2012年 02月 17日
考えの整頓
昨日の記事で、雑誌「暮しの手帖」のことを少し書きましたが、その「暮しの手帖」で連載されている佐藤雅彦さんのエッセイが単行本になりました。いつも楽しみに読んでいます。
考えの整頓
佐藤雅彦/暮しの手帖社/2011
佐藤さんといえば、NHK教育(Eテレ)「ピタゴラスイッチ」や「0655」「2355」を真っ先に思い浮かべます。「ピタゴラスイッチ」は、放送開始当時から観ていて、最初観た時は「なんだこりゃぁ!!?」と衝撃を受けました。こんな子ども向け番組、観たことない!何が衝撃だったって、世の中を様々な視点から観てみよう、観察してみようという姿勢。その姿勢に、ペンギンのピタとゴラ、頼れる百科おじさん、気の効くスーやちょっと不思議な存在のジョンといった可愛いキャラクターたちや、「アルゴリズムたいそう」「アルゴリズムこうしん」「10本アニメ」などの不思議でシュール、でも一緒にやってみたくなる楽しさ、「ああ、そうか!」といったひらめきや気づきが加えられている。「0655」「2355」も、たった5分の番組なのに、また様々な気づきやひらめきがあって楽しくなる。
この本は、「ピタゴラ」などの映像作品とは雰囲気が違う。「暮しの手帖」の雰囲気(あの雰囲気が大好きなのです)に合うように、物静かに、ゆったりと、佐藤さんの身の回りのこと、日常の出来事と、それらについて考えたことを語っている。でも、中身は、「ピタゴラ」の佐藤さんだ、と思う。佐藤さんが出会った様々なもの…些細なことから大きなことまで、ちょっと違う角度から見つめ、考えている。
あとがきで、「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんが、こう書いています。
そして、佐藤さんご自身も、不明なものの周りを何度もぐるぐるしながら、その中心に何があるのか近づこうとした、その過程そのものが面白い、と書いています。
このあとがきを読んで、「ああ、わかる!!」と感じました。私も先に結論を出すよりも、何かよくわからないことや、おぼろげなイメージがあると、その周りをぐるぐると回って、徐々に中心へ近づいてゆく。その近づくために考えている過程が面白いなと思っています。そして結論に達すると、山などの高いところに登って、広い周囲を見渡すような気持ちになる。そういえば、「ピタゴラ」でも、結論を先に言わない。ピタとゴラが、何か不思議なことに出くわして、何故だろう?と考える。そこで、百科おじさんが2人の考えを汲み取りながら、こうなんだよ、と教え、テレビのジョンが出てきて詳しく解説する。「ピタゴラスイッチ」を面白いと思っている理由は、これだったのか!
この本を読んでいて思うのは、人間は何と興味深い思考をする生き物なのだろう、ということ。本来ならブツ切れのものを、連続しているとみなしたり、断片からひとつの物語を想像(創造)したり。もっと詳しく切り込むには脳科学や心理学に関係していくことなのだろうけど、思考するって、面白いな、と思います。
印象に残っているのが、「この深さの付き合い」。愛用の、思い入れも深い万年筆から始まるエッセイなのだが、私も様々なものや人と”深さ”を持って接している・付き合っているのだなと思うと、愛おしく思う。また、「その時」では、大震災の日のことを、これまで私が観た・読んだメディアとは全く違う目線・考え方で語っている。佐藤さんだからこそ、感じた、考えたことだろうし、書けたことだろうと思う。この視点も、あっていい。
今も「考えの整頓」の連載は続いています。単行本第2弾も是非出して欲しいな。
「ピタゴラ」についてもかなり書いたので、「ピタゴラスイッチ」タグも付けておく。
考えの整頓
佐藤雅彦/暮しの手帖社/2011
佐藤さんといえば、NHK教育(Eテレ)「ピタゴラスイッチ」や「0655」「2355」を真っ先に思い浮かべます。「ピタゴラスイッチ」は、放送開始当時から観ていて、最初観た時は「なんだこりゃぁ!!?」と衝撃を受けました。こんな子ども向け番組、観たことない!何が衝撃だったって、世の中を様々な視点から観てみよう、観察してみようという姿勢。その姿勢に、ペンギンのピタとゴラ、頼れる百科おじさん、気の効くスーやちょっと不思議な存在のジョンといった可愛いキャラクターたちや、「アルゴリズムたいそう」「アルゴリズムこうしん」「10本アニメ」などの不思議でシュール、でも一緒にやってみたくなる楽しさ、「ああ、そうか!」といったひらめきや気づきが加えられている。「0655」「2355」も、たった5分の番組なのに、また様々な気づきやひらめきがあって楽しくなる。
この本は、「ピタゴラ」などの映像作品とは雰囲気が違う。「暮しの手帖」の雰囲気(あの雰囲気が大好きなのです)に合うように、物静かに、ゆったりと、佐藤さんの身の回りのこと、日常の出来事と、それらについて考えたことを語っている。でも、中身は、「ピタゴラ」の佐藤さんだ、と思う。佐藤さんが出会った様々なもの…些細なことから大きなことまで、ちょっと違う角度から見つめ、考えている。
あとがきで、「暮しの手帖」編集長の松浦弥太郎さんが、こう書いています。
「この文章には、ものごとの輪郭を辿っている面白さがあります。
突然ものごとの核心に行くのではなく、
その輪郭を歩きながら、
考えていることを文章にしているように感じます」
(281ページより)
そして、佐藤さんご自身も、不明なものの周りを何度もぐるぐるしながら、その中心に何があるのか近づこうとした、その過程そのものが面白い、と書いています。
このあとがきを読んで、「ああ、わかる!!」と感じました。私も先に結論を出すよりも、何かよくわからないことや、おぼろげなイメージがあると、その周りをぐるぐると回って、徐々に中心へ近づいてゆく。その近づくために考えている過程が面白いなと思っています。そして結論に達すると、山などの高いところに登って、広い周囲を見渡すような気持ちになる。そういえば、「ピタゴラ」でも、結論を先に言わない。ピタとゴラが、何か不思議なことに出くわして、何故だろう?と考える。そこで、百科おじさんが2人の考えを汲み取りながら、こうなんだよ、と教え、テレビのジョンが出てきて詳しく解説する。「ピタゴラスイッチ」を面白いと思っている理由は、これだったのか!
この本を読んでいて思うのは、人間は何と興味深い思考をする生き物なのだろう、ということ。本来ならブツ切れのものを、連続しているとみなしたり、断片からひとつの物語を想像(創造)したり。もっと詳しく切り込むには脳科学や心理学に関係していくことなのだろうけど、思考するって、面白いな、と思います。
印象に残っているのが、「この深さの付き合い」。愛用の、思い入れも深い万年筆から始まるエッセイなのだが、私も様々なものや人と”深さ”を持って接している・付き合っているのだなと思うと、愛おしく思う。また、「その時」では、大震災の日のことを、これまで私が観た・読んだメディアとは全く違う目線・考え方で語っている。佐藤さんだからこそ、感じた、考えたことだろうし、書けたことだろうと思う。この視点も、あっていい。
今も「考えの整頓」の連載は続いています。単行本第2弾も是非出して欲しいな。
「ピタゴラ」についてもかなり書いたので、「ピタゴラスイッチ」タグも付けておく。
by halca-kaukana057
| 2012-02-17 23:23
| 本・読書