宇宙ヨットで太陽系を旅しよう 世界初!イカロスの挑戦

 世界初のソーラーセイル「IKAROS(イカロス)」。「イカロス」プロジェクトマネージャー・森治先生の本が出ていたのですが、ようやく読みました。岩波ジュニア新書を取り揃えている書店が少ないっ!!


宇宙ヨットで太陽系を旅しよう――世界初! イカロスの挑戦
森 治/岩波書店・岩波ジュニア新書/2011


 ジュニア向け(大体中学から。科学好きな子なら小学校高学年からでも)の本なので、柔らかい文体で丁寧に書かれています。勿論、それ以上の方にも、わかりやすいのでお勧めです。ソーラーセイルとは何なのか、「イカロス」の仕組み、「イカロス」を支える技術や運用、開発・打ち上げからフルサクセスまで、「イカロス」開発段階での工夫と挑戦、そして、森プロマネが宇宙の仕事に就くまでのことが語られています。

 私が面白いなと思ったのは第2章の、「イカロス」計画が始まって、開発段階での話。世界初のソーラーセイル打ち上げを目指していた頃、ちょうど金星探査機「あかつき」を打ち上げるH2Aロケットに、相乗りする形で打ち上げが決まる。「あかつき」は元々、宇宙科学研究所(宇宙研・ISAS)が、M-Vロケットで打ち上げる予定で、M-Vロケットのサイズで設計されていた。しかし、M-Vロケットは廃止になってしまう。そこで、JAXAに統合したのでH2Aロケットを使うことになったが、H2Aロケットにとって「あかつき」は小さ過ぎるし軽過ぎる。これでは、打ち上げている間に強い振動を受け、「あかつき」は壊れてしまう。そこで、おもりになる衛星を載せることになり、「イカロス」や大学などの小型衛星が相乗りすることになった。この時、まだ「イカロス」は形も出来ていない。打ち上げまで2年半。その間に、機体を作らなければ。間に合わなかったら、ただのおもり…。ここからが面白い。実際に打ち上げる本物・フライトモデルと同じ、試験用のプロトタイプモデルを作らずそれによる耐久試験も省略。新しい技術となるセイル以外の部分は既存のものを使い、セイルの開発に尽力する。プロジェクトチームが柔軟に動けたからこそ、「イカロス」は間に合ったし、見事な成功を収めることも出来たのか。

 先日、BS1「Cool Japan」でも、「イカロス」のセイルに使われた日本の折り紙技術が紹介されていました。「イカロス」を支えた、「イカロス」・ソーラーセイルを実現させた折り紙。更に、セイルの膜・ポリイミド膜に使う接着剤も重要なのだと。

 更に、興味深いと思ったのが、「小型プロジェクト」こそ難しいということ。「イカロス」の正式名称は「小型ソーラー電力セイル実証機」。この「小型」を、私はずっと「イカロスが小さいから」と覚えていたのですが、大きな間違い!「小型プロジェクト」が正解。なんて間違いを!!(反省)
 「小型プロジェクト」は「小規模」「安い」「早く出来る」という特徴があります。大きなプロジェクトの前に、小さなプロジェクトで実証実験。これが成功したら、今度は大きなプロジェクトを…と考えがち、私もそう考えていたのですが、実際は違う。プロジェクトチームの人数も少ない、予算も少なく小さいものを作るので何かあった時のバックアップ機能(冗長系)を削らなくてはならない。これは、リスクが非常に高い。そして、いくら小さいプロジェクトだからといって、失敗しても構わない、のではない。もし失敗したら、チャンスをもう1回、は無い。無謀なことだったと、そこで終わってしまう。誰もやったことのない挑戦的なことをしたいのに、リスクの高い環境に置かれ、失敗は許されない。これでは、新しいことに挑戦しよう、という気持ちや場が生まれない。無難な、ありきたりなことばかりすることになってしまう。宇宙開発にとって、新しいものを作ることが、宇宙への新たな視点や発見につながる。それなのに。宇宙開発に限ったことでもない。新しいことをやってみるために、挑戦するために(勿論、しっかりと準備をして)、それらを歓迎するような環境を作ることが大事なんだ。

 第3章では「イカロス」がどのように宇宙を飛び、どんなことをしたかについて書かれていますが、「深宇宙では物理の理論がそのままに起きる」ことに面白さを感じた森プロマネの言葉に、そういえばそうだなぁと思いました。中学生の頃、理科で物理法則を学んで、実験してみても、「地球では重力があるから」「空気抵抗があるから」と理論通りにならない。真空なら、無重量なら理論通りになると聞いても、そう簡単に宇宙には行けないしなぁ…と思ったことを、思い出しました。自分が宇宙に行かなくても(行こうと思えば、宇宙飛行士になろうと思えば…)、宇宙機で実験・再現出来る。確かにその通りなのだけれども、自分にその考え方・視点が無かった!

 第4章では、森プロマネが宇宙の仕事を目指した経緯や、JAXAで出会った人々について書かれています。第5章、終わりは、挑戦すること。ジュニア向け、子どもたち、若い学生さんに読んで欲しいと思います。一方、自分は…読んでため息。何があっても、まっすぐの道を進めなくても、夢を諦めない、持ち続ける。自分にため息をついてばかりの章でした…。でも、今からでも挑戦してみようかな。そんな気持ちにもなれます。

 「イカロス」は、以前にも書いたとおり、現在”冬眠中”。一度”冬眠”した宇宙機と、再び交信出来るのか。「イカロス」と、森先生はじめプロジェクトチームの挑戦は、まだまだ続きます。「イカロス」が終わっても、木星・トロヤ群小惑星への飛行を目指すプロジェクトもあります。ソーラーセイルは、まだまだ始まったばかりです。

 尚、BS1「Cool Japan」は再放送があります。「たたむ」の回です。森先生も出てきます。
NHK:COOL JAPAN 発掘!かっこいいニッポン
 2月18日(土)午後12時~/2月19日(日)午前5時~
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by halca-kaukana057 | 2012-02-13 23:24 | 本・読書


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