表情の奥の多面的な、絡み合った感情 「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」

 今シーズンの青森県立美術館が、私の興味関心嗜好のストライクゾーンど真ん中ばかりで大変です(嬉しい悲鳴w
 昨年4月~6月の「フィンランドのくらしとデザイン」展、7月~9月の「Art and Air 空と飛行機をめぐる、芸術と科学の物語」展。どちらも魅了されました。素晴らしかった。


 そして現在開催中なのが、人気アーティストの奈良美智さん(弘前市出身、地元開催です)の個展「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」。元々青森県立美術館には、郷土の芸術家として、奈良さんの作品が展示されています。青森県美のマスコット的存在ともなっている「あおもり犬」や、数々の絵・イラスト。これまで奈良さんの作品を観てきて、可愛いな、ポップだなと思ってきたのですが、奈良さんの作品の魅力はそれだけなのか?「あおもり犬」の瞑想しているような、どこかかなしげな表情。可愛い女の子の絵も、目つきが鋭く怖い印象もあったり、やはりかなしげなところもある。そして今回の「君や僕にちょっと似ている」というタイトル。とにかく、よくわからないから、奈良さんの作品をもっと観てみたい。そんなことを思いながら、行って来ました。

青森県立美術館:奈良美智:君や僕にちょっと似ている
◇展覧会公式:奈良美智:君や僕にちょっと似ている
↑横浜の後青森に。1月26日~4月までは熊本へ行きます。

 行ったのは12月末。青森は雪の中でした。
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 いつもの真っ白な美術館の建物は、真っ白な雪の中。そしてこの日は吹雪いていて、とても寒かった(気温マイナス5度)。

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 美術館に入る前、強い風が。美術館屋根の雪が吹き飛ばされて、吹雪のような状態に(屋根の雪が吹き飛ばされているのが確認できるでしょうか)。寒い、風強い!と思いつつも、この光景に惹かれて撮影。過酷な青森の冬。撮影していたのはいいが、手袋を外してカメラを持っていたので、手が凍りつきそうでした…(吹雪の中では手袋をしましょう。本当に凍るかと…手が冷たい、を通り越して血の気が引きそうだった。

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 入り口も真っ白です。

 中に入ると、暖房があたたかい。そして、こんな素敵なお出迎えが。
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 ツリーだ!クリスマスだから?と思ったらちょっと違うらしい。「もみのき」プロジェクトというのもので、奈良さんの作品の題材にもなっている樅の木ちなんだもの。撮影スポットともなっています。
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 ツリーには奈良さんの作品ぬいぐるみが。可愛いなぁと魅入ってしまいました。

 では、展覧会本編へ。

 中に入って、「あれ?」と思いました。絵や、奈良さんが初めて挑戦するブロンズ彫刻が展示されているのですが、ゆったりとした感じで配置されている。これまでの特別展は、作品がたくさん展示され、展示室にぎっしりという感じだった。それが、今回はひとつの展示室に大きな作品が2つ3つぐらい。小さめの鉛筆スケッチが10作品ぐらい固まって展示されているところもあるのですが、大きな作品となると、その展示室の壁一面に一作品、という感じ。ブロンズ像もぽつりぽつりと。今までと違う…。

 展示を見ながら、これはただの展示じゃない、展示室そのものも「作品としての空間」にしてしまっているのだと感じました。展示されている作品だけが作品なのではなくて、展示室全体が作品そのもの。作品の置き方で、展示室の空気も雰囲気も変わる。青森県美の展示室は外と同じ真っ白な空間あり、地下(実際地下にあるのですが)の暗く土壁のような空間ありと特徴的なのですが、その展示室の個性と奈良さんの作品が調和している。作品だけじゃない、展示室の特徴も活かして展示室全体を作品にしてしまうなんて…凄い。まずここで驚きました。

 そして、次に驚いたのが大型の絵画。奈良さんの描く女の子は、これまで可愛くてポップで、でも目つきが鋭くてちょっと怖い…そんな印象があったのですが、今回の女の子の絵は、これまでと違った。やわらかく暖かな色調、グラデーション。目つきは鋭いのですが、その瞳の色やグラデーション、輝きが鮮やか。これまでの女の子の目は、こんな目をしていなかった。鋭いけれどもあたたかみがある。やわらかいけれども、まっすぐ何かを見つめている真剣な表情。ポスターにもなっている「春少女」をはじめとして、「Cosmic Eyes(未完)」では、瞳に文字が描かれている。

 一方で、目を閉じている女の子の作品も多い。ブロンズ像や、「In the Milky Lake/Thinking One」.目を閉じて、うつむいて何かを考えているように見える。かなしんでいるようにも見える。何を考えているのだろう?何がかなしいのだろう?

 そんな風に作品を観ていて、自分もこんな表情をしていることはないだろうか、と考えた。顔の表情はひとつでも見方によっては、何を考えているのか、何を訴えようとしているのか、何を見つめているのか、違った見方が出来る。そしてその表情の奥、心の中にはさまざまな想いがある。笑っているけどかなしそうでもある、可愛いけれども攻撃性を持っている、強い想いを訴えてくるものもある。自分もそんなことがあるな、と。

 奈良さんはこの個展で、作った作品が奈良さんご自身の肖像画だけではなく、観た人が自分自身や家族や友人知人に似ている、その人自身だと感じることもある、とメッセージに書いている(展覧会公式サイトの「作家からのメッセージ」を参照ください)。だから、「君」や「僕」に「ちょっと似ている」。私も、作品を観ていて自分に似ているような、誰かに似ているような、そんなことを感じた。顔が似ているということではなく、表情の奥にあるであろう感情に。複雑に絡み合っていて、ひとつじゃない。様々な見方もできる。嬉しい・楽しいけど、かなしい、さみしい。穏やかだけど、鋭い。好きだけど、攻撃したい。瞑想している、祈っているけれども、疲れている、眠たい。これは、私の中にもある絡み合った感情だ。

 そして大型の作品だけでなく、ささっと描いたスケッチのような鉛筆描きの作品にこそ、本音が表現されていると感じました。言葉が書いてあるからというのもあるけど、鉛筆で描く作品には、その時の感情が表現されやすいと自分でも描いていて思います。私のはただの落描きですが…。封筒の裏に描かれたものもあって、驚きました。

 勿論、これまでのようなポップで可愛い作品もあります。ひとりの人間が表現する面は多彩。その人自身なのだなと感じました。

 特別展展示室を抜けて、いつものアレコホールへ。アレコホールにも、奈良さんの作品が。じゅうたんのようなもの?「触らないでください」などの注意書きが無かったので、あれは触れた、座ってもよかったのかな?アレコ背景画を観ながら椅子に座ってひと休みした後、常設展へ。今回は常設展も、特別展のチケットで入れます。

 常設展の奈良さんの作品コーナーも少し変えてありました。そして「あおもり犬」は人気もの。写真撮影可なので、カメラを向けて記念撮影する人多し。
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 私も。雪が降り始めると、あおもり犬の頭にも雪が降り積もり、帽子のようになります。この帽子はニット帽みたい。更に積もれば、ベレー帽やシルクハットのようになります。その時、積雪の状態によって異なる。冬の見どころです。

 奈良さんの作品だけではありません。「ウルトラマン」の怪獣デザインの成田亨。版画の棟方志功。棟方志功の作品はとても好きで、いつも魅入ります。「花矢の柵」のスケールの大きさと迫力、色遣い…大好きです。そして、作品ではないのですが、棟方志功の写真も見どころ。板に顔を近づけるだけ近づけて、一心不乱で彫り続ける姿と打って変わって、カメラに向かって笑顔の志功の写真。その笑顔がとてもにこやか。こちらも笑顔になります。

 青森県美で知った芸術家も多いのですが、そのひとりが写真家・小島一郎。1950年代(昭和30年代)、青森の四季、特に冬・雪景色を撮影し続けました。地吹雪の激しさ、厳しい冬と、その中で生きる人々。美術館に入る前遭遇した強風と吹雪を思い出します。凍りつくように寒く、冷たく、荒々しく、厳しい。でも、そんな中に美しさを感じてしまう。私も雪の多い地域に住んで、冬の厳しさを実感していますが、それと同時に美しさも感じている。真っ白な雪、凍りつくような澄んだ空気、雪が舞う空の雲の切れ間の青空。吹雪の中にいても、その寒さが愛おしいと思うこともあります。と言っても半分は、寒いから、風が強くて息をするのも大変だから早く治まってくれ、早く建物の中に入りたいとも思っていますが…。小島一郎の写真を観ていると、そんな厳しさの中の美しさ、愛おしさを思い出します。

 展示を観終わって、ミュージアムショップでお土産を物色後、外へ。
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吹雪はやんで、ほのかな夕暮れ色に。
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夕暮れ時、そして夜になると、表情が変わるこの建物。やっぱりこの建築が大好きです。建物そのものも美術作品!
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by halca-kaukana057 | 2013-01-10 23:51 | 興味を持ったものいろいろ


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