群緑の時雨 2

 待望の2巻、じっくりと読んでいました。「群緑の時雨(じう)」2巻です。


群緑の時雨 2
柳沼 行/メディアファクトリー・MFコミックス フラッパーシリーズ/2011

 病床の母のため、一日でも早く一人前の武士になり戦に向かいたいと思い、霖太郎は士々国の武芸大会に出ることを決める。しかし、霖太郎の剣術の腕では、とても太刀打ちできるような大会ではなかった。一方、武芸大会に女子であるため出ることを許されなかった伊都。殿様に直談判するために、府介とともに城に忍び込もうとする。2人が城に忍び込もうと奮闘する中、城内では武芸大会が始まった。
 士々国は、隣国の式桜(しきさ)国との戦を続けていたが、士々国が勝利を収め、戦は終わったとの報せが国じゅうを駆け巡った。そんな中、士々国家老の差床家は江戸の普請に参加するようにと幕府から命ぜられる。伊都も共に江戸へ向かうことになったが、江戸に向かうもうひとつの目的を聞いた伊都は…。


 2巻で、物語がひとつの方向へ向かおうとしている。まずは霖太郎の武芸大会。剣術は決して強くはない霖太郎。しかし、力・技術を気力・精神力でカバーしようと立ち向かう姿は、弱くも見えるが強くも見える。大会後、家老(後のキーパーソンとなります)のひとりから、こんな言葉をかけられる。戦に向かわせてもらえるのかと聞いた霖太郎の言葉に対しての言葉。
剣の道は 心を鍛える道 戦の道は 心を削る道
お前さんはまだまだ削れるほどの心にはありますまい
今はひたすら剣の修行を続けなさい
(52ページ)

 剣術は、戦で、実戦で使ってこそのもの…と思っていましたが、考えてみれば現代にも剣道がある。柔道などの武術全般も同じだと思う(多分…武術は一切経験したことがないので、想像ですが…)。戦とは切り離された、己の心を鍛える、磨くための剣術・武術。これは時代を超えて、剣術以外のことにも言えると思う。仕事でも、趣味でも。実戦のためでもあるけれども、それ以上に自分を鍛えることがどれほど難しいか。技術を高めるとともに、精神力をも高める。自分が取り組んでいる様々なこと…仕事や、ピアノ、宇宙天文などの趣味でも当てはまるなと思いつつ、読みました。挫けそうになったら、私も霖太郎と同じように、この言葉を思い出そう。

 そして、士々国は戦で勝利を収め、太平の世が始まると国の人々は喜んでいる。しかし、霖太郎にとっては、戦に行って戦うことをこれまで目標としてきたので、複雑である。これからどうやって生きていくか。そんな霖太郎に、勘解由さんが言った一言。
戦で功を成すことよりも
己にとっての生きていく志を見つけることのほうが よっぽど難しいもんだぜ
霖太郎にとっての 真の志を早く見つけることだな
(79ページ)

 その通りだなぁと思います。何か世の中に大きな流れがあると、それに乗って勝ち上がっていけば成功を収められる。しかし、例えば価値観が多様となった現代なら、何を目標・志としていけばいいかわからないと迷うことも少なくない。私自身、そうだ。こうなりたい、という漠然としたものはあるけれども、はっきりとした”真の志”を見つけられずにいる。見つけようと動いている最中だ。本当に見つかるのかな、とモヤモヤした気持ちになりつつ…。霖太郎にとって、”真の志”とは何なのか。これまでの”誇り”と絡めて、霖太郎の成長が楽しみです。

 さて、霖太郎のことばかり語ってきましたが、伊都にも大きな動きが。江戸普請に行くことが決まったが、その江戸行きの裏にはもうひとつの目的があった。勿論、伊都が素直にその話を聞くわけが無い。ここで、伊都が心の内を霖太郎と府介に初めて話します。何故、女子なのに剣術に励んでいるのか。霖太郎と府介は親から離れて(離れざるを得ずに)暮らしているが、伊都も同じでした。家老という良家に生まれ、姉たちの人生・生き方を見て、自分もこれからどうなるのか知っている。でも、伊都は、自分で自分の道を探したい。そう、伊都は、ただ単におてんばで物好きで剣術に励んでいたわけではない。誰かに決められた道ではない、自分の生きる道を探すために。良家の娘さんなのに、伊都が竹を割ったような性格である理由もつかめてきました。1巻の時は、「ふたつのスピカ」の幼い頃のアスミみたいな感じと思ったが、この2巻を読んでマリカのようなところもあるんだなと感じました。やっぱり、前作「スピカ」も出てきてしまうなぁ。

 2巻の後半、伊都が江戸に行ってから5年…。霖太郎も府介も、凛々しい少年になりました。15歳か。戦が終わり、国も、人々の生き方・暮らしも変わった。霖太郎は剣術に励み、府介は剣術よりも算術や自然のことに興味を持っていた。そんな中、霖太郎と府介がお城へ呼ばれる。呼んだのは、あの武術大会で出会った家老。士々国と式桜国の戦は、本当はまだ終わっていなかったのだ、と…。ああ、ここであの1巻冒頭のあのシーンに繋がってゆくのか。その緊急の召集後、2人は伊都と再会する。さあ、物語はどう進んでゆくのか。これからが本番といったところ。ミステリアスな部分もあり、楽しみです。

・1巻:群緑の時雨 1
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by halca-kaukana057 | 2011-12-20 21:37 | 本・読書


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