ヴィンランド・サガ 12

 昨年読んだ本の感想がまだまだあるんだ。今日は「ヴィンランド・サガ」12巻。


ヴィンランド・サガ 12
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2012

 1018年10月、ケティル農場では平穏な日々が続いていた。エイナルもアルネイズも懸命に働いていた。トルフィンはその仕事の合間に、用心棒の”蛇”が大旦那・スヴェルケルに聖書を読んでいるのを盗み聞きしていた。そんな中、農場敷地の中を馬で走る一人の男が。少し前に逃亡した奴隷で、”蛇”の手下のひとりを殺し逃げている途中だという。その奴隷の顔を見たアルネイズは、「ガルザル!」と叫ぶ。その奴隷もアルネイズに反応。なんと、2人は夫婦だった…。2人で故郷に帰ろうと言うガルザル。しかし、2人とも奴隷の身。しかも、ガルザルは人を殺し逃亡中である。ガルザルを捕らえようとする”蛇”。アルネイズの幸せのためにも、逃がしてあげたいエイナル。でも、”蛇”たち”客人”はエイナルが敵う相手ではなく、それ以前に人を殺せるのかと止めるトルフィン。落ち着いたところで、トルフィンとエイナルは、アルネイズからカルザルとのこと、何故別れて2人とも奴隷になってしまったのかを話し始める。


 11巻は、農場の主のケティルがクヌートと従士のトールギル(ケティルの長男)に会い、クヌートがケティル農場を狙うところで終わったのですが、その続きは12巻ではお休み(気になる…!)。12巻は、そのケティルが農場を留守にしている間、逃亡した奴隷のガルザルとアルネイズの再会がメインです。11巻で少し出てきたガルザル。11巻のおまけマンガで予告があったのですが、その通りでした。しかし、まさかアルネイズさんと夫婦だったとは…!!

 ガルザルと共に逃げたいが、とある事情で(ネタバレ防止)で波風を立てたくない、とその想いを抑えようとするアルネイズさん。でも、心は揺れ動く。一方のガルザルは何をしてでもアルネイズと共に逃げ、また家族で穏やかに暮らしたい。そのためなら、手段は選ばない…。そんなガルザルの想い、そして離れている間に起こったことを思い出し、詫びるアルネイズ。ガルザルの想いは止まらず、”嵐”は加速して大きくなってゆく。

 そんな2人を見て、トルフィンとエイナルが、再び”理想の世の中”について語り合う。戦争と奴隷を無くすことは出来るのか?戦うことを好み、手段はどうあれそこでの勝利を誇りとするノルド人。そして略奪してでも得た富も、ノルド人にとっての誇り。それが当たり前。トルフィンも以前はそうしてきた。しかし、父・トールズの仇だと見なしてきたアシェラッドが死に、ケティル農場で奴隷として働くうちに、戦士であるノルド人とは違う考え方をするようになった。戦って人を殺すことが、本当の戦士ではない。父・トールズ、そしてアシェラッドが言っていた”本当の戦士”を模索するトルフィン。戦って人を殺すことを否定すれば、ノルド人としては”仲間はずれ”にされてしまう。…もしかして、トールズがノルウェーやデンマークから離れたアイスランドで暮らしていたのは、戦いを否定し、自ら望んで「仲間外れ」になったから、なのだろう。
(最初から読み直さねばならぬな。)
 この部分に関しては、巻末の幸村先生のあとがきコラム(?)にも書かれています。幸村先生が何を描きたいのか。11世紀ノルド人の民衆の暮らし、少数派の歴史、知りたいものです。

 戦いを否定するノルド人だけじゃない。この世界には、その社会・コミュニティの「当たり前」に疑問を抱いたり、何らかの理由でドロップアウトしてしまい(させられてしまい)、「仲間外れ」になってしまうことが少なくない。いじめもそのひとつと言えるだろう。「仲間外れ」=その社会・コミュニティでの存在を否定されること。でも、その社会・コミュニティの外でなら、「仲間外れ」にはならないはず。「ここではないどこかへ」と逃げるのも、生きるために必要なことがある。大切なのは、自分が生きること、だから。

 そんな殺し合いの連鎖から抜け出し、”仲間はずれ”が平和に暮らせる世界を作りたい…。トルフィンの考えがだんだん具体化してきました。そして思い出したレイフのおっちゃんが話していたあの場所…。レイフのおっちゃん、11巻でケティル農場に行こうとしていた。トルフィンとの再会、実現してください…!

 アルネイズとガルザルの”嵐”はどんどん大きくなってゆく。トルフィンとエイナルも協力することに。”蛇”さんとトルフィンの対決シーンが凄い。”蛇”さんもかつてはトルフィンのようなヴァイキングの戦士だったのだろうか。トルフィンも戦いたくないとはいえ、その動きが鈍っていないのが凄い。そしてガルザルとアルネイズの2人の最後が…。アルネイズさんはこの後どうなってしまうのだろう。

 さて、13巻は話を元に戻してケティルが農場に戻ってくる。クヌート、そしてレイフのおっちゃんとトルフィンが再会するかどうか。気になる…!

・前巻:ヴィンランド・サガ 11
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by halca-kaukana057 | 2013-01-16 23:05 | 本・読書


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