空と飛行機に魅せられて 「Art and Air」展

 もう11月…なのに、夏に行った展覧会のことを書きます。今更…ですが、この展覧会のことは書いておきたい。何故今頃になってしまったか…えっと…何故だろう…?

 すっかりリピーターとなってしまっている青森県立美術館。春の「フィンランドのくらしとデザイン」展は最高でした!夏はうって変わって、空と飛行機がテーマの展覧会。「Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」。2010年に「ロボットと科学」展も開催したことを思い出しました。今度は飛行機か!こっちも大好きですよ。行きますよ。

◇春のフィンランド展:”心地よい”を求めて 「フィンランドのくらしとデザイン展」本編
 ↑フィンランド展の記事はいくつかに分けてあります。この記事の一番下に、他の記事へのリンクがあります。
◇2010年の「ロボットと科学」展:”人間”を投影する、機械以上の存在 「ロボットと美術」展
 ロボットを科学、美術、文化と様々な面から観てみる。面白かった!


青森県立美術館:Art and Air ~空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語

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 行ったのは8月でした。
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 行く度に見惚れてしまうこの白い建物。夏は青い空とのコントラストがいい。この建築も、自然・光の当たり方・四季をバックにした「美術作品」なんだなぁ。
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 美術館前の、芝生の広場もお気に入りです。なだらかに広がる緑。

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 エントランスに入ると、ここにも作品が。青秀祐さんの「Operation "A"」。ひとつひとつの紙飛行機が、大きな飛行機を形作っている。

 人間は、空に憧れてきた。空を飛ぶことに科学・技術で挑戦し続けてきた。空、空を飛ぶこと、空を飛ぶための乗り物・飛行機。人間がどのように憧れ、挑んできたか。そして飛行機が出来て、その飛行機と人間はどのように空を飛んだのか。飛行機が当たり前となった現代での、空を飛ぶことに対する人間の思考・芸術とは。このような切り口から、様々な展示が広がっています。

 私はよく空を見上げる。昼間の空も、夜の空・星空も。星空は宇宙を意識しているが、昼間は空そのものを意識している(同じ空なのに、昼間だって空は宇宙に続いているのに不思議なものである)。空の青さや太陽の角度による色の移り変わり、雲の動きや色、形。ぼーっと眺めながら、刻々と変わるその表情に見惚れている。そして、空を飛ぶ鳥や飛行機。飛行機に乗ってどこかに行きたいなぁ、空を飛んでみたいなぁなどと思う。白鳥などの渡り鳥を見ると、今年もよく飛んで来たなぁ、自分の翼で遠くからよく飛んでくるなぁと思う。こうやって空を観ている時、心の中には空への憧れの気持ちがある。広くどこまでも続いている空。この地上と繋がっているけれども、手を伸ばしてみると「届かない」と思う。空を飛んで、見たことも無い世界を見たい、遠くへ行きたい。空から地上の世界を観てみたい。今日も歩きながら、やはり空を見ていた。

 空に憧れた人間の歴史から、展覧会は始まりました。ギリシア神話のイカロスの物語。「昔ギリシャのイカロスは ロウで固めた鳥の羽 両手に持って飛び立った~」の「勇気ひとつをともにして」の歌でも有名なイカロス。イカロスは作った翼で飛ぶが、ご存知の通り太陽の熱でロウが溶け、翼が壊れ墜落してしまう。そう、空を飛ぶことは、重力に逆らうこと。墜落するリスクを抱えている。墜落=死。空への憧れは、手が届かないだけじゃなく、物理法則に逆らおうとすること、そして墜落という危険もあるからこそ「憧れ」なんだと感じました。そのことが、頭から抜けていた。光だけ見つめていたけど、影の存在を意識しました。確かに、飛行機に乗る時事故がないといい、と思っている。でも、ここで考える事故とは、乱気流や台風に巻き込まれるなどの類で、墜落までは考えていない。
 その後、レオナルド・ダ・ヴィンチやライト兄弟、サン=テグジュペリ、リンドバーグと飛行機を考え・作り・乗って空を飛んだ人々について語られます。海外だけでなく、日本人の飛行の歴史も。日本人の飛行の歴史はここで初めて読みました。そういえば、海外の飛行家たちの伝記はあっても、日本人の飛行家の伝記はないなぁ。

 飛行機が存在する以前から、人は空から見た地上の世界を描いてきた。鳥瞰図である。この鳥瞰図を「神の視点」として歴史を追って紹介している。歴史の教科書にも平安時代の絵巻にある空から見たような絵が載っているし、それ以降にも俯瞰構図の絵は多数存在している。飛行機も無い、高い塔も無いのに、どうやって描いていたのだろう?人間の想像力?と考えながら展示を見ていました。思うと不思議です。
 空からの視点は、空を飛ぶことだけでなく、山の頂上や高い塔・タワーからも見ることが出来る。そんなタワーの最先端である、東京スカイツリーも紹介されています。高さといい、構造といい、よく造ったものだよなぁ。今度東京に行ったら観に行こう(登るかは未定)。

 そして、飛行機は進化を遂げ、戦争にも使われる。戦闘機の歴史や、戦闘機を描いた絵が展示されているコーナーが結構広かった。戦闘機は、先述した重力に逆らうことと、墜落=死をはっきりと意識させる。効率よく飛び、攻撃する。攻撃されれば墜落する。空は憧れだけの世界じゃない。厳しい世界だ。ちょうど8月に観たので、戦争というテーマを意識して観ていました。
 戦闘機の図面も展示されています。シャープで、無駄のない図面。図面の用語などはわからないのですが、図面も美術作品として観ることも出来る、と感じました。機械的のようで、完全な無機質な「機械」には思えない。でも、無駄が無い。惹かれます。

 戦闘機の一方で、旅客機も登場してきます。たくさんの人々を乗せ、目的地へ安全・快適に飛んでいける旅客機。戦闘機とは違う、飛行機の形。戦闘機は訓練された飛行士しか乗れないけど、旅客機は一般の人も乗れる。飛行機が、空が身近になる。旅客機の広告や写真は、戦闘機のものとは大きく違います。明るさがある。でも、飛行機であることには変わりは無い。やはり、空を飛ぶことのリスクはある。

 飛行機は様々な美術作品に描かれている。飛行機そのものの「かっこよさ」をストレートに出した絵、デフォルメされた絵。空と人間を結んだ飛行機の描かれ方も、憧れの光の方を意識するか、影の墜落を意識するかで変わる。また、機械としての見方も。
 飛行機や空を描いた漫画家・松本零士さんのコーナーも。ここに、H2Bロケットと宇宙輸送船・HTV(こうのとり)の模型や、開発中止となってしまったGXロケットの模型もあって驚いた。まじまじと見つめていたのは私ですw戦闘機乗りを描いた松本さんの漫画も展示されていて、読みふけってしまいました。
 もうひとつ、まじまじと見てしまった展示が。「日本ロケットの父」糸川英夫博士の、一式戦闘機「隼」のスケッチ。展覧会に行く前から、糸川博士に関する展示もあると聞いて、楽しみにしていたのです。ロケットの開発の前、戦時中は戦闘機の開発をしていた糸川博士。その「隼」の性能について説明する際に描かれたというスケッチ。これが糸川博士の書いたものなんだ…とまじまじと観ていた、というわけです。
 戦後、日本での飛行機開発は禁止されてしまい、そこで糸川博士はロケット開発を始めるのです。そう、糸川博士の戦闘機も「隼」、後に「イトカワ」と名づけられた(探査機が打ち上げられた後のことですが)小惑星に向かい、タッチダウンしてサンプルリターンを成し遂げた小惑星探査機も「はやぶさ」。糸川博士と「隼(はやぶさ)」の原点はこれなのか…とも思いつつ観ていました。

 戦後から現代へ。飛行機は、旅客機が飛躍的に進化し、またSF漫画やアニメにも描かれます。ここは日本の美術館。日本のサブカルチャーについても展示します。「マクロス」などに出てくる戦闘機、「アイドルマスター」のキャラクターが描かれた「アイマス機」模型…いわゆる「痛飛行機」まで。うん、日本だなぁw
 プラモデルの箱に描かれる絵も多数展示。精巧な飛行機を、水彩画で描いている。どうやったらこんなタッチ、色の重ね方が出来るのだろうと観ていました。機械を描くのが苦手なので…。

 更に、飛行機は新しい形へ。映画「風の谷のナウシカ」に出てくる滑空機「メーヴェ」。「ナウシカ」を観る度に、メーヴェって不思議な飛行機だなぁと思っていました。それを実際に作って、飛んでいる方がいるのです!知りませんでした。八谷和彦さん。機体の実物が展示されていました。しかも撮影可!
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これが「メーヴェ」…映画で観たのと同じだ!
 実際に飛ばした映像も流されていました。本当に飛んでる!人が乗って飛んでいる!よく作ったなぁ。作ったもので飛ぶのも、気持ちがいいだろうなぁ。と思ったら、壁に、宇宙開発に関するコラムや著書でおなじみの松浦晋也さんの寄稿文が!国産旅客機・YS-11の引退と、八谷さんのプロジェクト、自分で飛行機を作って空を飛ぶこと。じっと読みふけりました。宇宙好きにもたまらない展覧会ではないですか…!

 いつもの青森県立美術館での特別展は、特別展スペースで終わるのですが、今回は常設展のスペースも一部使っていました。いつもより広い。最後に見たのが、押井守監督による「東京スキャナー」。東京の街を飛んでいる映像作品で、東京の名所を次々と「スキャン」してゆく。SFのような視点。飛んでいる感覚がありました。この映像作品の入り口に、押井監督のコラムが掲げられているのですが、印象深い内容だった。人間は飛んでも、重力に逆らいきれてはいないのだ、と。

 この飛ぶことと墜落することは、稲垣足穂の作品に繋がってゆきます。稲垣足穂の文章には惹かれます。


 初めて知ったことも、得た視点も多い展覧会でした。とても見ごたえがありました。美術館から出て、また空を見上げていました。すると、空に何かが見える。
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 鳥の群れでした!何の鳥だろう?渡り鳥?夢中で追いかけ、カメラを向けます。
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 鳥は空の向こうへ飛んでゆきました。ああ、やっぱり空には、人間の知らないことがたくさんある。届かないものがある。飛行機がどんなに進化しても、人間にとって飛ぶことは特別なことなのかもしれない。そんなことを思いました。

 この「Art and Air」展は、青森県立美術館だけの企画。他の美術館での展示はなし。でも、図録(カタログ)が一般発売されています。

Art and Air ~空と飛行機をめぐる、 芸術と科学の物語 或いは、人間は如何にして天空に憧れ、飛行の精神をもって如何に世界を認識してきたか。(P-Vine Books)

Art and Air展実行委員会、工藤健志(青森県立美術館) / スペースシャワーネットワーク


 読んでいると、展覧会のことを思い出します。工藤健志さんの「あとがきにかえて」には、この「Art and Air」展に至るまでの経緯、作り方などが書かれています。考えさせられる内容です。飛行機と人間、技術と人間という読みもあるけど、「展覧会」というものそのものへの問いかけもある。このような面白く、意欲的な展覧会、どんどんやって欲しいです。

 この本には、CDもついてきます。ミュージシャン・伊藤ゴローさんによるサウンドトラック。展覧会のサウンドトラックなんて初耳です。でも、聴いていると空への憧れと、手の届かない気持ちを思います。ギターとチェロの音が澄んでいて、落ち着きます。空を見ながら聴きたい音楽です。

 現在、青森県立美術館では、奈良美智展を開催中。これも行くんだ…今年の青森県立美術館の特別展は私のツボばかりついてきます。嬉しいw
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by halca-kaukana057 | 2012-11-02 23:50 | 興味を持ったものいろいろ


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