[原作小説]魔女の宅急便 4 キキの恋

 実写映画が公開されている「魔女の宅急便」シリーズ(原作。ジブリアニメはまた別物)映画を観に行く予定はありませんが、原作を引き続き読んでいます。

・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
・3巻:[原作小説]魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女


魔女の宅急便 4 キキの恋
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013
(単行本は福音館書店、2004.その後福音館文庫、2012年)

 キキは17歳になり、コリコの街で今日もお届けもの屋さんの仕事をしている。とんぼさんはナルナの町の学校で、虫や生き物、自然の勉強をしている。夏になり、学校は夏休み。とんぼさんがコリコの街に帰ってくるのを楽しみに待っていたキキだが、とんぼさんは夏休み中、「雨傘山」という山に入って山のことを調べたいという手紙が届く。とんぼさんが帰ってこない、とんぼさんに会えないことにひどく落胆するキキ。
 一方、キキと同年代の仲良しのモリさんは、将来の夢のため、隣町のレストランに1ヶ月間住み込みで手伝いをし、料理を習いに行きたいと言う。そこで、弟の8歳のヤアくんをキキに預かってほしいと頼む。ヤアくんと夏を過ごすことになったキキ。ヤアくんはオソノさんの子どものオレくん、ノノちゃんと仲良くなり、毎日冒険をして遊んでいる。
 とんぼさんに会えず、お届けもの屋さんの仕事ではちょっとしたトラブルがあり、くすりぐさの刈り取りのことも忘れ…落ち着かないキキ。
 ある日、キキはお祭りで出会った同年代の友達の集まりに誘われる。しかし、お届けもの屋さんの仕事が入る。コリコの街から離れた遠いところへ向かうキキ。そのお届け先のザザさんは、キキにゆっくりしていって欲しいという。焦るキキ。そして、何故かほうきがなくなってしまう…。


 17歳。とんぼさんへの恋がメイン。表紙のキキも随分と大人っぽく、艶っぽくなりました。扉絵のキキととんぼさんのイラストもいい。
 しかし、17歳…まだ17歳。自分自身の恋心、欲望とうまく付き合えないキキ。とんぼさんは大好きな生物の研究に没頭して、夏休みなのに会えない。同年代のカップルが会うのを引き立てるお届けものをすることになり、嫉妬している。やきもち焼きなところは変わってません。その一方で、キキの評判は今もうなぎのぼり。同年代の若者たちと、お祭りで仲良くなり、魔女として注目の的になる。とんぼさんはいないけど、自分を認めてくれる、褒めてくれる、素敵だ・カッコイイと言ってくれる人たちがいる。…この時、キキは大事なことを見失っていました。

 キキの魔法は飛ぶこと。あと、くしゃみのお薬を作ること。これだけ。でも、「魔女」というだけで特別な存在に見られてしまう。キキ自身は、飛ぶことぐらいしか出来ない、大したことは出来ない、といつもは謙遜するのですが、この4巻の前半では、すっかり舞い上がっている。

 そんな時、山のほうに住むザザさんと出会う。自分を特別な存在と持ち上げてくれる友達との約束のため、早く帰りたい。でも、ザザさんは様々なおもてなしやお話をする。普段のキキなら、そんなザザさんのことを面白がるのに、うっとうしいと思ってしまっている。その時、キキに起こった大事件。置いたはずのほうきがない。ザザさんを疑い、ザザさんの家から逃げる。しかし、外は暗い森。何も見えないまま歩くも、うまく歩けず、身体も冷えてくる…そんな中で、キキが思い出したこと。暗闇の中で自分自身の心が見える、といいますが、まさにその状態。キキはいつしか、心の暗闇の中にいた。大切な人に会えない、仕事もうまくいかないと自分を見失い、自信を失っていた。自分を持ち上げてくれる友達がいても、それは満たされるものではなかった。17歳だからこそぶつかるようなキキの悩む姿と、そこから解放される様が清々しい。

 「夕暮れ路」の先の庭で会ったヨモギさんとのお話も印象的。以前もあったが、キキが運んでいるのは物だけではない。送り主から、受け取り人への気持ち・想いも運んでいる。ヨモギさんへ運ぶモノ、物質ではなく、キキの気持ち、キキの存在そのものだった。「夕暮れ路」は3巻で、歌手のタカミ・カラさんが歌うことを再開するきっかけになった場所ですが、また、この場所が特別なものになりました。読んでいると、光がきらきらしている樹木が美しい小路をイメージします。絵にしたら、どんな路になるのだろう?
 その夕暮れ路での出来事の後、キキが話した言葉が心に留まりました。キキが愚痴を言わなくなった、というジジに対して、
「ダメのつぎは、ダメじゃないわ。トンネルのむこうはいつだって光があるのよ」
「でも永遠にダメってことはないわ。わたしは、そう思うの」
(203ページ)


 そして、この4巻の最後は…恋から愛情を自覚する。母・コキリさんが体調を崩して寝込んでしまう。恋はいつか、愛情に変わる。キキにとって大切な人はとんぼさんだけじゃない。コキリさんがどうなってしまうのか…まさか、まさか…私も不安で、ページをめくりました。先輩魔女として、母として、そしてキキを導く存在。いつかは、その時が来るのだろうと思うと辛いが、キキはコキリさん、そして父・オキノさんからも、愛情・愛することを学んでいる。コキリさんの言葉も、深く深く読みたい。
「そうね、いっぱいしようね。おかあさんの思い出、話してあげるね。出会えて、生まれて……思いかえすとたのしいことばかり。でもね、すぎた日の思い出も魔法だけど、これからつくる思い出こそ魔法なのよ」
(248ページ)


 またひとつ大人になったキキ。それにしても、モリさんの成長も清々しい。立派、立派過ぎるほど…こんな立派でしっかりした人間にはなれないよと思ってしまうが、その境遇を考えると、自然な成長なのかもしれない。モリさんにも注目しています。
 5巻も読むのが楽しみです。
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by halca-kaukana057 | 2014-03-10 22:26 | 本・読書


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