宇宙へ

 以前、新聞の広告欄に載っていて気になったので読んだ。

宇宙(そら)へ
福田和代/講談社/2012

 時は2028年、民間のスペースファースト社が国連の委託を受け、オーストラリア・パース沖に宇宙エレベーターを建設。その3年後の2031年、地上3万6000km・静止軌道上の宇宙ステーションと地上を結ぶ宇宙エレベーター・スペース・カーゴは有人での運用を開始。宇宙がどんどん身近になっていこうとしていた。その宇宙ステーションの”メンテナンスマン”として働く原田拓海は、JAXAやNASAの宇宙飛行士を目指していたが身長が高過ぎて応募条件を通らず、民間の”メンテナンスマン”の道を選んだ。拓海と共に宇宙を目指してきた幼馴染の篠原真人は、管制官。いつでも冷静沈着でクールなところから”アイスマン”というあだ名がついている。個性的な”メンテナンスマン”たちは、宇宙エレベーターの保守点検、エレベーターの複線化やステーションに一般人も滞在できるように日々宇宙で働いている。そこへ、様々な仕事や事件が起こる…。


 宇宙エレベーター・軌道エレベーターが題材の物語・SF小説。以前も、小川一水さんの「妙なる技の乙女たち」も軌道エレベーターが題材でした。が、こちらは、軌道エレベーターの先にある宇宙ステーションで働く人々、それを地上で支える人々の物語。

 読んでいて、2000年代のリアルな宇宙開発SFもの先駆けである漫画「プラネテス」(幸村誠)に雰囲気が似ているなと感じました。こちらは軌道エレベーターと宇宙ステーション、後者はスペースデブリ回収、年代も異なりますが、民間の会社で、宇宙で働く人々の物語、リアルな宇宙開発SFものという共通点。ちょっとネタバレになりますが、「プラネテス」と同じように、スペースデブリやテロリストの話も出てきます。登場人物たちの性格や雰囲気も似ているところがある。「プラネテス」は宇宙で働くだけでなく、その後木星探査や物語の根幹となるテーマが出てくるので、また異なるところはありますが…。漫画原作よりもアニメ版の「プラネテス」に近いかな。…と他の作品と似ている、比べても仕方ない。

 軌道エレベーターの設計や仕組みは、作品で少し異なってくる。なので、この作品での軌道エレベーターの仕組みについて理解するのに時間がかかりました。が、仕組みを理解する前に物語はさくさく読めます。登場人物が皆個性的。背が高過ぎて宇宙飛行士になれず(宇宙船や船外活動用の宇宙服のサイズが問題になるので、身長制限はあります)、民間企業で”メンテナンスマン”として宇宙で働くことを選んだ拓海。背が高過ぎる、顔がいかつくて怖いので、女の子にもてない。一方、管制官の真人はいつもクールで、身だしなみもビシッと決めている。女の子にもてる。メンテナンスマンのメグは、何故かいつも帽子をかぶっていて、お金にうるさい。海兵隊出身のベンジャミンや、元宇宙飛行士のクリスもメンテナンスマン。仕事は大変そうなのですが、彼らの個性で楽しく読めます。

 ステーションや、エレベーターのカーゴの中、地上で様々な事件が起こる。その事件に対して、知恵を絞り、全力で立ち向かう拓海たち。思えば、今も、これまでも、宇宙飛行士や管制官たちは、様々なトラブルに対してアイディアを出し合い、その場にあるものを使って知恵を絞り、全力で対処してきた。アポロ13号のような乗組員の生死がかかっているものから、現在のISSで起こっている大小様々なトラブルまで。軌道エレベーターが出来ても、地上から3万6000kmの静止軌道上までは1週間ぐらいかかる。何かあったら地上からすぐに必要なものを送る…のは軌道エレベーターが出来てからも難しい。沢山の人々の、毎日の任務や努力、知恵で、宇宙での仕事・暮らしは支えられている、未来でもそうなんだと感じる。

 この作品では、カーゴに載せられる大きさの衛星なら軌道エレベーターを使って宇宙に放出、軌道に載せたり、回収したりも出来るような仕組みになっている。人工衛星や宇宙船はロケットで打ち上げるもの…という現在の概念が、軌道エレベーターの登場で変わってしまった、と。これはとても面白いなと思う(実現可能かどうか別として)。人やものを載せるだけでなく、衛星を放出したり、回収もできる。以前、ISSの「きぼう」から超小型衛星を放出する実験が行われましたが、衛星を宇宙にあげる方法はロケットだけじゃない。これは凄いなと思った。

 あと、先述した「妙なる~」の感想でも書きましたが、私は絶叫マシーンが大の苦手なので、ロケットの加重力(G)に耐えられるか自信がない。いくら宇宙に行けるといっても、大きなGは怖い…。なので、やっぱり軌道エレベーターが出来て欲しいと思います。

・関連記事:妙なる技の乙女たち
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by halca-kaukana057 | 2013-04-15 23:02 | 本・読書


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