「見える」とは何だ? ラジオミュージカル「あしたの瞳」前編

 9月に初演された、宮川彬良さんの初オペラ「あしたの瞳」(脚本:響敏也、演出:佐久間広一郎、演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団)。観に行きたかったのですが行けず…しかし、昨日3日、そして来週10日の2回に分けて、ラジオミュージカル版として放送、上演です。

メニコンスーパーコンサート2013:歌劇「あしたの瞳」
 3時間にもわたる歌劇だったそうです。

FM AICHI:ラジオミュージカル「あしたの瞳」
 ラジオミュージカル版は、演奏はセントラル愛知交響楽団。前編・後編に分けて、それぞれ55分の放送(CMも入るので実質50分ぐらい)。ラジオで聞き取りやすくするために、セリフの部分は変えてあるようです。歌の部分も多少変更があるようです。歌つきのラジオドラマ、ですね。
 昨日の放送を聞きそびれた、聞けなかった方も、リンク先でフルでアップされています。聞けますよ!

 あらすじは、メニコンの創業者・現会長で国産コンタクトレンズを開発した田中恭一氏をモデルとした、田宮常一の半生を通して、「見える」とは何かを問う…というお話。

※常一は田中恭一氏をモデルとした人物、というところが抜けていました。上記訂正しました。ノンフィクションのフィクションの物語。失礼いたしました…。
 たとえると、小惑星探査機「はやぶさ」とプロジェクトチームを描いた映画が3本も公開されましたが、その3作も登場人物は実在するプロジェクトチームや関わった人々をモデルとしたフィクションの人物、でしたね。
 史実・コンタクトレンズ開発の歴史、田中恭一氏のコンタクトレンズ開発の経緯は以下リンク先でどうぞ
(これって、ネタバレ…?w史実なんだから仕方ない…歴史ものの映画やドラマ・大河ドラマと同じだ)
NAVERまとめ:日本初のコンタクトレンズは深い愛情と意地で誕生
かねやんの起業かわら版:田中恭一
ナゴヤラジオ:田中恭一(全8回)
 ↑田中氏のインタビューを音声でどうぞ。物語に関係があるのは第1・2回の部分。その後も聴いてみたが面白い。
読売新聞:地域:愛知:メニコン会長 田中恭一さんと父
読売新聞:マネー・経済:企業ナビ:七転八起:レンズ開発 自ら実験台
 ↑読売新聞に2本も記事がありました。お父様の話も。この前編で触れられますね。開発物語はまさにこの作品のモデルです。

 話をもとに戻しまして、物語は、こんなナレーションで始まりました。長いですが、書き起こし引用します。(違っているところがあればご指摘ください)
人に何かが見えているとしたら、果たして何が見えているのだろうか
何をもって、人は見えると感じるのだろうか
見える、とは一体どういうことなのか
視覚的には見えているつもりでも、本質的には見えていないこともあれば
たった一瞬の視覚的記憶が生涯を通して目に焼きつき
人生を左右してしまうこともある
見るものは同じであっても、
見る人間によって、見る環境によって、その見方によって
それは様々に変化してしまう
ならば、人はたとえそれが歓喜の時であったとしても、苦渋の時であったとしても
その見方次第で違った光景を、自らにもたらすことになるだろう
そして、誰しもが持つもうひとつの未来が目覚めて開ける
これは、そんな見ることの真実を
ものづくりに情熱を捧げた、ある男の瞳からつむぎだす物語である


 もうこれだけで引き込まれました。心臓わしづかみにされました。このナレーションとともに流れる音楽も、聴いた瞬間、彬良さんの音楽だ…!とここでも一気にわしづかみ。
 物語の中でも、主人公・常一と、常一が眼にしてきたものの記憶「眼球の記憶」が、ともに常一が見てきたものを振り返る中で、同じものを見ているのに人それぞれ感じ方が違う、自分で自分の姿を見ることは出来ない。そんなことが語られます。
 この「眼球の記憶」(塚本伸彦)がいい役、いい立ち位置にいる。最初は常一とのやりとりでコミカルなところも出しつつ、「見ること」とは何か、と常一と聞いている側に問いかけてくる。

 また、「見える」「見えない」…このテーマは、宮川彬良さんの作品ではよく出てくる問いかけです。NHK教育(Eテレ)「クインテット」でも、ピアノと管弦楽のための作曲作品である「風のオリヴァストロ」(新日本フィルとのコンサートシリーズ「コンチェルタンテⅡ」のテーマ曲とも言える作品)でも、「見えないけれども、ある」ということが「音楽」で語られます。
・参考過去記事(「クインテット」の放送の感想):見えないけれど、ここにある 今週の「クインテット」

 この物語でも、常一の息子・友則のエピソード・歌で「見えないけど、ある」ものについて語られます。これは私にとってドツボでした。

 以前、偶然ツイッターでこんなツイートを見かけました。引用します。
音楽が入ってくるのは耳からだけど、音楽を聴いているのはどこだろう。
彩季 (@hazure_o) 2013.10.31


 耳と音楽も興味がありますが、この耳を目に、音楽をものに変えると…この物語の問いにもなります。
 ものを見る時は目で見ている。でも、目だけでは見ることは出来ない。神経を伝って脳へ送られ、見ているものが何かわかる。記憶する。目の前にあっても、気にしなければ記憶に残らない、「見ていなかった」ことになる。物語の中で、「眼球の記憶」を幻覚だと常一が思うシーンがありますが、幻覚も、実際には無いものでその人にしか見えていないものだけれども、見えているのだから、見えるものなのかもしれない。
 また、見方でも異なる。人間の目は皆同じ…ようで視力も、色覚も異なる。上記の「クインテット」感想でも書きましたが、人間が見えるのは可視光線。それ以外の波長…紫外線や赤外線、X線や電波で見えるように、機器を使えば、普通では見えないものも見えてくる。レントゲン画像や、様々な波長で撮影した天体画像のように。

 そんなことを思いながら、冒頭のナレーション、そして物語を聞いていくと、「見る」「見える」「見ている」こととは何なのか…考えはじめると止まりません。
 とはいえ、前編はまだ物語の始まり。常一がコンタクトレンズを開発するまでの経緯、見てきたもの、経験したこと、そして眼鏡職人をしているうちにコンタクトレンズの存在を知ったところまで。目に入れるレンズ・コンタクトレンズの存在を知ったけれども、実物を見せてもらえない。コンタクトレンズを見たい、でも見れない。見れないならば、作ればいい…。常一がコンタクトレンズに対する情熱を語り、歌うところで、胸が一杯になりました。この時、常一にはコンタクトレンズはどんなものか、見えていなかった。でも、そんなものがある。どんなものかわからないけど、つくりたい。つくって、実物を見たい。後半、どうなるのか楽しみです。

 見られない、見えないことが、逆に想像力をかきたてる。「見ること」がテーマの作品なのに、音でしか聴こえない、その様子を見ることは出来ないラジオというメディアで放送したのも、深いなと感じました。どんなシーンか、想像する。9月の歌劇を観た方はイメージがあると思うのですが、逆に観てなくても楽しめる、というのが凄い。やられました。聞きながら、頭の中では自分なりのイメージがどんどん展開されていました。聴きながらイメージしていくのが楽しい。アニメとか漫画にしても面白そう…なんて思ったり。

 個人的なツボとして、常一が「眼球の記憶」のことをなかなか認めようとせず、しまいには「目玉幽霊」と呼ぶところで吹きましたwアメリカ人の友人・シンディー女史もコミカルです。でも歌うとハイソプラノ。セリフではコミカルなところはあるのに、歌になるとのびのびと、ふくよかに歌う。このギャップも聴きどころです。
 あと、「眼球の記憶」が、「上の命令」と話していたのですが、上…誰のことだろう?脳?神様とか?これも後半で出てくるのかどうなのか。そして、最後には「眼球の記憶」はどうなってしまうんだろう…。

 後編は、10日(日曜)夜7時から。地域によっては、放送時間が異なりますので、上記公式サイトとお聞きの放送局のサイトでチェックしてくださいね。聞き逃しても、また後編もアップされると思います。後編の前に、何度も聴いてしまいそうです。聴いてまた気づいたことや深読みしたことがあれば、加筆(または別記事に)します。
 ちなみに私は、MDラジカセ、PC,携帯(スマートフォンのアプリ)の3メディアで録音しましたw全部ばっちりです。しかも、放送局によって放送時間が異なるので、ラジオアプリを使って一番早い放送を聞いていました。後編は、アップもされるのでそこまでしなくてもいいかな…。早く続きを聴きたいので、聴いてしまいそうな気もします…w

 最後に、放送局のオンエア曲リストで、歌の題名も明かされていたので、引用しておきますね。括弧内は役名です。
1.あの日の空を観ていた:安冨泰一郎(田宮常一)・安田旺司(坂本義三)
2.わしはお前だ:塚本伸彦(眼球の記憶)・コロス
3.音が見える:伊藤佑悟(田宮友則)
4.みるみる見える:コロス
5.焼け跡タンゴ:コロス
6.見えるぜ、俺たちゃ:コロス
7.旋盤ソング:コロス
8.ワザワザの技:安冨泰一郎(田宮常一)、安田旺司(坂本義三)、コロス
9.Hi! Joe!:松波千津子(シンディー・フェルダー)
10.眼に入れるレンズ:松波千津子(シンディー・フェルダー)
11.もうひとつの瞳:安冨泰一郎(田宮常一)、コロス

 「コロス」はオペラのコーラスのことです。オペラのことはあまりわからず、調べました。モーツァルトやヴェルディ、プッチーニなど、オペラも聴いていきたいなぁ…。

【まだ続きます…続きの記事】
・前編の気づいたこと、思ったことを箇条書きしてみた:ラジオ・ミュージカル「あしたの瞳」前編 覚え書き
・後編の覚え書き:ラジオ・ミュージカル「あしたの瞳」 後編 覚え書き
・全体感想:今の積み重ねの先に「見える」もの ラジオ・ミュージカル「あしたの瞳」全体感想


※2013.11.6:加筆修正しました。
2013.12.20:新聞記事関係資料、続編記事へのリンクを加筆しました
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by halca-kaukana057 | 2013-11-04 23:37 | 音楽


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