構造を紐解き、過程を見抜けば「音楽」はもっと深い 特番・パイロット版「ムジカ・ピッコリーノ」(全3回)

【あらかじめの追記2014.4.14】
 この感想は、2013年夏に3回放送されたパイロット版の感想です。2014年4月からの本放送のものとは異なります。
 2014年4月からの本放送の感想は書いてありません。ご了承ください。



 放送終了して少し間が空いてしまいましたが、NHK教育の夏の特番「ムジカ・ピッコリーノ」(土曜朝8:25~,「クインテット」の時間に放送していた番組。)
 …おかげで「クインテット」はお休みでした…辛かった…。


NHK:夏の特集番組・注目番組 夏ナビ:ムジカ・ピッコリーノ(もう消えてる…!)
・予告:今週の「クインテット」もお休みです +来週は?
・とりあえずの所感(9/1):今週も「クインテット」はお休みです +その間の特番「ムジカ・ピッコリーノ」所感

ナタリー:ハマケン、Eテレ音楽実験番組で“モンストロのドクター”に

 あらすじは、忘れられた音楽がモンスターとなって現れる仮想空間「ムジカ・ムンド」。ここで、そのモンスターと化した音楽”モンストロ”の音楽の記憶を取り戻させ、元の音楽の姿にするモンストロのドクター・ドットーレ(浜野謙太)と見習いの子どものアルベルト(山口康智)とフランチェスカ(天内千尋)。この3人が飛行船「ピッコリーノ号」に乗って、苦しんでいるモンストロを探し出し、元の音楽を分析、解明、そしてモンストロたちに語りかけ、再生させてゆきます…。
 
 荒涼とした砂漠が広がる世界を旅するピッコリーノ号。モンストロも、ユーモラスな風貌だったり、モンスターと言わんばかりの姿だったり(音楽の種類、性格によって異なる)。出てくる3人も、レトロな異世界の住人のような風貌。あらすじでは、数多くのモンストロを再生してきた腕利きのドクター・ドットーレは、例えて言うならブラック・ジャック(ドクターといえばこの方でしょう!)のような人物を想像していたのですが…冒頭、必ず寝ていて、アルベルトにたたき起こされているw更に、フランチェスカに押され気味で、なんだか頼りない。実際のところ、全く頼れないのではなく、アルベルトやフランチェスカをそっと指導している感じではあります。が、冴えない。演じている浜野謙太さんは、バンド「SAKEROCK」のメンバーでトロンボーン奏者で作曲家でもあり、俳優でもある。すみません、初めて浜野さんのことを知りました。テレビ出演も色々しているようですが、どれも観たことなかった。「ムジカ~」ではトロンボーンではなく、ドラムを担当。

 音楽担当は「TUCKER」。調べてみたがよくわからず。ナレーションは、リリー・フランキーさん。淡々としたナレーションは「大科学実験」風。いい感じです。

 以前から書いている通り、この番組はパイロット番組、試験的に制作したものだと考えられます。ということで、試験的な部分(挑戦的とも言える)、とりあえずやってみた部分が多い。3人の演技・台詞が棒読みなのは…試験的番組ということなら、まぁ仕方あるまい。強気なフランチェスカが可愛い。

 では、各回ごとに。

◇第1話「モンストロと失われた記憶」(8月25日)
 取り上げる楽曲は、”イギリスのロック”として、ビートルズ「イエロー・サブマリン」
 ドラムやギターが組み合わされたデザインのモンストロ。モンストロの鳴き声が不協和音になっているのだが、一つ一つの音に分割すると、メロディーが現れる。なじみのメロディーも、一気に鳴らすと意味のわからない不協和音。そして、テンポ、リズムをつけて、”曲”の姿を探ってゆく。考古学者が発掘したものの断片から、組み合わせたり分析したりしてそれが何なのか、いつのものなのか、色や形を再現してゆくように。一つ一つの音がわかっても、ただ演奏してみただけでは音楽にはならない。その音楽に合ったテンポがある。伸ばしたり、短く切ったりして、メロディーが出来る。そのメロディーが、「音楽」となり、私たちは歌ったり、演奏したり、聴いていい音楽だなと感じたりする。音楽の当たり前の、基本的な要素なのだけれども、あまりにも当たり前過ぎて、その構造に気がつかないことも多い。番組では、「大科学実験」風の実験やアニメで、その構造を紐解いてゆくのですが、過程が面白い。
 解析し、出来上がった音楽を演奏してモンストロに聴かせ記憶を取り戻させるシーンが、この番組のクライマックスのよう。演奏は、フランチェスカのトランペット、ドットーレのドラム、アルベルトの不思議なボタン式の鍵盤楽器。何だあの楽器?編成が小さいですが、ドットーレのドラムがいい感じ。フランチェスカのトランペットも。


◇第2話「巨大モンストロ現る」(9月1日)
 取り上げる楽曲は、”クラシックの名曲”として、ベートーヴェン「交響曲第5番”運命”」第1楽章
 巨大な竜のようなモンストロが暴れている。他の飛行船が、モンストロにぶつかり墜落してしまった。どうやらこの世界には、他にもピッコリーノ号のようにモンストロのドクターが飛行船で旅をしているのだろうか。それとも、普通の飛行船?この世界の交通手段は飛行船?
 鳴き声から出てきたメロディーは、「ダダダダーン」のあの有名な冒頭部分。それをトランペットでモンストロに聴かせるフランチェスカ。しかし、うまくいかない。ドットーレは、このモンストロからは逃げるべきだ、と主張、警告する。しかし、無視してフランチェスカとアルベルトは、モンストロに立ち向かう。
 この回のポイントは、音の強弱。大きな音、小さな音。その違いが、何を生み出すのか。どう感じるのか。それを、視覚化したり、同じシーンに同じ曲を音の大きさを変えてつけてみたり。強弱、大小でかなり変わります。
 このモンストロには大きな音でないと駄目だ…ピッコリーノ号のスピーカーの音量を最大にして、演奏する3人。今回アルベルトはピアノ。この編成で「運命」は厳しいなぁ…(ドラムがこの曲に入るのはどうなんだろう…)。そう感じたとおり、うまくいかない。モンストロを再生しきれずに、モンストロは飛んでいってしまった。”交響曲”という音楽の大きさ、スケールを自覚して、ドットーレは手を引くように主張していたのだ。なんと…。今は手に負えない相手だけど、いつかは…とつぶやくフランチェスカ。そこで終了。えええ!再生しきれずに終わる回もありですか!!
 この番組が取り上げる音楽は、ありとあらゆるジャンルの音楽。クラシックも交響曲も。でも、第2回で「今は手に負えない」宣言をしてしまうとは…。不完全燃焼だなぁ…。確かに、交響曲のスケール感は伝わったけど、物足りないなぁ…。観ている側に、クラシックは難しい、というイメージを植えつけかねない…。ありとあらゆるジャンルの音楽を取り上げるなら、このジャンルの音楽はこう、という固定概念を植えつけるような演出はして欲しくない。
(それを思うと、「クインテット」のあの編成であのアレンジでも、交響曲や編成の大きなオーケストラ曲を演奏してしまっていたのは偉大としか言いようが無い。あまり比べることはしたくないのだけれど。)


◇第3話「モンストロの足あとのひみつ」(9月8日)
 取り上げる曲は”民族音楽”として沖縄民謡「谷茶前(たにちゃめ)」
 モンストロの前に、足跡がある。その足跡に注目した3人。歩き方、足跡からリズムがわかる。そして、モンストロの鳴き声を分析すると、いつもと雰囲気が違う。聴いたことがある、と思い出そうとするドットーレ。そう、その雰囲気の違いは、音階の違い。西洋音楽の音階とは異なる音階が、世界中にはある。様々な音階を、鍵盤ではなく、色鉛筆で表現したのは巧いなと思いました。鍵盤だと、西洋音楽の平均律にとらわれてしまうから。そして出てきた沖縄の音階。この音階と、先程の足跡のリズム…踊りのリズム。トランペットで沖縄民謡を演奏したのは斬新。ドットーレとアルベルトは踊ってるだけw今回は見事にモンストロも元の音楽を取り戻した。
 全3回の中で一番面白い、よくまとまっていると感じた回でした。

 どの回でも、最後にその楽曲のイラストが登場します。このイラストが良かった。巧いなぁ。誰が書いているのだろう?

 3回観てみて、本放送にするなら改善する点がたくさんあるなと感じました。棒読みの演技・台詞もだし、演奏の編成もちょっと変えた方がいいかも。第2回のような消化不良はちょっと…。2・3回に分けるような形にして放送できるなら、その方がいいと思う。番組のコンセプト、音楽の不思議とは、音楽とは何か、そしてその魅力を解き明かすために音楽を視覚化する…というのは伝わってきている。インパクトはあるのでいいと思う。

 さて、続きはあるのか、あるとしたらいつなのか。音楽の深みへ、旅は続くのか。本放送化するなら、楽しみにしています。
 でも、この土曜朝8:25からの「クインテット」の枠以外で!「クインテット」もまだまだ観たいという意味でもあるし、「おかあさんといっしょ」の後、続けて観るのは年齢層が高めに感じます。

 以上、遅くなりましたが私の感想でした。
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by halca-kaukana057 | 2012-09-16 17:56 | Eテレ・NHK教育テレビ


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