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果しなき流れの果に

 2011年7月26日、ちょうど2年前。SF作家の小松左京氏が亡くなりました。小松先生の作品をそれまで読んだことが無かったので、読みたいと思っていたのですが、代表作「日本沈没」は震災後には重過ぎて読めず。それからしばらく経って、この本を手に取りました。ようやく小松作品を読みました…(遅い


果しなき流れの果に
小松左京/角川春樹事務所・ハルキ文庫/1997(単行本は早川書房、1966年)

 理論物理学の研究所で助手をしている野々村と、教授の大泉のもとに、大泉教授の友人の番匠谷(ばんしょうや)教授がやって来る。番匠谷教授が持ってきた”珍しいもの”を野々村にも見てもらうために。番匠谷教授が出したのは、少し変わった形をしている砂時計。しかし、よく見ると、砂は落ち続けているのに、上の砂溜めの砂は減らず、下の砂溜めの砂も増えない、永遠に砂の落ち続ける砂時計だった。しかも、番匠谷教授はこの砂時計を、中生代・白亜紀の地層から発掘したというのだ。砂時計の謎を探るべく、出土した現場へ向かう。その途中、野々村は不思議な青年に話しかけられる。「”クロニアム”はどうしました?」と。その青年は、発掘現場の古墳にも現れる。古墳の中を調べてみると、これも不思議な構造をしていた。それから、野々村たちは奇妙で不可解な出来事に次々と巻き込まれ続ける。大泉教授も番匠谷教授も、砂時計のことを知っている人々も、そして野々村も…。


 このあらすじの部分まで読んで、さてこの後どうなるのだろう?砂時計と、野々村たちの行方の謎を解く物語が始まるのだろう…と思いきや、物語は予想もしない方向に。第3章からの展開に「なんだこれは!」と驚くばかりでした。読んでも、しばらくは事態と展開がつかめず、よくわからないまま、でもどうなるのか楽しみで、どんどん読んでしまいました。

 宇宙を舞台に、壮大な時間と、時間の中で生きる人々のたたかい。宇宙の中では、人間の寿命なんてちっぽけなもの。でも、もしその宇宙の中で生き続けることの出来る”別次元の命”を手に入れたら?更に、今私たちがいる時間軸とは別の時間軸・次元をも行き来できるなら?一体この人は何とたたかっているのだろう、誰が敵で、誰が味方なのだろう?もう壮大過ぎて頭がパンクしそうですが、でも面白い。

 時空を飛びまわる壮大な舞台で、野々村の恋人である佐世子の存在に、ほっとします。佐世子は「今、ここ」にいる。最初の地点であり、還るべき地点であることを教えてくれる。佐世子の登場するラストが、切なくかなしくも、しあわせだと感じました。

 ページを開く度に頭がパンクしそうな状態が続いているので、何度でも読みたいです。

 ところで、この作品が書かれたのは、1965年(翌年単行本化)。そんな昔にこんな凄いSFがあったのか!とまた驚きました。まだ人類が月に立っていない時代。いや、ジュール・ヴェルヌやH・G・ウェルズ、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインラインは更に前の時代ですが…いや、まだ現実の科学・技術がSFに追いついていない時代だからこそ、自由に想像して書けるのかもしれない。でも、リアリティもある…。やっぱり凄いです。

 「日本沈没」はこの「果しなき~」の後の作品。「日本沈没」も、読める精神状態になったら読みます。
by halca-kaukana057 | 2013-07-26 22:18 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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