[原作小説]魔女の宅急便 6 それぞれの旅立ち(最終巻)

 「魔女の宅急便」原作シリーズを読み続けてきましたが、いよいよ最終巻です。

・1巻:魔女の宅急便 (原作)
・2巻:[原作小説]魔女の宅急便 2 キキと新しい魔法
・3巻:[原作小説]魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女
・4巻:[原作小説]魔女の宅急便 4 キキの恋
・5巻: [原作小説]魔女の宅急便 5 魔法のとまり木


魔女の宅急便 6 それぞれの旅立ち
角野栄子/角川書店・角川文庫/2013
(単行本は2009年福音館書店、その後2013年福音館文庫)


 キキととんぼさんが結婚し、13年後。2人の間には、男の子のトト、女の子のニニという双子の子どもが生まれた。キキはコリコの街でお届けもの屋さんの仕事を続け、とんぼさんは相変わらず昆虫に興味津々の先生。トトとニニは11歳、ニニはそろそろ魔女になるかどうかを決めなければならないが、なかなか決意の言葉を聞けず、キキは不安になっていた。一方のトトは魔女や魔法に興味があり、くすりぐさの世話や刈り入れにも積極的。ただ、男子は魔女にはなれない…キキの血は引いているのに…。
 小さかったおソノさんの娘のノノと、キキの親友モリさんの弟・モリの結婚式、一通の手紙が届く。あのケケからだった。更に、夕暮れ路の家に、ヨモギさんも帰ってくる。トトとニニは、コリコの街で様々な人と出会い、心を通わせながら成長してゆく…。

 この6巻で最後なのか…と感慨深く思いながら読みました。リアルタイムで読み続けてきた人にとっては、もっと感慨深いだろう。あのキキととんぼさんが結婚し、子どもが生まれ、お父さんとお母さんになるなんて。表紙では少女のままのキキ。35歳になったキキを想像してみたが、イメージできなかった…。

 そのキキの双子の子ども達、トトとニニ。お姉さんのニニは元気で快活、様々なものに興味は持つが、長続きはしない。魔女になるかどうかも迷っている。一方、弟のトトは物静かで物事をじっくり考えようとする。魔女や魔法に興味は持っているのに、魔女の子どもでも男子は魔女になれない。

 2回ほど読んだが、どちらもトト目線で読むことが多かった。自分がトトと性格が似ているからか。また、魔女の血を引いているのに魔女にはなれない、というトトが向き合っている現実に思うことが色々あった。でも、男子だから魔女にはなれない、と落ち込むことで終わらない。魔女にはなれないけど、トトはトトだけの”魔法”のような何かを持っている。それを追い求める姿が、いかにも青春。
 一方、ニニはニニで大変だ。魔女の子どもで女の子=魔女になる、と学校の友達に決め付けられてしまっている。ニニは曖昧な返事をするが、これはこれで難しい。親の、代々の家業を継ぐこと。そこにある周囲の期待、もう決まっている道を歩むのが楽そうに見える…ニニは明るくはぐらかしているが、相当のプレッシャーなのだ。そう思うと、ニニのその明るいケロリとした言動の奥に隠れいている気持ちを読み取ろうと読んでしまう。

 母になったキキは、「見えないもの」を大事にする、とトトとニニに話す。ニニは「魔女のお説教」だと逃げ出す。キキがかつて母・コキリさんの話を「古い」「何でも慣習」と思っていたのが、キキもそんなことを言うようになったのかと思うとちょっとおかしい。でも、この「見えないもの」を大事にすること、これはこのシリーズ全体にかかるテーマ。世の中は目に見えているものだけじゃない、目に見えない不思議もたくさん存在している。魔女はそんな世の中にある不思議を伝える役目も持っている。空を飛び、くすりぐさでくしゃみのお薬をつくるだけが魔女の力、魔法ではない。以前、作者の角野栄子さんのインタビューで、キキが魔女であること、キキの魔法は特別なものではなく、ひとつの個性、なのだと読んだことがある。魔女にはなれないトトも、魔女になるか迷っているニニも、キキととんぼさんから引き継いでいる個性。成長の過程で後天的に作り出した個性。個性も目に見えるものばかりではない。世の中、目に見えるものよりも、見えないものの方が多いんじゃないかとよく思う。自分の中に何があるのか、読後、向き合いたくなる。

 この最終巻で、ケケが再登場します。3巻「もうひとりの魔女」で登場した不思議な少女・ケケ。ケケも、結局自分が魔女かどうかはわからない。そのまま、ケケも30代になりました(!!時の流れとは言え…驚きである)。そのケケと、トト。魔女のようだけど、魔女じゃないという共通点を持つ2人の関わり。ケケらしい謎が謎を呼ぶ展開で、ワクワクしました。

 トトとニニの成長、そして、迎える13歳。魔女の旅立ちの年齢。ニニはどうする、そしてトトは…。これ以上の感想は書かないことにしておきます。
 まだ続きが読みたいと言えば読みたいです。終わってしまうのが寂しいです。でも、この物語も、読んだ人、私の心の中で、続いていくんだろうな。そんな読後でした。
 角野先生、素敵な物語をありがとうございました。
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by halca-kaukana057 | 2014-06-19 21:53 | 本・読書


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