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おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記

 以前NHK BSプレミアムで観た佐藤初女さんのドキュメンタリーで、佐藤さんと「森のイスキア」の活動に興味を持ったので、文庫で出てる佐藤さんの著書を読んでみた。
・ハイビジョン特集「初女さんのおむすび ~岩木山麓・ぬくもりの食卓~」の感想:食べること、料理すること、生きること


おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記
佐藤初女/集英社・集英社文庫/2005

 内容は、佐藤さんの生い立ち、若い頃の病気のこと、小さい頃教会の鐘の音に惹かれてカソリック教会に向かったことから始まった信仰の日々のこと、結婚と出産。そして教会で出会った神父さんや苦しい立場にいる人々との出会いから始まった「弘前イスキア」に繋がる活動、そして「森のイスキア」が出来るまで。ろうけつ染めや料理を通して、佐藤さんが考えていること。家族や出会った人々の真摯な生きる姿のこと。それらが、静かに、そっと心の中に入ってくるような文章で語られます。この本を読んで知ったのですが、映画「地球交響曲 第二番」(監督:龍村仁)に出演したことが、佐藤さんと「森のイスキア」が広く知られるきっかけになったのだそう。龍村監督など、佐藤さんに縁のある方々からの”手紙”も収録されています。

 佐藤さんの「森のイスキア」をはじめとする、またそれに辿り着くまでの活動は、クリスチャンとしての信仰によるものが多く、カソリックに関する内容も多く書かれています。でも、佐藤さんは、カソリックの信者として、というよりも、どんな状況に置かれていても生きている人間のひとりとして、悩んでいる人・苦しい立場に置かれている人に寄り添いたい、何らかの手助けをしたいと強く願い、行動してきた。そのことと、若い頃病気になったことで、「食べる」こと=いのちをいただくことが元気になることにつながると思い、食べること・料理をすることを大切にしてきた。この2つの要素が、悩み迷う人々を受け入れ、話を聞き、一緒にご飯を食べる「森のイスキア」の活動に繋がった。その実現には、様々な困難もあり、また一方で支援してくれる人もいた。強い想い・願いを抱きながら、問題や困難にぶつかっても向かい合い、ゆっくりでも進み続け時が来るのを待つ。佐藤さんのこの姿勢に、ただただすごいなぁと感心して読みました。

 読んでいて、何故佐藤さんは自分の時間や財産を削ってまで、他の人に寄り添おうとするだろう?と思ったこともありました。佐藤さんご自身も、疲れて具合が悪いのに訪れてくる人がいてつらい思いをしたこともあるそう。また、穏やかに見える佐藤さんも、苦しいと感じることもあるし、怒りを覚えることもあるのだそう。それでも、その感情を素直に受け止め、「友のために自分を捨てる」、共に生きている命へのあたたかい眼差しと愛情を注ぐ。食べることは命をいただくこと。それは、どんな命も尊いと教えてくれる。やっぱり、食べることをもっと大事にしなければな、と思います。

 佐藤さんの文章・言葉は本当にあたたかく、信仰のお話でも説教のようなものを感じさせない。佐藤さんの心の中からじわりと、すんなりと出てきているものなのだと思う。作り続けている料理の数々も。心さみしくなった時、自分なりに「命をいただく」ことを大切にした料理を作って、食べて、この本を読みたいと思いました。
by halca-kaukana057 | 2012-04-11 23:59 | 本・読書

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