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ヴィンランド・サガ 13

 読んだ本、とりわけ漫画の感想が滞っております。今日こそ書く。

ヴィンランド・サガ 13
幸村誠/講談社・アフタヌーンKC/2013

 クヌート一行は、ケティルの農場を目指して航海中。フローキ率いるヨーム戦士団もともに。一方、一足先にケティルの農場に帰って来たケティル、トールギル、オルマル。そしてトルフィンを探してやってきたレイフ・エリクソン。トールギルは農場の奉公人たちを鼓舞し、戦の準備を始める。戦のことは客人の蛇たちにも知れ、客人たちもまた、彼らの考えで戦の準備をする。
 ガルザルとの逃亡しようとし、またその逃亡を助けようとして捕らえられたトルフィン、エイナル、アルネイズ。トルフィンは、逃亡のため蛇と闘ったことを思い出す。戦士をやめ、力をもって戦うことをやめたトルフィンは、蛇との闘いを悔やんでいた。闘わずに、人を傷つけ殺さないでいられる方法を探し求めていた。
 そしてクヌート一行が農場に到着。戦いが始まった…


 何故クヌートがケティル農場を狙うことになったのか…11巻を読み返しました。イングランドを支配したクヌート。支配下に置くために、デンマーク人部隊をイングランドに駐留させていたが、その維持費はイングランド人の税金から。イングランド人からは勿論不満が。新たな財源を捻出するため、デンマークの農場を接取。その第一の候補となってしまったのが、デンマークの豪農ケティル。しかも、オルマルやトールギルがクヌートに謁見した際、問題を起こして(利用され起こさせられた)、ますますターゲットに…。という経緯でした。

 ケティル農場での戦と、戦わなくても済む方法を考えるトルフィンの対比。12巻のアルネイズさんの逃亡未遂を知ったケティルのアルネイズに対する暴力とも対比されます。規模の大きな戦いのシーンが久々に描かれましたが、以前は壮絶だ…悲惨だ…読むのが辛い…と思っていたのですが、トルフィンの問いを思うと、とても虚しく見えてきます。勿論、戦いの描写は今回もとても緻密で、迫力満点で、グロテスクなほどリアル。それなのに、ケティル農場側も、クヌート側も、こんな戦いをしてどうなるの、と思ってしまう。戦いのきっかけが、財源捻出のための農場接取だからこそますます。

 そんなトルフィンの前に、レイフ・エリクソンさんが…ようやく再会できました!!よかった、よかった…。ケティルに暴力を振るわれ、瀕死のアルネイズさん。暮らしていた村が戦に巻き込まれ、子どもは死に、奴隷になり、夫のガルザルも再会できたと思ったら死んでしまった。アルネイズさんの最後の言葉がつらい。
なぜ……生きなければならないの?苦しいばかりなのに……(162ページより)

 現代でも、同じような言葉をよく耳にします。生きていても苦しい。働いても働いても、生活が豊かにならない。子どもを育てるのであればますます苦しい。仕事、人間関係、毎日の生活のあらゆる場面で板ばさみになっている。一方で、経済的にも文化的にも、あらゆる面で豊かな生活をしている人もいる。権力を思いのままにしている人もいる。そんな理想には届かない。心身疲れきり、もう生きる気力もない。

 クヌートが揮った力、権力。当時のノルド人にとっての力、強さ。そこからはみ出してしまった奴隷たち。最強の戦士と呼ばれた男を父に持ち、その父もノルド人にとっての力・強さから離れ、自分自身も戦士になったトルフィン。そしてトルフィンも奴隷となり、心もノルド人にとっての力・強さから離れた。死ぬしかないはみだした者も自由に暮らせる、戦もない世界へ…無いなら作りたい…。

 トルフィンのヴィンランドへの旅が始まります。最後のトルフィンとエイナルの決意がとても熱い。ますます楽しみです。

・11巻:ヴィンランド・サガ 11
・12巻:ヴィンランド・サガ 12
by halca-kaukana057 | 2013-10-26 23:19 | 本・読書

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)
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