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遠い朝の本たち

 少し前に、お勧めしていただき、須賀敦子さんのことを知りました。はい、恥ずかしいことに名前も知らず…。では著書を読んでみようと本屋を探したら、この本に出会いました。文庫はそれまで触れたことの無い方の作品でも、気軽に読んでみようかなと思えます。


遠い朝の本たち
須賀敦子/筑摩書房・ちくま文庫/2001

 この本は、須賀さんの著作の中でも晩年のものだそうだ。須賀さんは子どもの頃から本をたくさん読んできた。その読んだ本と、その本にまつわる思い出や、人との関わりが綴られています。戦前の頃の小学生時代から、海外へ目を向け始めた大学時代、それ以降の長い期間にわたって、読んだ本と様々なエピソードが語られます。今も読み継がれている名作から、古い本らしく私には初耳である本まで、幅広く。

 子どもの頃、私も休み時間になると図書室に行って、読みたい本を探した。名作から、題名が思い出せない作品まで。だが、その頃読んだ本のことをどれほど覚えているだろうか。その本を読んだ時、自分はいくつで、どんな暮らしをして、どんなことを考えていただろうか。その本に関わるエピソードは何かあっただろうか。そして、その本と出会って、自分はどう変わり、どう生きていただろうか。自分に問うてみるが、あまり思い出せない。それを、はっきりと覚えていて、生き生きと、でも洞窟を水が流れてゆくように静かに、落ち着きのある文章で描いている。本当に本が好きで、本とともに生きて、暮らしてきた須賀さん。本が人生と切り離せない存在だったのだろうなと感じました。(私はまだまだ甘ちゃんでしたと実感)

 本の内容も語られるが、主に語られるのはその本を読んだいきさつや、その本を読んでいた頃の生活、思い。家族や友達との関わり。本を読んで、読んだ時の思いとともにその舞台となった場所を訪れることも。本がきっかけとなって、思い出が豊かに語られてゆく。また、読んだ当時はよくわからなくて、時間を経て、大人になってからその意味に気づくこともある。だからこそ、本との出会いは面白いし、かけがえが無い。

 サン・テグジュペリ「星の王子さま」「人間の土地」「夜間飛行」や、アン・リンドバーグ(飛行家・チャールズ・リンドバーグの妻)「海からの贈物」は、私も以前読んではいたが、あまりじっくりと読んでいなかった。もう一度、向き合いたいと思う。サン・テグジュペリ「戦う操縦士」も読んだことは無いが気になる。

 最初からじっくりと読んで、終章で「あれ?」「ああ…!」と思う。そして、また最初から読みたくなり、もう一度読んでしまいました。本を読んで、本とともに生きることで、人生はより鮮やかに彩られる。今読んでいる本たちも大事にしたい。心の中にじんわりと湧き上がってきた思いを抱きしめたいと思う本です。


 さて、須賀敦子さんの著作はたくさんあるのですが、先日、新潮文庫からこんな新刊が。

須賀敦子を読む (新潮文庫)

湯川 豊 / 新潮社


 須賀敦子さんの著作ガイドになるかな、と思って買ってみた。実際は、一度読んだ方向けの本らしい…。とにかく、読んでみようか(年明けになるだろうが…。
by halca-kaukana057 | 2011-12-16 23:25 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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