コンサートという名の「舞台」 宮川彬良と大阪市音楽団 コンサートレポその2

 宮川彬良さん&大阪市音楽団・東京公演レポその2です。
・その1:「ヤマト」音楽・宮川音楽は偉大! 宮川彬良と大阪市音楽団 コンサートレポその1

「ゲバゲバ90分」で思い切り盛り上がった後、休憩へ。もう楽しくて仕方ない!ロビーでは、ビールやワインが…。「ゲバゲバ90分」は「のどごし生」のCMで流れてますね…ビール飲みたい…と横目で見つつ、休憩終了。(「のどごし生」は正確にはビールじゃない、発泡酒だ)

 飲まなかったのは飲んだらきっと寝てしまうだろう…と思ったから。寝てはいられません。第2部は「欲望という名の電車」。この曲を生で聴きたいと思ったのが、このコンサートに来るきっかけでした。寝るわけにはいかない。心して聴く。またあの開演チャイムが聞こえる。市音の皆さんもステージへ。A(ラ)のチューニングの音。さぁ、第2部の始まりです。

【第2部】
宮川彬良:作編曲
 バレエ音楽「欲望という名の電車」から 
 <I.鏡~回想 II.街 III.孤独 IV. 博奕 V.少年 VI.愛欲 VII.迷宮 VIII.幻>
指揮・ピアノ:宮川彬良/吹奏楽:大阪市音楽団


 第1部では指揮台があったのですが、撤去されていました。アキラさんの弾き振りです。楽器の配置も少し変わったみたい。
 舞台にアキラさんが登場。紫色のベスト。いつもなら、スタスタと、颯爽と登場するアキラさんが…いつもと違う。ゆっくりと登場、舞台中央まで行かず、途中で止まって、曲紹介。まるで、脚本の台詞を語るように。ここで、「ああ、これはただのコンサートじゃない。アキラさんと、市音の”舞台”なんだ」そう直感しました。

 第1曲、「鏡~回想」…揺らめくように静かにピアノが鳴り、サックスのメロディーが…これだ、この曲だ。CDで聴いて、魅了されて何度も聴いた。でも、CDと音が違う。生の音。生の迫力。CDでは再現しきれなかった音がバシバシ届く。聴こえてくる。そして、CDにはない、演奏しているアキラさんと市音の皆さんの姿。

 「アキラさんと、市音の”舞台”」…元々はアキラさんが音楽を担当した創作舞台「欲望という名の電車」の音楽、舞台のための音楽(舞台を観たことがないのが残念…)。台詞も、バレエ(日本舞踊)も、振りもある。台詞・言葉と身体表現で、役者の皆さんはその舞台の世界を演じる。ならば、音楽家は同じ舞台でも、コンサートという場・機会で、音楽を台詞として、表現をつけて演じる(演奏する)。
 私は音楽家ではない。音楽は大好きだ。演奏は、ピアノをほんの少しだけ(しばらく練習していないけど)。楽典を完璧に理解しているわけでもない。この曲を聴いて、スコアが頭に浮かぶ、こともない。だから、音楽家の”音楽という言語”を理解しきれてはいない。でも、音や音色、響き、アキラさんの指揮や市音の皆さんの表情・表現から、想像することは出来る。
 テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」原作は読んで、新幹線の中でも予習だと読んできたので、この曲は原作のあの部分かな?と思うところはあった。でも、演出は原作とかなり違うから、同じ、合っているとは限らない。だから、色々と想像する。登場人物たちの苦悩や孤独、それらと隣り合わせの欲望。登場人物だけのものじゃない、ステージのアキラさんや市音の皆さんもどんな気持ちで演じて=演奏しているのだろう。そして自分や、誰かのことにも重ねてみる。CDを聴いた時、自分がこの音楽の中にいて何か苦悩を演じているよう…と書いたのですが、生で聴いてもその気持ちはありました。が、自分に置き換えるよりも、曲そのものを受け止める方が強かった。
 食い入るように舞台を見つめ、音楽を耳だけじゃなくて、音という空気の振動を身体で受け止めながら、何かを考えたり、感じたり、何も思わずにただ音楽を受け止めてみたり。ライトの演出も、音楽を盛り上げていました。

 第2曲「街」を聴くと、路面電車の走る街とそこに生きる人々の姿をイメージします。街の雑踏の音、人々の話し声、そして彼らが持つ欲望や孤独。第3曲「孤独」はピアノとサックスがお互いの孤独をぼつぼつと語るよう。そして第4曲「博奕」の迫り来る力強い音とリズム。ドラムとエレキギター、ベースがアクセントになっていて、これまたロック。この曲の途中、シャウト声が入り、CDを聴いた時に「これは一体?」と思っていたのですが、声の主がわかりました。コンガを演奏していたパーカッションさん。原作だと、男たちがポーカーをしているシーンだろうか。第5曲「少年」はピアノもたっぷりと。第6曲「愛欲」は「街」の再現部、でもちょっと違う。この冒頭のピアノの不協和音が、不安になるのだけれども病みつきになる。原作ではだんだんと精神を病んでゆくブランチか…私も不安になってゆく。第7曲「迷宮」、「孤独」の再現部。しかし、「孤独」とは違ってピアノ協奏曲のようなスケールに。弦楽器はないけど、吹奏楽でここまでの広がりを表現できるんだと驚いていると、あの暗いワルツが。ここで、アキラさんはアコーディオンを。指揮して、ピアノ演奏して、譜めくりもして、今度はアコーディオン。変拍子もある現代的な部分もある曲なのに、演奏も乱れないのは物凄い練習を重ねているからなのかな。この部分がピアノではなく、アコーディオンである意味も考えてみる。ピアノよりも人間の声に近いような気がする。このピアノ協奏曲風部分~ワルツ部分の盛り上がりが凄かった。そして最後「幻」。一転して穏やかな、優しさや明るさを感じる曲調…平和?いや、「幻」だ。また不安が、「鏡~回想」へ。大きな結末を迎えたような壮大なラスト。

 約40分にも渡る楽曲、何度もCDで聴いていた曲なのに、自分の中でこの音楽をどう受け止めたらいいのかわからない気持ちにもなりました。困惑とか、意味不明という意味ではない。音楽とそれが伝えるものの激しい流れが、一気に頭と心の中に流れ込んできて、自分の頭の中で処理が追いつかない。しかも、今度は視覚からの情報もある。演奏後、拍手をしながら、ただ圧倒されていました。あまりにも圧倒されていて、今もその響きが耳に、頭に残って離れません。CDを聴いても、やっぱりコンサートでの音が頭の中にあります。

 熱演後のアキラさんと市音の皆さんは、とても清々しい表情をしていました。

 ちなみに、第7曲「迷宮」の後で、ここで終わりかと思って拍手が。違う違う!まだ続くよ!ラストはこの後だよ!と心の中で叫んでいました…。でもあの熱演は、拍手ものだったと思います。

・CDの感想記事:この音楽の中に自分がいる 宮川彬良&大阪市音楽団「欲望という名の電車」
↑この記事の最後で、このコンサートのことも書いてました。「行きたい」と。行ったよ、自分!

欲望という名の電車

宮川彬良/大阪市音楽団/ フォンテック/2012



 ちなみに、11月23日、ホームの大阪・ザ・シンフォニーホールでもコンサートがあるのですが、ザ・シンフォニー・ホールのサイトに、アキラさんのインタビューがありました。「欲望という名の電車」に至るまで、「私のお気に入り」(「サウンド・オブ・ミュージック」より)、ソナタ「ブラック・ジャック」(これも生で聴きたい大好きな曲!)の秘話も含めて語っています。コンサートに行った方、これから行く予定の方、CDでもコンサートでもいいから聴いてみたくなった方、必読です。
ザ・シンフォニー・ホール:公演情報:炸裂ライヴ!宮川彬良&大阪市音楽団

(その3に続く)
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by halca-kaukana057 | 2012-10-21 23:56 | 音楽


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