「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言

 先日、小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」の後継機である「はやぶさ2」の来年度予算が削減されるという一大事が。元々の要求額の半額以下(今年度と同じ30億)の予算になってしまいました。「計画中止」は避けられましたが…2014年~15年度に打ち上げられなければ、軌道の関係で目標の小惑星に向かうことができない。この予算で、間に合うのか。由々しき事態は続いています。
【関連サイト】
毎日新聞:はやぶさ2:ピンチ 予算削減、打ち上げに暗雲
 ↑話の発端はこれでした。

はやぶさプロジェクトサイト
 ↑「はやぶさ後継機に関する予算の状況について」という川口先生による意見が掲載されています。

毎日新聞:12年度予算案:「はやぶさ2」に30億円
日本経済新聞:「はやぶさ2」大幅遅れも 12年度予算案で開発費6割減 14~15年度打ち上げは微妙に
 ↑閣議決定した予算案について。

 という「はやぶさ2」の危機の真っ只中、私はこの本を読んでいました。ずっと前から読もうと思っていたので、今年中に読もうとようやく読み始めた。そしたら、発端の毎日新聞の記事が。タイミングがいいと言うか、何と言うか…。
 前置きが長くなりました…。

「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言
川口淳一郎/飛鳥新社/2011

 以前、映画「はやぶさ/HAYABUSA」(20世紀フォックス版)のジュニア版ノベライズ(角川つばさ文庫)で、”これまでの「はやぶさ」本とはちょっと違う「はやぶさ」本”と紹介しましたが、この本も”ちょっと違う「はやぶさ」本”。でも、著者はプロジェクトマネージャーの川口先生。「はやぶさ」の計画スタート・開発・運用のエピソードも語られます。ただ、”ちょっと違う”のは、川口先生ご本人が「はやぶさ」プロジェクトや宇宙科学研究所(ISAS)での研究生活を振り返って、どのようにプロジェクトに関わり、歩んできたか。ISASの”先輩”の先生方に学んだこと、失敗、困難…それらが「はやぶさ」の帰還までをどう支えてきたのかについて語っています。「はやぶさ」の道のりをそのまま振り返るのではなく、プロジェクトマネージャーとして、宇宙開発に関わるいち研究者としての視点から、”何を大事にしてきたのか”という要素ごとに振り返っています。

 川口先生の講演会にこれまで何度か行ったので、そこで聞いたお話も多く、講演会のことを振り返りつつ読みました。”大事にしてきたこと”が24挙げられているのですが、どれも「なるほどなぁ」「これは自分の仕事や日常生活でも活かしたいな」と思う内容ばかりです。

 その中でも興味深かったのが、「加点法」について。「はやぶさ」は、イオンエンジンをメインエンジンとした小惑星サンプルリターンの技術実証のための探査機。新しい試みばかりの探査機。なので、達成できたことの得点を加算していく形をとりました(達成表はこちら・ISAS「はやぶさ」サイトより)。最後、「イトカワのサンプル入手」で500点。現実にはこれを達成してしまったわけですが、川口先生自身は、500点とは書いたけれど「これは点数にならない、点数を付けられるものじゃないと思ってはいました」「500点が「はやぶさ」プロジェクトの「満点」かというと、そんなことはありません」(11ページ)と書いています。また、この達成表には書かれていない内容も。ここで「満点」を川口先生は「天井」と表現しています。「壁」と同じように、制限するものとして。テストでも100点満点が”ベスト”とあらかじめ決めておけば、評価は簡単。でも、同じ100点だった人の答えた内容、考えた過程が全く同じではないことも多い。100点満点という数字では見えてこない、表現できない評価内容もある。確かに、例えば私の場合ピアノ演奏で何がどうなれば100点満点なのか、決められないと感じています。実際やっていることに上限を作らない。どこまでも伸びることは出来る、新しいことは次々と出来るのだから。プラスアルファを大事にする。これは、相手は果てしない宇宙だからこそ出来る発想だなぁ。

 それから、9番目の「スケジュールは必ず遅れる」。確かに…よくある。物事を予定通りに進め、期日を守らなくてはならない…それも、ひとつの制約。自分を焦らせるだけ。なるほどです。

 この本の中で、一貫して川口先生が主張していたのが、新しいものを創造すること、新しいことに挑戦すること。「はやぶさ」は小惑星サンプルリターンという新しいことに、斬新なアイディアで挑戦した。また、「はやぶさ」の弟分とも言える、川口先生も関わったソーラーセイル実証機「IKAROS(イカロス)」も、やはり斬新なアイディアでSFの世界でしか語られなかったソーラーセイルを実現させ、現在も飛行を続けている。以前読んだ広中平祐さんの「生きること学ぶこと」でも、「創造すること」の大切さが語られていました。研究者による、「創造すること」への考え方・想いの言葉はとても力強く、熱がこもっています。これまで続いてきたことを引き継いでいくことも大事。でも、新しいものを創造していかないと、その先を見ることはできない。それを象徴するかのような、「高い塔を建ててみなければ、新たな水平線は見えてこない」…川口先生のこの言葉がとても気に入っています。とても清々しく、目を見開いて歩んでいこう。そんな気持ちになれます。

 元々、この本を読んだのは「はやぶさ」本だから、しかもプロマネ川口先生による本だからという理由もあったのですが、自分自身、今新しいことに挑戦しようと考えていて、その背中を押してくれるような本を読みたかったという理由もありました。読んで背中を押された、と言うよりは、よし!と道の無い地へ一歩を踏み出す気持ちでいます。新しいことは、やってみなくちゃわからない。だから、やってみよう。

 「はやぶさ2」についても書かれています。この本を読むと、「はやぶさ2」を実現したい、技術実証ではない、本格的な小惑星理学探査・サンプルリターンへの挑戦を観たいと思います。

 ちなみに、川口先生の生い立ちや、お父様のこと、小学6年生の時の作文も掲載されています。この作文が…凄いです…はい。


【過去関連記事】
はやぶさ/HAYABUSA (角川つばさ文庫 ジュニア向けノベライズ版)
↑20世紀フォックス版映画のジュニア版ノベライズ。これまでの「はやぶさ」本とは”ちょっと違う”「はやぶさ」本です。
生きること学ぶこと
 数学者・広中平祐さんによる自伝的エッセイ。研究者による自己の研究についての言葉をもっと聞きたい、本をもっと読んでみたいです。

はやぶさ、そうまでして君は 生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
小惑星探査機はやぶさ 「玉手箱」は開かれた
↑これまでの川口先生による「はやぶさ」本。
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by halca-kaukana057 | 2011-12-29 23:54 | 本・読書


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