都会の星

 「この本は出て欲しかった」「出版、待ってました!」「本当に書籍化したんだ!」この本が出ると知った時、手に取った時の心の叫びです。

都会の星
石井ゆかり:文/東山正宜:写真/洋泉社/2012
 
 以前読んだ「星をさがす」の著者・石井ゆかりさんと、朝日新聞の記者(2010年6月14日、朝日新聞朝刊1面の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還の写真を撮影した方)・東山正宜(まさのぶ)さんによる、星景写真集です。



 この写真集は、元々東山さんの星景写真の展覧会から生まれました。
RING CUBE | Ricoh Japan:doughnuts企画 写真展「都会の星 -写真:東山正宜 ナビゲート:石井ゆかり-」
 ↑写真展のサイト
アストロアーツ:都会の空にも星は巡る 銀座で比較明星景写真展が開催中(2012.7.13)
 ↑「星をさがす」で星空観測、天文学について監修したアストロアーツでも記事になりました。

 都会は真夜中でもネオンや街頭、家の明かりが明るく、光害が酷いので天体観測、星見は難しい、厳しい。でも、カメラを三脚に固定して、数分~数時間シャッターを開けっ放しにして、その画像を合成すると、星が日周運動をしている軌跡が描かれる。ビルや様々な建築、夜景と一緒に星空を楽しむ「比較明星景」の手法の星景写真を広めたのが、東山さん。朝日新聞で記者をしている傍ら、街角で三脚にカメラを固定し、撮影し続けた星空。その写真展を開催するにあたって、星占いコラムで人気の石井ゆかりさんに、その星空にぴったりのコラムを書いてもらって一緒に展示しよう、というのがこの展覧会でした。「星をさがす」に続き、これも見事な天文と文化の融合。展覧会を観に行きたいと思っていたのですが、東京…地方民には厳しい。写真展で、石井さんのコラムも付くのだから、書籍化されたらいいのにな、と思っていました。そうしたら、本当に書籍化されました。素晴らしい!ありがとうございます!!

 上でも、都会では天体観測、星見は厳しいと書きました。私は田舎に住んでいて、家からは4等星ぐらい、空が暗く澄んでいれば5等星以上、夏なら天の川がぼんやりと見える、ありがたい場所で星見を堪能できています(ただし、天候が変わりやすい)。東京在住の方から2等星も見えない、と聞いた時、私は東京には住めない…と思いました(東京在住の皆様ごめんなさい)。それでも、私の住んでいるところでも、繁華街は夜も明るく、2等星ぐらいまでしか見えないことには驚きました。地方でもこんなに光害が…。家に戻ってきて、夜空を見上げると、見える星の数が違う。やっぱりこっちだよなぁ、とも。同じ空なのに、ちょっと条件が違うだけで見える星の数、星座の数が大きく違ってしまう。光害を憂うばかりです。

 でも、星座を探す時に、星が見え過ぎて逆に探せなくなる、ということもあります。贅沢な、と言えばそうなのですが、実際、そんな星空(プラネタリウムでも)を観ると、ただ圧倒されてしまいます。あれが北斗七星で、北極星があって、おうし座オリオン座、おおいぬ座とこいぬ座、ふたご座。おうし座のプレアデス星団・すばる、オリオンのベテルギウスとリゲルの色の違い、おおいぬ座のシリウスとこいぬ座のプロキオンと、ベテルギウスを結べば「冬の大三角」。おうし座の一等星・アルデバランの近くに見えている明るい星は、星座の星ではなく惑星・木星…と探してゆくには、星が見え過ぎても困るのです。適度に星が見える明るさの夜空。都会だと、明るい星しか見えないので、逆に考えると、目立った星を探しやすい。天文観測入門者には、都会の空で著名な星を探すのがやりやすい。都会でも、星は見えている。星見が出来る。望遠鏡や双眼鏡で天体観測だって出来ます。東京には国立天文台や科学館の観望会も多いし、天文愛好家たちが行っている観望会も多い。田舎だと、満天の星空に圧倒される形ですが、都会だと、明るい星をひとつひとつ確認しながら親しんでいける。星見の形がちょっと異なるけれども、星見は楽しめる。

 そして、東山さんの「比較明星景」は、都会の星空のまた違う一面も見せて(魅せて)くれる。本を手にとって、開いて…圧倒されました。これが、都会、都心で撮影された星空…?明るいビルに、星ぼしの軌跡。圧倒されました。星もそうですが、ビルや建築物と一緒に写っているのがいい。歴史のある建造物や、人気の観光スポット、夜景のきれいな場所。そんな「人工」の世界に、「自然」の星ぼしが軌跡を描いている。飛行機の航跡が写っているものもある。「自然」と「人工」が調和しているように見えます。それは写真と、宇宙が刻んできた時間や、星・天体の名前の由来や伝説についての石井さんのコラムが調和しているからだと思う。そして、人間も、人工のものも、星ぼしも、宇宙というひとつの空間の中にあるから。

 石井さんのコラムと星空の写真を一緒に観ていると、宇宙が身近に感じられる。田舎で見る星空は、崇高で、まさに遠くにある感じもある。確かに自分が立っている地球の大地と、空と繋がっているのだけれども、その宇宙は果てしなく遠い。これ以上光害を酷くしてはならない、守り続けねばならない、そんな気持ちにもなる。一方、都会の星空は、人の暮らしとともにあるような感じがする。歩いていてふと見える明るい星を、「きれいだな」と思う。そんな身近さ。田舎でも同じことは思うのだけれども、以前旅行で東京に行った時、木星が見えていて「ここでも木星が見えている」と安心した気持ちになれた。人ごみで疲れたせいだろうか。

 最後には、国際宇宙ステーション(ISS)の可視パス画像と、冒頭に書いた小惑星探査機「はやぶさ」の帰還の画像もあります。「はやぶさ」の画像を見て、あの帰還の日、帰還までの7年間、帰還後のことを思い返すとともに、石井さんの文章も合わせて涙が出そうになりました。人工の星も星だ。星をつくりたいのだ。これからも、遠くの宇宙を観たくて、宇宙の過去を知りたくて、太陽系や地球がどうやって出来たのかを知りたくて、人工の星をつくり、飛ばす。その遠くへ向かう、遠くを見つめる姿は、美しい。その最後の輝きも。

 「はじめに」を石井さん、「おわりに」を東山さんが書いています。どちらの文章にも共感しました。

 私たちは、星空とともに、宇宙の中で生きている。
 どんなに夜空が明るくて暗い星が見えなくても、星はそこにある。
 見えなくても、そこにある。

 書籍化に心から感謝します。

 最後に、展覧会とこの本が生まれる背景を東山さんのブログからどうぞ。
痛い目みてなんぼ:写真集「都会の星」ついに発売!
 東山さんのブログには、「比較明星景」の写真がアップされています。
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by halca-kaukana057 | 2012-12-27 23:36 | 本・読書


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