”主張”と”和”の生きている”音楽” 宮川彬良&アンサンブル・ベガ@岩手矢巾 全体感想

 これまで、覚え書きを前編(第1部メイン)と後編(第2部メイン)に分けて書いてきた、”宮川彬良&アンサンブル・ベガ”岩手・矢巾公演。では、全体感想を。
・覚え書き前編:宮川彬良&アンサンブル・ベガ @岩手矢巾 覚え書き・前編(第1部)
・覚え書き後編:宮川彬良&アンサンブル・ベガ @岩手矢巾 覚え書き・後編(第2部)

 その前に、覚え書きではざーっと書いてしまったプログラムを、ちゃんと書きます。

【プログラム】
○第1部
・F.デーレ/宮川彬良:すみれの花咲く部屋
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
・J.S.バッハ(ペツォールト):バッハのメヌエット(ラヴァーズ・コンチェルト)
・ルロイ・アンダソン:プリンク・プランク・プランク
・ルロイ・アンダソン:ワルツィング・キャット
・宮川彬良:パーセルの主題によるフーガ
 (”アン・ベガ名物「音符の国ツアー」~必ず良い大人になるための音楽入門!”)
・ジョン・レノン、ポール・マッカートニー/モーツァルト:抱きしめたい with MOZART

○第2部
・ロッシーニ:弦楽のためのソナタ 第1番ト長調
 (第1・第2ヴァイオリン、チェロ、コントラバス)
・ヴェルディ:女心の歌(歌劇「リゴレット」より)
・プッチーニ:私のお父さん(歌劇「ジャンニ・スキッキ」より)
・宮川彬良:室内楽のためのソナタ「ブラック・ジャック」

○アンコール
・宮川彬良:ゆうがたクインテット テーマ
・宮川彬良:サヨナラの星(作詞:ヒビキトシヤ)
・ジョン・レノン、ポール・マッカートニー:P.S. I Love You
(編曲:宮川彬良 ※ロッシーニ「弦楽のためのソナタ」を除く)

第1ヴァイオリン:辻井 淳、第2ヴァイオリン:藤村 正芳(客演)、ヴィオラ:馬渕 昌子、チェロ:近藤 浩志、コントラバス:新 眞二、クラリネット:鈴木 豊人、ファゴット:星野 則雄、ホルン:池田 重一
音楽監督・作編曲・ピアノ・司会:宮川 彬良
構成・脚本:響 敏也

********


 聴いていてまず思ったのが、意外と各パートがはっきりと、”主張”するように演奏していたことでした。皆でハーモニーを保って、きれいに合わせているだけではなかった。でも、「我が我が」という”主張”ではない。”個”を”主張”しつつも、楽曲とアンサンブル両方の”全体”の”和”が保たれている。これまで、オーケストラよりも器楽(ソロ、デュオ、トリオ、カルテット)を聴くことが多かったのだが、各々の楽器・パートがこんなに”主張”しつつも”和”のハーモニーになっていると思ったことはあまりなく、驚いた。それぞれの楽器・パートの特性・個性・音色と、メンバー各々の個性・性格。それらが絶妙につりあっていて、でもここぞと言う時に雄弁に”語る””歌う”。主旋律だけが目立っているわけでもなく、伴奏・内声・低音パートも主旋律を支えつつ、存在感を示ししっかりしている。メロディーをより際立たせるための、安定した土台。その土台にまわることの多い第2ヴァイオリンやヴィオラ、コントラバス、ファゴットにも、土台であっても主旋律を受け持つことがあっても「魅せ場」がある。室内楽としては大人数なアンベガ。彬良さんのピアノも入れると9人。大人数、楽器が多いからこそ、より鮮やかで陰影も深い演奏になるんだな、と思った。そのためには、やはり”個”の”主張”と”全体”の”和”をバランスよく保つことが大事なんだと。アンベガの個々の力量・表現と、チームワーク・一体感。後で詳しく書きますが、CDには収まりきれなかった音・雰囲気がありました。

 アンベガでの、彬良さんの存在も絶妙で、ちょっと不思議だと感じました。司会として、MCになると相変わらずのトークで目立つ。でも、演奏だとそんなに目立っているわけでもない。ピアノパートがない曲も少なくない。音楽監督・指揮ではある…のだけど…。アンベガとしてのリーダーはコントラバスの新さんだし、コンサートマスターは第1ヴァイオリンの辻井さん。”絶対的な頭”がいない?でも、演奏もコンサートそのものもまとまっている。室内楽としては人数多めなのに。8人各々が、それぞれのリーダーシップを発揮している?不思議な感じがしました。

 この”絶対的な頭”もいない?こともそうだし、他の点でも、アンベガには「”境界”がない」と感じるところが多々あります。宮川彬良さんの他のコンサート、音楽作品でもこれは感じていることなのですが、まず音楽のジャンル・分類という”境界”がない。クラシックのようだけど、ビートルズのようなポップス・ロックも演奏する。「ライト・クラシック」なんて言葉もあるけど、そんなやわい、甘いものでもない。
 そして、アンサンブル・ベガというアンサンブルも、室内楽に分類されるのだろうけど、オーケストラのような音色・迫力・深みがある。これも、室内楽・アンサンブル…?
 もはや分類できない。ただ、「音楽」である、「音楽」なんだ、これだけははっきりしている。コンサートの最初、彬良さんが「音楽家がニヤニヤして音楽をしているところを見て、聴いていって欲しい」と仰ってましたが、まさにその通りです。

 そして、もうひとつの「”境界”がない」と感じたところは、ステージと客席の間の「”境界”がない」。どういうことかというと、身近で親しみやすい。コンサートの規模や、響さんの構成・脚本(特に「音符の国ツアー」)、彬良さんのMCで、親しみやすくなっている。でもそれだけじゃなくて、ホール全体が、演奏者とっての公演の場になっているように感じた。客席の聴衆が、何かするわけでもない。手拍子とか(一部の曲でしている人はいたけど、自然に出てきたもので舞台上から促されたものじゃない)、質問に答えるとか、そんなものはない。演奏者はステージの上にいて、演奏している。それだけなのに、演奏を遠くに感じなかった。メンバーひとりひとりの演奏が、語りかけてきているような。私の席の位置がどちらかと言うと前の方だったから、かもしれない。でも、その演奏が、あの田園ホール全体を、場を「音楽」そのものにしてしまったように思える。しかも聴衆がいるからこそ、また音楽に、演奏に変化が生まれたような。
 カーテンコールでのフレンドリーな感じも、そう思わせる要因でもありました。

 これまで、CD/DVDでアンベガの音楽・演奏を聴いてきた。NHK教育(Eテレ)「クインテット」は、ベガメンバーも演奏に参加、クレジットでも「アンサンブルベガ+フレンズ」と表記され、それをずっと放送を観て、聴いてきた(でもイコールアンベガじゃない)。
 それなのに、生で聴いたら、「CDと全然違う!!別物だ!!」と感じた。CDには収まりきらなかった音、迫力、雰囲気、空気感がとても強烈だった。覚え書き後編の「ブラック・ジャック」で特に感じたのだが、生のアンベガはもっと荒削りだった。雑という意味ではなく。CDではきれいに収まっているのが、生だともっと、弾力があって、大きな音から小さな音・強い音からかすかな音までダイナミックで、立体的で、勢いがあって、躍動感に溢れていて、もっと自由にのびのびしている。そして、”全体”の”和”を保ちながらも、各々が”個”を”主張”してもいる。ああ、これがライヴ、LIVEだと思った。LIVE=生きている、命がある。「ブラック・ジャック」のテーマではあるけれど、「ブラック・ジャック」だけじゃなくて全部。結成して15年。その間に育ててきた調和の様なんだろう。生きているから、また次の公演(12日・長崎)では同じ曲を演奏しても、違う演奏・音楽にもなるだろう。長崎公演では、第2ヴァイオリンはアンベガ通常メンバーの日比浩一さんに戻ります。今回の岩手公演では、客演の藤村さんで、いつもとはまた違ったアンベガを聴けた…これはこれでおいしいなと思う。

 この公演の日の朝、ラジオで彬良さんがビートルズの話をしていました。次々とヒットを飛ばしてゆく中、アイドル視されることに抵抗があった。録音技術の発達により、全員がその場にいなくてもレコーディングしてひとつの作品をつくれるようになった。ジョンとポールも音楽性が異なり、解散はまだしないけれども、それぞれが違う雰囲気の音楽を製作、発表していった。その後、ビートルズはこのままでいいのかと、4人で最後のライヴをする。色々あっだだろうけれども、音楽は4人を繋ぎとめていた。

 この話を聴いて、その後アンベガのコンサートを聴いて…何かを思わずにはいられなかった。私の身の回りには、全員がその場にいなくても、別々にレコーディングしても、最後にはひとつの楽曲になっている音楽がたくさんあると思う。それはそれで、完成度が高くなる。納得がいくまでレコーディングして、納得のいく部分を切り取って…。
 でも、生のコンサート、ライヴでしか出来ない音楽、その時、その瞬間にしか生まれない演奏、一体感もある。だから、「ライブ(LIVE)」=「生もの」。その時が過ぎれば、消えてしまう。私が今、思い出しながら書いている間、もうこの時の演奏を聴くことは出来ないけれども、頭の中にあの演奏が蘇ってきている。その迫力、勢い、音色、響きに、その時の感情のうねりも同時に蘇ってくる。いつまでこの感覚を保っていられるだろう?心には残る、忘れない。でも消えない…とは断定出来ない。薄れてしまうかもしれない。人間はそういう生き物だから。だからこそ、また新しい、その時その場でこそ生まれる演奏が出来るんだと思う。
 でも、あの時は、ずっとこの音の余韻に浸っていたくて、ホールをなかなか出たくありませんでした。何とも言えない心地よさを思い出します。

 ここには書かないのですが、個人的に抱えていたことに関して、今回の公演でひとつの答えを出せたこともある。意外な、思わぬ発見で、自分でも驚いている。驚くと同時に、決意も固まった。
 念願の生のアンベガの公演を、聴きに行けて本当によかった。素晴らしい演奏を、楽しい音楽のひとときを、本当にありがとうございました!カーテンコールで、何度ありがとうと言っても足りないと心の中で思っていたのですが、今もそんな気持ちです。感謝するばかりです。アンベガが大好きです!

 今度は、日比さんがいるアンベガを聴きたい。そしていつかは、ホームの宝塚ベガホールに行って聴いてみたいなぁ。
 最後にもう一度、ありがとうございました!!

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おふぃすベガ:レポート:宮川彬良&アンサンブル・ベガ:11月30日(土)岩手・田園ホール(矢巾町)
 アンベガ事務局・おふぃすベガさん公式の、公演レポートです。
 「ブラック・ジャック」に関して、とても興味深いことが書かれています。…えっ!?じゃぁ、私が聴いた「ブラック・ジャック」は…「CDと全然違う!別物だ!」と感じたのは…はて…?

 尚、来年の公演予定ももう決まっています。詳しくは上記おふぃすベガ公式サイトで!

【追記】
Facebook:おふぃすベガ Office VEGA Ltd.:*大長編レポート
 おふぃすベガさんの公式フェイスブックにて、当ブログの岩手公演レポ記事を紹介していただきました。紹介のお言葉を読んで、驚くとともに大変光栄です。どうもありがとうございます!!
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by halca-kaukana057 | 2013-12-07 17:26 | 音楽


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