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疲れすぎて眠れぬ夜のために

 内田樹さんの著書は初めて読みます。文庫と言うことで、何気なく手にとって、読んでみた。


疲れすぎて眠れぬ夜のために
内田樹/角川書店・角川文庫/2007

 この本を読む前に、とある別の心理学に関することについてやさしく・わかりやすく書いた本を読んでいました。しかし、その本に書かれていることに納得できず、理解できず、逆に反感を覚え、イライラしてしまいました。その後、この本を読んだのですが、その本に書かれていたことと、この本で書かれていることが似ている箇所があったのですが、この本だとすんなりと受け止められました。勿論、全く同じこと・内容について書いているのではないのですが、ほぼ同じことについて書いている。それなのに、受け入れられないものと、受け入れられるものがある。しかも、「やさしく」「わかりやすく」書いてあるのに。何故だろう…と考えていました。多分、内田さんの経験を元に書いているから、「やさしく」「わかりやすく」書こうとすると逆に曖昧で不明瞭になってしまうことがあるから、「やさしく」「わかりやすく」書くために極論だけを書いてしまっていたから…かなぁ。内田さんの文章も読みやすくわかりやすいのですが、より身近に感じました。

 この本で書かれているのは、社会や仕事、人間関係や自分自身についての様々なしがらみを見つめること。そして、そのしがらみを自分で解くこと。例えば、「個性」について。「自分らしさ」や「アイデンティティ」は、逆に自分自身を縛るものでもある。「個性」にこだわり過ぎる(ここでの「こだわる」は、本来の意味、ネガティブな意味での「こだわる」です)。以前読んだ「「個性」を煽られる子どもたち」(土井孝義)にも通じる内容。

 また、「ビジネスとレイバーの違い」の箇所にも頷きました。自分で工夫したり自分から変えたりという決定権としてのリスクを取るのが「ビジネス(business)」。一方、決まったことばかりをやっていて、誰がやっても同じ、創意工夫をする余地も無く、賃金は時給いくらと決まっているような仕事。これは「レイバー(labor)」。「仕事」とは異なる、「労働」とも言い換えられると思う。仕事は決まったことをひたすらして、給料を貰うだけのものじゃない。自分で作ってこそ、決定権を持ってこその「仕事」。私の仕事に対する考え方に、新たな引き出しが出来ました。

 この本を読んでいると、本当に世の中には様々なしがらみがあると思う。また、自分自身もそんなしがらみに縛られているし、「~しなければならない」「~であるべきだ」などの様々な思い込みも持っている。時々、「窮屈だ、自由になりたい!!」と強く思うことがあります。社会や自分を縛っている”何か”に目を向けてみよう、と思いました。

 その一方で、「身体の感覚を蘇らせる」の章では、武道から、「形」についても考えている。形があるのは束縛か…いや、自由なんだ、と。逆に、自由過ぎると、創造できなくなる、と。10年ぐらい前に読んだ、「身体感覚を取り戻す~腰・ハラ文化の再生」(齋藤孝)や、私の愛読書でもある「日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」(森下典子)に通じる。

 「しがらみ」なのか「形」なのか。それだけで随分と違ってしまう。世の中を考えることは、不思議で、面倒で、でも面白く…ある。難しい。

【過去関連記事】
「個性」を煽られる子どもたち
日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ
by halca-kaukana057 | 2012-02-23 23:10 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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