天にひびき 8

 今年読んだ漫画の感想を今年中に書く…まだあります。こちらは割と最近の「天にひびき」8巻。


天にひびき 8
やまむら はじめ/少年画報社・ヤングキングコミックス/2013

 成田空港。ひびき、梶原と同期の指揮科・大場がウィーンに留学するのを見送っていたひびき、秋央たち。ちょうど同じ時、成田に降り立った2人…ドイツから来た女と男。ひびきたちが帰ろうとするところで、その女と如月はぶつかってしまう。それを見ていた男に、如月は見覚えがあった…いや、よく知る男だった。翌日、大学で練習している秋央と南条の話に割って入ってきたその男・桂木和弥。音大生だった頃、如月とカルテットを組み、そのリーダーだった。ヴァイオリンの腕前はかなりのもので、卒業後はカルテットを引きつれヨーロッパへ。しかし、如月はその直前に腕を故障、渡欧せず演奏活動から離れていた。如月にも、秋央や南条にも厳しい言葉を投げつける桂木。如月も南条も憤るが、演奏家としては一流。数日後、3人は桂木のコンサートへ向かう。そこで3人が聴いた桂木の演奏は…。


 7巻から打って変わって、新キャラ登場です。そしてこれまで少しずつ話に出てきた如月先生の過去も語られます。桂木さん…全く遠慮も気遣いもしない、キツイ、口が悪い、オレ様人間です。でも、ヴァイオリニストとしては一流。秋央もそれをちゃんと理解してて、
できる人ってのは大抵みんな強気だったり押しが強かったり
まァ あれだけ口の悪い人も滅多にいないと思うけど
でもああいう人達ほど 人一倍努力してるし
自分に厳しいってのもわかってきたから
(25~26ページ)
と言っている。そして、リサイタルの演奏で、圧倒される3人。特に南条君。如月先生のことが気になっていて、その如月先生と過去に何かあったと思わせるような雰囲気。前の7巻、コンクールで自分の課題も自覚し、如月先生のもとでうまくなろう、うまくなろうと努力している…。それなのに、世の中にはとてつもなく巧く才能のある人がいて、海外でも活躍している。桂木の演奏を聴きながら涙し、その後また大学にやってきた桂木に演奏の際のコツを(半強制的に)教わった南条君。如月先生とのこと、性格の悪さで認めたくは無いけれど、その腕前も、演奏の際のコツも巧みなことに触れて成長しようとしている。7巻に続けて、南条君を応援したくなります。がんばれ南条君!

 そして、如月先生も、桂木と組んでいたカルテット、腕の故障、ヨーロッパへ行けなかったこと…そんな過去のしこりを乗り越えました。桂木は成功したが、渡欧したあとの3人のその後は知れないまま。そんな厳しい世界。そこへひとつの提案をした桂木…これが如月先生も、特に南条君も揺るがすわけですが、如月先生が桂木とカルテットを組んでいた時のことを冷静に見つめ、出した答えがとてもよかった。清々しい。桂木に当たっているスポットライトを、カルテットのメンバーとして一緒に浴びていただけ。その夢は、桂木のものであって、自分の世界のものじゃない。それよりも、自分は今ここで大切にしているやるべきことを、やりたいことをやる。如月先生の手紙の部分を、何度も何度も読みました。桂木だってただ巧いだけじゃなく、ちゃんと努力もしている。だから、南条君に的確なアドバイスもできた。桂木は桂木で、如月先生は如月先生で、それぞれの音楽の世界で生きてゆく。如月先生、素敵です。

 後半は、文化祭の2つの学内オーケストラを、ひびきと梶原がそれぞれ指揮をすることに。ひびきにとっても、梶原にとっても、オケを指揮するチャンスがめぐってきました。梶原が指揮するAオケ、ひびきが指揮するBオケ、指揮科の2人の対決…と梶原は意識している模様。今までオケを指揮できる機会が無かったからねぇ…。がんばれ梶原!普段はチャラいですが、3巻で苦学生であることも判明し、それを周囲にわからないように努力を続けてきた。梶原もがんばって欲しいです。

 一方のひびき。これまでの21cオケなどでの指揮の反省から、指示も明確に的確に、わかりやすくオケと曲をまとめあげてゆく。ひびきも成長したか…と思えたのですが、一緒に演奏している秋央から見ると「ドキドキしない」。何が出てくるかわからない、ひびきもコンサートマスター(21cオケの時の友田さん)もオケも必死でドキドキしてて…それがない。そしてついに秋央が、驚くべき行動に。何とコンマスに!?最初の頃の秋央くんを思うと、本当に思い切った、大それたことを…。秋央の目標、夢に向かっての第1歩と思ったが…そうは簡単にいかない。

 如月先生と桂木さんが組んでいたカルテットの話で、桂木に当てられたスポットライトを浴びていただけ、という話をしましたが、秋央くんもそうなりそうだったのかもしれない。指揮者としてまだまだ未熟なところがあるひびき。それでも、小学生の時にプロオケ相手に天才的な指揮をして、セミプロオケの公演も成功させた。才能はじゅうぶんにある。その音楽をずっと追いかけてきた、そしていつかコンマスとして一緒に演奏したいと思ってきた。そしてそのチャンスがめぐってきたけれども、秋央はひびきへ当てられたスポットライトを一緒に浴びたかっただけな感じになってしまった。

 普段、オーケストラを聴いていて、コンサートマスターの役割というのは、実際にコンサートに行くかテレビなどの演奏の映像を観ないとわからない。CDではわからない(わかる人はいるんだろうなぁ)。有名であればあるほど、指揮者に目が耳がいってしまうが、オーケストラのまとめ役はコンサートマスター・コンマス。指揮者の指示を、やろうとしていることを、オケ全体に伝える。言葉ではなく、その動き、演奏で。思い悩んだ秋央が友田さんからコンマスについて聞くシーン、勉強になります。そうか、オーケストラ内では楽器や奏者の位置によって届く音の速度が異なる…確かに。舞台の範囲じゃそんなに影響ないだろうと思っていたが、相手は秒単位で刻々と変化する音楽。しかも、その速度が違っても音を、演奏を合わせることが基本中の基本。オーケストラも物理だなぁ。
 その友田さんと秋央が話しているシーンで、ひびきについて友田さんが語る部分が気になりました。何かのフラグですかこれは?いや、これは1巻から出てきていることではあるけれども…。

 ひびきへ当てられているスポットライトを一緒に浴びる、のではなく、ひびきに、そしてオケ全体にスポットライトが当たるように…秋央の挑戦、奮闘は続きます。がんばれ!8巻は応援してばかりだなw

 ちなみに、冒頭に出てきたドイツ人女性…ひびきと少し話をし、そしてひびきの父とも会い、何かを決めていた…。一体何が始まるのでしょう…?ひびきに何が起こる?気になる。

 8巻の吉松隆先生のコラムは、才能について。音楽の話ですが、音楽に関わらず、才能や努力について悩んでいる人に読んで欲しい内容です。私も、読んでいて納得しました。

・7巻:天にひびき 7
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by halca-kaukana057 | 2013-12-30 20:25 | 本・読書


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