この土地で生きてゆくという意志の”design” 「フィンランドのくらしとデザイン展」を観て

 青森県立美術館特別展「フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展」(以下「フィンランド展」)の記事続きです。本編行きます。と言っても、展覧会の内容が充実していて、内容と私が感じたことを一緒の記事にすると、大変な量になる…。ということで、先に、展示を観て思ったこと、考えたことを書こうと思います。展示内容についてはまた別記事で。

青森県立美術館:フィンランドのくらしとデザイン ムーミンが住む森の生活展

 これまで、私はフィンランドの自然や芸術文化、暮らし・ライフスタイルやデザインプロダクトなどに惹かれてきた。その理由は…国は違えど私も北国生まれの北国育ちで、暮らしや自然、それらに対する考え方が共通するところがある。フィンランドの、四季や自然に対する考え方に触れて、自分の身の回りの環境や生活を見直すきっかけになった。素材の質感を大事にし、シンプルで機能的なデザインが飽きず、素敵。その一方で、マリメッコのような大胆な色使い・柄もあるが、寒くて暗い北国の生活を彩る、という意味を知ってからはその発想が素敵だと思った…などなど。今回、「フィンランド展」を観て思ったのは、マリメッコやイッタラ、アルテック、「ムーミン」の物語の背景にあるのは、フィンランドの人々の「この土地で生き、快適に暮らす」という観望と決意を表現したものなのではないか…と。

 展示の一番最初で、19世紀末から20世紀初頭のフィンランドの画家たち…アクセリ・ガレン=カレラやペッカ・ハロネン、ヴィクトル・ヴェステルホルムらが描いた風景画が展示されている。森や湖、雪景色。それらは”スオミ(Suomi)の風景”。ロシアの支配下の中で、ナショナル・ロマンティズム(民族的ロマン主義)が活発になり始め、ロシアからの独立をフィンランドの人々は目指していた。この頃よく言われた「ロシアでもない、スウェーデンでもない」という言葉がある。ロシアでもなく、その前にフィンランドを支配していたスウェーデンでもない、スオミ/フィンランドとは。民族叙事詩「カレワラ」も注目されていたが、フィンランドの画家達が描いた”スオミの風景”をこんなに一度に観たのは初めて。初めて聞く名前の画家も。でも、その風景は、たとえ暗く寒い冬の雪景色でも、”スオミ”を描こうという想いが感じられた。雪もただの白だけじゃない。陰影、光の当たり方で白だけでは表現できない。その雪の表現に魅入った。そして、ガレン=カレラやペッカ・ハロネン、作曲家ジャン・シベリウスはヘルシンキ郊外のトゥースラ湖のほとりに住んでいた。スオミの森と湖にいつも触れられる場所に。その自然は、時に厳しいこともあるけれども、恵みもある。フィンランドの人々は、自然とともに生き、暮らしている。厳しい自然を克服しようとか、対抗しようとか考えず、身を置いている。まずここで、フィンランドの人々と自然の関係を再確認。

 そして、それを前提に、カイ・フランクによるアラビア・イッタラの食器、アルヴァ・アアルトのアルテックの椅子やランプ、マリメッコのテキスタイルと衣服が展示されている。冬が長く、しかも日照時間がとても短いので家の中で暮らすことが多いフィンランドの人々。その自然・環境の中で、心地よく暮らすために、これらのデザインプロダクトが生まれた。機能的で、シンプルで、だけど色彩は豊か。アルヴァ・アアルトの椅子は、白樺の木から作られているが、そのしっかりしているけどやわらかい質感(次の記事で書きますが、アアルトの椅子に座れる展示もあります)。この土地での日々の暮らしを、日常を心地よく、彩りのあるものにしたい。私自身、これまでイッタラのグラスやマリメッコの製品を手にして、身近にあることが、使うのがワクワクすると感じていたのですが、今回、ワクワクするだけではなく、強い決意と意志を感じました。この土地で、快適に暮らそう、という。


 展覧会から話がずれるが、NHK教育「きょうの料理 ビギナーズ」のテキスト5月号に、フィンランドの家庭料理についてのエッセイがあった。

NHK きょうの料理ビギナーズ 2012年 05月号 [雑誌]

NHK出版


 フィンランドのイメージは「お洒落」だと、作家・西加奈子さんはこのエッセイに書いている。ところが、フィンランドには「お洒落」という言葉は無いのだそうだ。「フォルムがいいとか、着心地がいいとかはありますけど、お洒落って言葉はないんです」と…。私も初めて知った。西さんから見れば「お洒落」だと思うことも、フィンランドの人々にとっては、「心地いい」ことをしているだけ…なのだそう。着飾るつもりも、見せびらかすつもりも無い、「心地よさ」を貫くこと。それが、日本人には「お洒落」に見える。このエッセイから、フィンランドの人々が大事にしていることが何なのか、ちょっとつかめたと思っていたのだが、展覧会を観て、なるほどそうか!ともう少しつかめたと感じています(実際にフィンランドに行って見なきゃわからないと思うけど)。


 この展覧会で、フィンランドと、フィンランドの暮らしやデザインについての観方が変わりました。展示されているものが、何故こんなデザインになったのか。デザイナーたちは何を考えていたのか。これから、フィンランドのデザインプロダクトを手にとった時、私はフィンランドという土地の自然と、そこに生きる人々の想い、大切にしていることを想うだろう。実際、思っています。

【フィンランド展過去記事】
自然と暮らしが生んだもの 「フィンランドのくらしとデザイン展」トークセッション
自然も空気も味もスオミ気分 フィンランドのくらしとデザイン展・序章

【過去関連記事】
北欧デザインの背景にあるもの
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by halca-kaukana057 | 2012-05-29 23:53 | フィンランド・Suomi/北欧


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