大阪市音楽団存続問題と「文化の空白」+存続支援運動に対して思うこと

 今年、私にとって最も大きかった出来事のひとつが、宮川彬良さんと大阪市音楽団(市音)のコンサート(東京公演)に行けた事、ずっと聴きたい・生で直に触れたいと思っていた”アキラサウンド”に触れることが出来た、思う存分楽しんだことでした。10月のこと、あれから3ヶ月。思い出しては「いいコンサートだったなぁ」「行ってよかった」とかみ締めています。
・コンサートレポ:その1(第1部) / その2(第2部) / その3(アンコール・終演後・感想雑感)
 ↑この記事に特に関係するのは「その3」。

 今回、行こうと決めたのは、市音の東京公演はなかなかない、関西から遠く離れている私の地域から行くなら東京公演がチャンスだったということ。それから、存続問題で揺れている市音を応援したいということ。

 音楽のことを語るのに、政治やいち政治家・首長の意見を出さねばならない、しかも音楽”そのもの”には関係がないのに…これは正直苦しい。ただ、音楽、楽団(吹奏楽、オーケストラ、室内楽…大小プロアマ関係なく)、その活動と運営、コンサート・公演…もっと大きな視点で見ると「芸術文化」が政治や行政と全く関係のないものではない、と実感しています。社会というものの中に、「芸術文化」もある。だから、政治や行政とも繋がっているところがある。歴史的に見ても、音楽と政治が何らかの関係があったことも少なくない。音楽”そのもの”は、政治とは無関係だが、音楽が、「芸術文化」が存在するには政治と関係がある…。苦手だとか無関心だとか言っていられない。
 それでも、音楽”そのもの”、「芸術文化」”そのもの”は、政治や行政では語れない。経済とも語れない。売れてるか売れていないか=優れているかどうか、ではない。これは明示します。


○文化の空白地帯が生まれたら

 市音が存続の危機にある…と思っていたら、先日、他の楽団も存続の危機に立たされていることを知った。市音だけじゃない。崖っぷちではなくても、他の楽団も何らかの問題を抱えているところも少なくないだろう。その一方で、奮闘しているところもある。先日、「題名のない音楽会」で紹介された兵庫県立芸術文化センター。楽団ではないが、芸術文化施設ということで例に挙げます。ここはただのホール、施設ではなく、地域の人々と施設のスタッフが話し合う機会を持ち、「地域の中で生きている」施設。オペラ上演の前夜祭として地域でお祭りを開催したり、地域の人々も施設に関心を持っている。一方で、やはり堅苦しいイメージのあるクラシック音楽に触れてもらいたいけれど、ここは譲れないというところを施設のスタッフも持っていて、地域に働きかけている。施設と地域が一緒になって、時には切磋琢磨して盛り上げている。とてもいいなと思った。
◇詳しくはこちら:題名のない音楽会:キャンディーちゃんの題名日記:街が誇りに思う劇場

 さて、市音や他の存続の危機にある楽団に話を戻して、私が思うのは、優れた芸術文化施設や楽団がある地域・街から、それらが無くなったら、そこは「文化の空白地帯」になる、ということ。

 市音が廃止されるという報道があって、市音の存在を初めて知った、という人も少なくないようだ。市音は、大阪市が運営している。それを、大阪市に住んでいるわけではない自分が語るのは意味がない、大阪市民の意見ではないと思う方もいると思う。私自身、市音をどこまで語っていいのか、と思うこともある。だが、大阪市だけの問題ではないと思う。市音は、東京佼成ウィンドオーケストラ、シエナ・ウィンド・オーケストラと「日本三大吹奏楽団」と呼ばれている。吹奏楽コンクールの課題曲の演奏録音で、全国の吹奏楽部員の学生さんたちの”憧れの音”でもある。春の選抜高校野球の開会式・入場行進の演奏録音もしているなど、その活動は大阪市にとどまらない。

 もし市音が無くなったら、そこから吹奏楽の、音楽の文化が消える。空白地帯になる。ただ、その空白はそこだけではなく、全国へ広がってゆく。他の楽団があるじゃないか、いや、楽団それぞれの個性がある。音楽・演奏はどれも同じ、ではない。同じ曲でも指揮者・楽団によって解釈や表現が異なり、得意とするジャンルも異なる。その個性がひとつ、消える。
 空白地帯の影響は更に、文化の無い、枯渇した状態が続くだろう。市音は上記の全国的な活動よりも、大阪市に向けたワンコインコンサートや、市の式典、学校での演奏など地域に密着している部分も大きい。それが無くなった影響は、後から少しずつ出てくると思う。日本で一番古いという歴史もあり、全国で三本の指に入るレベルの楽団が与えてきた影響は、意識はしていなくてもどこかに根付いていると思う。音楽が好きな、音楽を志す学生の目標がひとつ消える。意識して聴いていなくても、どこかで聴いた経験、存在感があったと思う。どこかで大阪市の文化を支えていると思う。先述したとおり、大阪市だけでなく、全国の吹奏楽という文化を。

 私の住んでいる地域には、プロのオーケストラや吹奏楽団は無い。プロのオケ・演奏家が来てのコンサートも、少ない。プロオケが来ない年も増えた。アマチュアオケ・吹奏楽団はある。地域にある楽団だから、と聴きに行くことも少なくない。アマチュアながら奮闘している。でも、正直なところ、プロのオケ・吹奏楽団を地元で聴きたいと思う。交通機関は発達したので、「遠征」しやすくはなっているとは思う。だが、様々な事情で「遠征」できないことも多い。子ども連れや、病気や障害を持っている、仕事の関係など。
 そんな時、地元にプロのオケ・楽団があるのはいいなぁと思う。身近なところでプロの、日本屈指の演奏に親しめる。文化が身近にあることがいいなと思う。理想である。廃止するかどうか論議しているものがある…それすら羨ましいと思ってしまう。こちらは、廃止するものすらないのだから。施設もただのハコでしかない。

 「空白域」にいる側から大阪市・市音を見ていると、そんなことを思う。存続問題を抱え、消えるオケや楽団が増えれば、空白域が増える。どんどん増えて、日本の音楽の文化は知らない間に薄くなってしまうだろう。



○「市音」を守りたいのか、それとも…

 さて、その市音を守ろうと、宮川彬良さんと楽団員の有志で「Go!Go!市音! 大阪市音をほめる会」という特別コンサートを開催。更に同志の支援者たちも集まって、「Go!Go!市音の会」として存続支援運動をしている。最近では、大阪だけでなく、東京でも支部を結成する模様で、大阪以外からも働きかけてゆくのはいいなと思っています。
◇公式:GO!GO!市音!大阪市音をほめる会
◇twitter:GO!GO!市音の会 @gogoshion
◇東京支部twitter:GO!GO!市音の会 東京支部 @gogoshiontokyo

 この有志による活動を見ていて、思うことがある。中心にいるのが宮川彬良さんなので、「大阪市音楽団」を応援支援すると言うよりも、「宮川彬良&大阪市音楽Dahhhhhn!」を応援しているように見える。市音が彬良さんと組むと「音楽Dahhhhhn!」として、いつもの吹奏楽とは違った雰囲気になる。彬良さんの強い個性が前面に押し出された形となる。実際、コンサートに行ってみて、他のコンサートとは違うとはっきりと感じた。本当に面白い。軽快でユーモアたっぷりの音楽を読み解くトークも、演奏も。また行きたい。
 しかし、いつもの「市音」は、吹奏楽のレパートリー…吹奏楽曲や、クラシックの吹奏楽アレンジ、ポップスやジャズの演奏。以前、NHKBSプレミアムで市音定期演奏会の様子が放送されていたのを観たが、「音楽Dahhhhhn!」とは異なる、「吹奏楽」のイメージの演奏会だった。

 市音東京公演に行った後、地元のアマチュア吹奏楽団、学生の吹奏楽部の演奏会に行ってみている。そこで思うのは、「吹奏楽」というジャンルがある、ということだ。オーケストラや室内楽、器楽ソロのクラシック音楽のコンサートとは違う。クラシック音楽作品の編曲ものはあっても、オケのものと違う。楽器の編成だけではない。コンサートの構成が違うからか。(クラシックは休憩を挟んで前半に短めの曲と協奏曲・後半は交響曲など長めの曲。吹奏楽は3部構成で吹奏楽曲やクラシックの編曲もの、ポップス、ジャズなど。ゲストプレイヤーを呼んで演奏することも多い。クラシックのコンサートと同じような時もある)そして、吹奏楽オリジナルの楽曲は、独特だと感じている。近・現代の曲が多く、吹奏楽部に親しんだことが無い、慣れないうちは知らない曲ばかり。聴いてみて、いいなと思う曲もあるし、管弦楽とは違う、管楽器と打楽器のみの独特の響きも面白い。ただ、慣れないと、作曲家も知らない人ばかり、音楽もクラシックのようなものかと思っていると全然違うところがある。(吹奏楽をやってきた方々にとっては失礼な発言かもしれません。すみません。)

 今後、市音は一般財団法人への運営移管も考えている。「Go!Go!市音の会」などでの活動が、移管しても人々を惹き付けることに繋がって欲しいと思う。市音を存続・運営し続けてゆくために。でも、「Go!Go!市音の会」がすすめていることが、「音楽Dahhhhhn!」の面ばかりで、いつもの「市音」とかけ離れてしまっているのではないか、と憂慮しているし、疑問にも思っている。存続させたいのが「大阪市音楽団」なら、いつもの「吹奏楽」の面も押し出していかないと、元吹奏楽部などで吹奏楽に親しんできた人で無いと、敷居が高い、門戸が狭いと感じてしまうのではないだろうか。音楽にジャンルなし、と彬良さんのコンサート活動等を観ていると強く思う。でも、市音を支えているのは彬良さんだけない。ここにもやもやしている。今後も、彬良さんと市音のコンビは続いて欲しい、演奏を聴きたいと思っている。でも、頼り過ぎているようにも感じている。問題発言…?いや、自分自身が彬良さんのファンだからこそ、まず私自身がうやむやにしないで、疑問点として提示したいと思って書きました。

 とは言っても、ここでも私は大阪市民ではない、東京支部もこれからできるけど東京・関東民でもない。そんな私がどう支援していったらいいのか…。
 ひとつ言いたいのは、市音を支援したい人は、大阪・関西だけでなく、東京・関東だけでなく、他の地域にもいるということ。
 (決起集会か、ちょっと羨ましい…と遠くから見ています。)

 非常に長くなりました。この記事は、批判ではなく、いち意見・疑問として書きました(批判に読めてしまったらすみません)。市音は2013(平成25)年度はこのままの活動を続けてゆけるそうですが、その後は自立しなければならない現状にあります。離れてはいますが、コンサートに行く機会も今後何回あるかわからない、保証できないのが悔しいのですが、応援はしている。時には意見も言うかも。そんな立場でいたいと思います。

 以上です。大晦日、年の瀬にこんな長文…。失礼しました。
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by halca-kaukana057 | 2012-12-31 22:35 | 音楽


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