「存在そのものが音楽」とは わたしの好きな「クインテット」2

 最終回まであと4日。「クインテット」を語ります。今日のテーマは、「喋らないアキラさん」。
・前回第1回:「クインテット」という器 わたしの好きな「クインテット」1

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 「クインテット」の放送が10年前始まって、観て、色々と「あれ?」と思ったのですが、一番の疑問・謎が、「何故アキラさんは喋らないのか」。
 アキラさん・宮川彬良さんのことは、「クインテット」を観る前は存じ上げず、始まった時も「この人は誰?」と謎の存在でした。その後、調べて、ミュージカルや演劇、ショーなど舞台メインで活躍されている音楽家(作曲・編曲・指揮・ピアノ演奏…幅が広い!)だと知った。でも、普段のアキラさんがどんな音楽家なのか分かっても、「クインテット」では、喋らずピアノを弾いて、ジェスチャーでリアクションをする。コーラスで歌うことや、コンサートで「ワン、ツー!」と演奏の息を合わせるカウントをすることもあるけど、言葉は発しない。メンバーと会話をすることは無い。会話にあわせて、ピアノをさらりと弾く。会話をしているように。その様はとても素敵で惹かれるのですが、喋らない謎の存在であることには変わりはありませんでした。
(このカウント声は、2009年度以降の放送では消えてしまいました…このカウント声を聞くと「来るぞ!」と聴く側も気合が入るのに)

 アキラさんが何故喋らないのか。真相が判明したのは、2004年、1stCD「クラシックス」のライナーノート。こう書かれている。
「アキラさんはどうしてしゃべんないの?」
こんな質問をよく受ける。
そんな時アキラさんは心の中でこう答えている。
『アキラさんはね、人間じゃないんだ、<音楽>そのものなんだョ』

 更にその後、ラジオ(NHKではなく民放!)や新聞・雑誌のインタビューでも、「アキラさんは音楽そのもの」と語っていた。だから喋らない。
 後に、昨年発売されたコンサートスコア集では、番組製作段階で「アキラさん」の設定・位置づけをどうするかで意見が噛み合わず、1年もかけて話し合い、ようやく出てきた「存在そのものが音楽」という設定案に「それだ!」と納得…という制作段階での裏話も披露されました。


 アキラさんは「存在そのものが音楽」。この設定を知った時、私は驚いたと同時に感激した。人間じゃない、音楽の化身?哲学的だなぁ。なんて斬新、そんな話は今まで聞いたことがない。でも、実際「クインテット」のアキラさんを観ていると、「存在そのものが音楽」「音楽の化身」と納得してしまう。本当に、音楽そのもの…音楽と一体化したように、ピアノ(鍵盤ハーモニカやアコーディオン、チェレスタやオルガン等)を演奏している。活き活きと、語るように歌うように。静かな曲では穏やかに、激しい曲では頭もぶんぶん振り回して(ヘビメタのヘドバンw)。演奏している時の表情や、他のメンバーを見ている目線でも、曲を語り、歌っている。

 そんなアキラさんを見ていると、音楽の本質というか、原型というか、「音楽ってこういうものなんだよね」と感じる。音楽に接する時、その音楽と一体化する心地が、音楽のたのしみなんだ、と。「クインテット」は、歌は童謡・唱歌・民謡・歌曲、コンサートではクラシック音楽がメインだが、他のジャンル…ポップスやロック、ジャズやテクノミュージックなど全てのジャンルで。
 音楽を聴いている時も、カラオケから斉唱・合唱、鼻歌であれ歌う時も、演奏する時も、音楽にのっている時はたのしい。またはかなしい、辛い、苦しい気持ちでいても、音楽はそっと寄り添っていて、いつの間にか身や心をゆだねている。演奏の練習をしていて、なかなかうまく弾けない時も、集中して音楽にのめりこんでいる時も。アキラさんだけが「存在そのものが音楽」なのではない。音楽と一体化しているような心地になった時、心からその音楽をたのしんでいる時、誰でも「存在そのものが音楽」になれるのではないか、と。

 つまり、アキラさんだけでなく、アリアさんやスコアさん、フラットさんやシャープ君も、チーボーも「存在そのものが音楽」なんだと思う。「クインテット」はキャラクターが会話し語るよりも、歌う演奏するシーンの方が多い。コンサートでは当然のことですが会話はない。でも、演奏で会話している。ヴァイオリンに応えるチェロ。トランペットを支えるクラリネット。ピアノもメロディーで牽引し、伴奏でサポートして、「会話」に参加してくる。音楽を、音楽そのものでたのしんでいる。

 音楽を、音楽そのものでたのしむ。当たり前のようだけど、クラシック音楽は特に作曲家のことや様々な知識がないと楽しめない、堅苦しい、重い、長い…というイメージを持っている人もいるので、指揮者や演奏家たちは解説やトークを交えたりする。その解説で更に楽曲を楽しめればいいのだが、話のほうが長かったり、がっかりするような内容のトークだったりすると楽曲を楽しむ前に疲れてしまう。古語や外国語で書かれた童謡・唱歌・民謡・歌曲も、解説はありがたいけど、曲を聴く前からくどくどと説明するよりも、まずは歌そのもの、曲と歌詞をじっくり聴く。歌詞の言葉の音を聞く。意味は後から解説なり調べても遅くない。私はそう思う。

 音楽そのものを、音楽としてまずは聴く。クラシック音楽評論家の黒田恭一さんが仰っていたように、これはどんな音楽なのかなと「尋ねる耳」で聴く。そんな音楽に対する姿勢を、「クインテット」は問うているとも思うのです。

 話が本題から飛躍してしまいましたが、「存在そのものが音楽」という設定は、そこまで言葉無しに語っているように私は受け取りました。…深読みしすぎたか?
 「言葉無しに語る」…この記事も、必要最小限の言葉で語れればよかったのですが…。なんと難しいことか。

 一言で言えば、「存在そのものが音楽」というアキラさんの設定が、凄く好きです。「クインテット」でしか為しえなかった、「クインテット」だからこそ為しえたことだと思います。

 このシリーズ、後何回書けるかな?
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by halca-kaukana057 | 2013-03-26 23:32 | Eテレ・NHK教育テレビ


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