自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション

 先日、4月7日から、青森県立美術館で始まった「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展」
 豊かな森と、北国の厳しい自然とともに生きるフィンランドの人々の暮らしと、フィンランドで生まれその暮らしの中に息づくデザインの数々。そんなデザインは何故どのようにして生まれたのか。
 まだ独立していなかった19世紀「フィンランドらしさ」を求め始めた芸術家たちの作品とその中にある「フィンランドらしさ」。民族叙事詩「カレワラ」の精神。それらが、今フィンランドを代表するモダンデザインに繋がってゆく。また、フィンランドを代表するトーヴェ・ヤンソンの「ムーミン」の物語。「ムーミン」の物語に描かれている「フィンランドらしさ」やフィンランドの人々の暮らしを見つめる特別展です。

 フィンランドの自然、暮らし、デザインプロダクト…。私の興味関心のストライクゾーンど真ん中な展覧会。これは、行くしかない。

 ということで、初日のトークセッションに行って来ました。この日は、展覧会そのものは観ず。今度ゆっくり行きます。

青森県立美術館:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展
フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展
 ↑公式サイト。青森だけでなく、宇都宮美術館、静岡市美術館、長崎県美術館、兵庫県立美術館を周ります。

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 この日、青森は雪でした。4月でも雪の降る青森。

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 豪雪だったこの冬。美術館の周りには、深く雪が積もっていました。その雪の中に、いつもの白い美術館が。何度観てもいいなぁ、この建築。

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 トークセッションには、ムーミンの展示があるフィンランド・タンペレ市立美術館・ムーミン谷博物館の学芸員のエリナ・ボネリウスさん、宇都宮美術館学芸員でフィンランドのデザインに詳しい橋本優子さん(ボネリウスさんの通訳も務めてました)、青森県立美術館の学芸主幹・池田亨さんと、池田さんの通訳の方が登壇。

 舞台上の机の上に、ペットボトルが置かれていたのですが、その横に置かれていたグラスが、イッタラのカルティオでした。完璧だ…!

 トークセッションの内容を、全部書くと大変なことになるので…要点だけ。

 まず、ボネリウスさんが「ムーミン」の作者であり、画家であるトーヴェ・ヤンソンについて、ムーミン谷博物館の展示についてをスライドで説明。ムーミン谷博物館は、タンペレ市立美術館とタンペレ市立図書館がある建物の、市立図書館の側の地下にあります。「ムーミン」の挿絵原画や、「ムーミン」のもととなったイラストが描かれている雑誌「ガルム(GARM)」の表紙、ムーミンの家のミニチュアなどが展示されています。行ってみたいなぁ。

 ここで、トーヴェ・ヤンソンを、「画家である」と書きました。ボネリウスさんもそう仰っていました。そう、日本では”「ムーミン」の作者として”有名ですが、ヤンソンは元々画家を目指していて、作品も残っている。今回の展示には、ヤンソンの油絵も展示されています。日本では滅多に観られない作品です。

 橋本さんによると、この「フィンランド展」は5年ほど前から企画していたとのこと。美術とデザインは違うものとして捉えられているが、ひとつのものとして展示したい。そう思っていたのが形になったのだそう。

 このトークセッションでは、「ムーミン」の中から、フィンランドの暮らしやデザインについて考察します。「ムーミン」の物語の舞台は、自然の中。その自然の中で、ムーミンは様々な人々と交流する。ここが一番フィンランド的なところ。ヤンソンは小島に、、その前の時代のフィンランドの芸術家たち…画家のアクセリ・ガレン=カレラ、作曲家・ジャン・シベリウス、小説家アレクシス・キヴィなどは、森の中に住み、その中で創作活動をしていた。後に、日常生活を大切にし、自然の中での暮らしに入ってゆくデザインプロダクトが次々と生まれた。アアルトの椅子や建築、カイ・フランクの食器、マリメッコのテキスタイル…。そして、フィンランドの人々はそれらを育み、デザインを産業として振興し、よりよいものを世界の人々とも分かち合おうとした。それが現在、花開いている。自然、日常生活、ユニバーサルで社会に寄り添う。これがフィンランドのデザインの特徴。

 また、ユニークだと感じたのが、「ムーミン」と「カレワラ」の関係。全く違う世界観ですが、根っこは一緒なのだという。どちらもフィンランドの自然に根ざしている。冬は長く、寒く暗く、厳しい。夏は白夜だが、短い。このコントラストの激しい自然が、文化に反映されている。また「カレワラ」は英雄譚。ワイナモイネンやレンミンカイネンが、壮大な冒険を繰り広げる「カレワラ」。「ムーミン」もまた、ムーミンと仲間たちが大冒険を繰り広げる。英雄の活躍を、「ムーミン」を通して見る。この見方には驚いた。この2つには、全く共通点がない、同じフィンランド生まれの作品でも違うものと思っていたのに。詳しいことは、販売している図録に書かれているそう。図録…買わねば。

 登壇者のトークセッションの後、会場からの質問コーナーも。その中からいくつか。
 フィンランドは、自然とともに暮らしているイメージがあるのだが、実際はどうなのか、という質問。ボネリウスさんによると、ヘルシンキなどの街では、自然は生活の中の一部分だけ。遠ざかっているのだという(ここに関しては、違う本でも書かれてあったので、そのうち書くつもり)。街での生活と、伝統的な森での生活は分かれてきている。それでも、街に住む人も、湖畔にサマーハウスを持ち、夏になるとそこで過ごすのが理想であり、楽しみになっているのだそう。
 フィンランドも、色々変わってきているのだと実感しました。

 ヤンソンは、ヘルシンキに住んでいたのに、何故ムーミン谷博物館はタンペレにあるの?という質問。確かに。
 これは、よく聞かれる質問なのだそう。ヤンソンが生きていた時、ヘルシンキの美術館に「ムーミン」の原画を含む絵を寄贈しようとした。しかし、ヘルシンキの美術館は、その絵を”美術”と認めず、断った。その後、ヤンソンの友人が協力して、個展をタンペレで開催。それが始まりだったそう。ちなみに、後にヘルシンキの美術館は悔しがっていたとかw

 最後に、登壇者からメッセージが。

 ボネリウスさん:この展覧会で、フィンランド文化の様々な側面・深みを、日本の皆さんに観てほしい。そのひとつが「ムーミン」。その中にある生活も観てほしい。

 橋本さん:日本は、フィンランドをはじめ北欧に対して友好的。これは、表面的なことではないと思う。フィンランド、北欧のものがナチュラルで使いやすいのは何故か。厳しい自然・生活の中で、「全ての人にとってよいものを、よい社会を」という考えが生まれ、それが形になった。だから日本で人気がある。

 池田さん:青森とフィンランドには共通点がある。フィンランドの絵画などを観て、冬、雪を美しく描いていると感じた。青森ではそのものは描くのはあまりない。雪は大変なものと思われている。フィンランドから、青森を見つめ直して。

 以上、こんな感じでした。


 終了後、ミュージアムショップにも寄ったのですが、大変なことになっていました。マリメッコ、イッタラ、アラビア、アルテック、ムーミングッズ、フィンランドのお菓子、雑貨が沢山!もうどうしようかとパニックになりました。嬉しい悲鳴でしたw
 今度は、ゆっくりと展覧会の中身を観に行きます。
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by halca-kaukana057 | 2012-04-18 22:09 | フィンランド・Suomi/北欧


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