天にひびき 7

 3月、読んでいる漫画の単行本が次々と出ました。嬉しい悲鳴?まずは「天にひびき」7巻。


天にひびき 7
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2013

 ヴァイオリンのコンクールに出場することになった秋央、深香、南条の3人。一次予選を通過し、予選を前に練習に励む秋央。如月先生も指導し見守る。目指すは南条共々上位入賞。しかし、予選。非常に巧い学生が2人。技巧も表現も卓越した彼らの演奏に圧倒されてしまう。それでも、力を出し予選通過。そして本選へ向けて更に練習を積み、当日を迎える…。


 6巻の後半のヴァイオリンコンクールもいよいよ本番。秋央もですが、深香、そして南条君の成長が伺えます。コンクールに対するひびきの考えにも頷く。音楽に順列をつけること、皆一生懸命演奏しているのに失敗の数だけ数えられる雰囲気…。ところが、読んでいくとこのひびきがコンクールに対して抱いている思いが、また違ったものに変わっていきます。

 コンクールという場で、ひとつの音大の中だけではわからないことが見えてくる。如月先生や南条君が感じた、普段は気がつかなかった秋央の演奏の芯、成長。多くの人を前にして舞台の上で演奏する緊張感、どれだけ集中できるか。練習で積み重ねた、楽譜に書かれた作曲家の意図を読み込み、演奏して表現する。
「楽譜という地図を頼りに 曲という路を探り探り 歩いてゆく 正確に 丁寧に」
(88ページ)

 本番までの過程、本番での緊張感と集中力。その中でも音楽を楽しもうという気持ち。漫画だから、秋央たちがどんな演奏をしているかはわからない。でも、演奏に集中して、楽しんでいる表情や姿勢から、音楽が聞こえてくるよう。

 一方の南条君。秋央もよかったが、課題を見つけた南条君に個人的に注目して読みました。性格も演奏も堅実で真面目な南条君。予選の後、飛びぬけて巧かった2人の学生と自分自身との間に引いた「線」、いつの間にか作ってしまっている自分の「枠」。この中に収まってしまっていることを如月先生に指摘されるシーンが、後々南条君に大きな影響を及ぼしてゆく。

 音楽・演奏でも、他のことでも、「自分」という「枠」を作り、他者との間に「線」を「引く」。あの人はこうだけど、自分は違うから…と割り切ってしまうことはよくある。個性の強い人や、技術や実力、才能を持っている人に出会うと余計にそんなことをしてしまう。あの人は別格なんだと最初から諦めて、「自分」を守りたい、という気持ちだからだろうか。迷う南条君に、「これは自分か?」と思ってしまった。
 でも、打ち負かしてやろうという気持ちを持て、自分の枠以上のものを求めているとその内に自分の枠が拡がっていることもある、という如月先生の言葉・励ましもその通り。南条君の演奏を聴いた梶原の言葉も。
自分の枠を守るというのと自分を信じるというのは一見似ている気もしますけど
全然 違うことなんですねェ
(67ページ)

 「自分を信じる」とは、「枠」を拡げてゆく、超えてゆくことも出来るだろう「自分」も「信じる」ことなんだなぁ。コンクール後の南条君の表情に、今後更に応援したいなと感じました。
 ちなみに、この7巻で南条君の名前が判明。「顕治」君です。そして、2巻8話の鍋パーティーや、4巻12話で風邪を引いた秋央のお見舞いに料理を作ったり(持って行ったは深香さん)と、料理上手な南条君。鍋パーティーのシーンで両親が共働きのため弟・妹のご飯を作っていると語っていましたが、その頼れるお兄さんな南条君の一面も。その後、練習や勉強。真面目です。けなげです。4巻で南条君の株が上がったのですが、また上がりました。がんばれ南条君!


 後半は、演奏家の様々な面が更に見えてきます。病院で慰問演奏をして、コンクールとはまた異なる人前での演奏を経験した秋央と深香の2人。演奏を喜んで聴いている人がいる(しかも演奏料をもらえる)。これも音大内ではわからないこと。演奏家としてプロになってゆくことを実感した2人に、こちらも応援したくなる。既にプロである美月は慣れっこですねw

 一方、以前は名門オケに所属していたが、年老いてソロで小ぢんまりとした演奏を続けている清水。彼の演奏を聴いたひびき。高齢でも精力的に活躍している音楽家も多いですが、身体・器官の衰えにより思い通りの演奏が出来なくなってしまうことも。3・4巻の榊先生も病気で腕が思うように動かせなくなってしまっていましたが、清水さんも耳が衰えて苦しんでいる。身体・器官の病や衰えと、演奏すること。これを両立させるのは難しい…が、榊先生の時に続き、ひびきがまたやってくれました。

 というひびきも、まだまだもがきながら発展途上中。なかなかオケを指揮する機会は無く、やっとめぐってきたチャンスでも思い通りにいかない。指揮者にとってオケは自分の楽器だけど、所有物ではない。オーケストラが演奏するところでしか存在できない。しかも、どの演奏家よりも音楽に精通し、フルスコアを読み込まなければならない…。南条君と深香さんが言っていた通り、儚い存在でもあるし、難しい。

 天才なようで、苦しむことも多いひびき。ひびきにもエールを送りたい。コンクールの本選前、ひびきが秋央・深香・南条君にしてあげた”おまじない”のように。あれは、ひびきじゃないとできないよなぁw

 この7巻で出てきた曲ですが、ラヴェルの「ツィガーヌ」を聴いてみています。あと、ブラームスのヴァイオリン協奏曲もしっかり聴き直したい。40話ではシューマンの交響曲第3番「ライン」が出てきた。おおう!大好きです。

 そして吉松隆先生の音楽コラム。ヴァイオリンに関することがメインです。各話と連動していて、豆知識になります。

・6巻感想:天にひびき 6

・関連しているので4巻感想:天にひびき 4
[PR]
by halca-kaukana057 | 2013-04-27 23:39 | 本・読書


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

お知らせ・別サイト

管理人HN:(はるか)
 熱しやすく冷めにくい、何が好きになるかわからない好奇心のかたまり。このブログでは好きなものを、好き放題に語ってます。

プロフィール
*2014.9.5:更新
はてなプロフィール:遼(halca-kaukana)



web拍手を送る






日々のログ:今、ここ、想うこと
または:Twilog

はてなブックマーク
Mielenkiintoinen!

気になること、関心のある記事や参考にしたサイトなどのブックマーク集。コメント多め。

◆ピアノ録音置きブログ:Satellite HALCA

☆「はやぶさ2」、小惑星リュウグウ目指して順調に飛行中!☆
管理人・遼も小惑星探査機「はやぶさ2」を応援しています。



あかつき特設サイト
JAXA:金星探査機「あかつき」特設サイト

☆祝!「あかつき」は金星の衛星になりました☆
金星軌道上で観測準備中!

最新の記事

「星の物語」切手 第5集 押..
at 2017-03-11 21:47
星の案内人 4 [完結]
at 2017-03-07 22:30
最後は南天 「星の物語」切手..
at 2017-03-04 22:44
2017:あけましておめでと..
at 2017-01-05 21:45
クリスマスの再会 クインテッ..
at 2016-12-24 21:50
【予告】「クインテット」のク..
at 2016-12-17 22:09
一緒に音楽を楽しもう Pro..
at 2016-12-17 16:43
指揮者特印! 冬のグリーティ..
at 2016-12-08 20:58
師走の一息のISS&月&金星観望
at 2016-12-03 21:53
冬のヒトコマの切手 冬のグリ..
at 2016-12-02 20:51

カテゴリ

はじめにお読みください
プロフィール
本・読書
宇宙・天文
音楽
奏でること・うたうこと
Eテレ・NHK教育テレビ
フィンランド・Suomi/北欧
イラスト・落描き
日常/考えたこと
興味を持ったものいろいろ
旅・お出かけ
information

タグ

以前の記事

2017年 03月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
more...

検索