子:訳/角川書店・角川文庫/2009(単行本は1980年、篠崎書林より)

 ヴァランシーは、29歳の雨の降る誕生日の朝を、涙とともに迎えた。オールド・ミスであること、やせっぽちで身体が弱く美人ではないこと、厳格でヴァランシーを何から何まで管理する母・フレデリック夫人の存在、おせっかいで古いしきたりに縛られているスターリング一族の人々にオールド・ミスであることを嘲笑されること、スターリング一族の一人であるひとつ年下のオリーブは美人で常に比較されること…。自分の意志で何かをしたいと言っても、フレデリック夫人やスターリング一族の人々にとやかく言われてしまうので、大人しく従うしかなった。それでも、ヴァランシーは自身の空想上の理想の場”青い城”と、自然を活き活きと描くジョン・フォスターの本を心の支えにしていた。誕生日のその日、ヴァランシーはずっと気になっていた心臓の痛みをトレント医師に診てもらうことにした。しかし、トレント医師は急用で、ヴァランシーの診察中に慌てて出かけてしまう。
 数日後、ヴァランシーのもとにトレント医師から手紙が届く。ヴァランシーの心臓のことについて書かれていたのだが、その内容は余命は1年。手紙を読んだヴァランシーは、限られた時間を生きるために、あることを決意した…。


 29歳で独身…今では珍しくもないことですが、20世紀初頭の当時ではオールド・ミス。更に、身体が弱いことを理由にヴァランシーを厳しく管理する母・フレデリック夫人と、噂好きでおせっかい、体裁や古いしきたり、かつての栄光に縛られているスターリング一族の存在が、ヴァランシーを憂鬱にさせる。ヴァランシーとは正反対な、スターリング一族のアイドルである完璧な美人・オリーブの存在も。こんな家にいたら、私も憂鬱だろうなぁと感じます。

 そんなヴァランシーを変えたのが、トレント医師からの余命宣告の手紙。心臓の病気で、生きられる時間はあと1年。オールド・ミスであること、憂鬱な環境で誰かに従うしかない自分…。これまで、誰かの陰に隠れて、むなしく生きてきた。自分に価値を与えるため、誰かを喜ばせようと生きてきた。でも、その努力はどれも無駄に終わった。ならば、これから死ぬまでの時間は、自分のために、自分を喜ばせるために生きよう。誰かの機嫌をとったり、嫌々従ってばかりいるのはやめよう…!この決意が、ヴァランシーを変えてゆきます。

 大人しくビクビクして生きてきたヴァランシーの変化に、スターリング一族の皆は驚くばかり。しかし、ヴァランシーは生きがいを感じていた。更に、ヴァランシーはあらぬ噂で村八分にされているアベルと話し、病気で苦しんでいる娘・シシィの看病のためにアベルの家の家政婦になる。体裁を大事にするスターリング一族にとって、村八分にされているアベルとシシィと親しくすることは許されないこと。しかも、同じくあらぬ噂を立てられているバーニイ・スネイスともヴァランシーは親しくなる。人々が話す噂ではなく、その人と心から話すことで、噂は噂でしかないことに気づくヴァランシー。ここから物語は更に急展開してゆきます。

 ヴァランシーの決意とその後の生き方に、共感します。私も人の顔色を伺って行動してしまうことがある。それは、本当にその人のためなのだろうか。ただ、勇気を持って行動できない弱さなのか。牢屋のようなスターリング一族から離れ、アベルやシシィ、スネイスとともに活き活きと暮らすヴァランシー。これこそまさに”生きる”姿。余命一年という極限の状況から、生き返ったようなヴァランシーの姿に、オリーブとは違う”美しさ””強さ”を感じます。

 ヴァランシーが持っている”青い城”の空想も、モンゴメリらしい。「エミリー」シリーズで言えば、「風のおばさん」かな。作品中にも、これぞモンゴメリ作品!と感じるユーモアや皮肉がたっぷりと詰まっています。物語の展開とともに、モンゴメリらしい豊かな表現も楽しくて、どんどん読み進めてしまいました。

 しかし、ヴァランシーの人生はこれで終わりではなかった。後半、まさかの展開の連続に驚きっぱなしでした。冒頭で飾りのようにしか出てこなかったエピソードが、最後に大きな意味を持つものになるなんて。

 帯に書いてある通り、純粋なラブ・ストーリーとしても面白いです。が、私は自分の生きる道は、自分で切り拓くことを決意し実行したヴァランシーの姿に、強く惹かれました。

 他にも、「赤毛のアン」や「エミリー」ではないモンゴメリ作品が数多く出ているのだそう。読みたい。その前に、中途半端になっている「赤毛のアン」シリーズと、アニメ化(NHK教育「風の少女エミリー」)でその存在を知り原作を買ったものの途中までしか読んでいない「エミリー」シリーズも読みたいなぁ…。
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by halca-kaukana057 | 2011-10-21 22:49 | 本・読書


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