星の案内人 2

 また発売から間が開いてから書く漫画感想…。新たなる天文宇宙系・プラネタリウムが舞台の漫画「星の案内人」2巻が出ました。
・1巻感想:星の案内人1

星の案内人 2
上村五十鈴/芳文社・芳文社コミックス/2014

 ”おじいさん”の手作り私設プラネタリウム「小宇宙」には、今日も様々な人が訪れる。雨宿りにやってきた中学生男子2人。友達同士でキャンプに来ていたが、その2人はなにやら険悪な雰囲気。
 「小宇宙」の常連・トキオは屋外でヴァイオリンの練習中、偶然一人の同い年ぐらいの少年に出会う。人前でヴァイオリンが演奏できないトキオは逃げ帰ってきてしまうが、その少年はトキオのクラスに転入してきた楢島洸太という親分肌の少年だった。人見知りで物静かなトキオとは正反対の洸太。が、ある夜、2人は意外な場所で出会う。
 一方、トキオのおば・フミは、トキオの育て方で悩んでいた。フミはいつしか、「小宇宙」へやってきていた…。


 トキオと転入生の洸太、トキオとおばのフミさんを軸に、物語が進んでいきます。1巻ではまだ謎だったトキオを取り巻く環境、フミさんと暮らしている理由も明かされます。トキオが人見知りで内気な性格の背景、フミさんとの関係…「親子」の関係について考え込みました。11話、88ページで、常連となっているやさぐれ小説家志村さんが「実際世の中には感謝しづらい親もいるしね」と言う通り、難しい親子関係もあります。トキオとトキオの母もそんな関係かもしれない。そんな環境から抜け出したくて、自分を変えたくてフミさんのもとにやってきたトキオ。フミさんは、そんなトキオと、トキオの両親との間で悩む。自分はどう接すべきなのか。どうトキオを育てていったらいいのか。

 そんなフミさんにおじいさんが語ったのが、オリオン大星雲・M42と、おおぐま座・こぐま座の話。オリオン大星雲は星が生まれているところ。その星雲と、生まれた星をこんな形の話にするのはとても斬新でした。そういえば、星雲には様々な力が働いている。その辺の天文物理学についてはあまり詳しくないので書けないのが残念ですが(だったら少しだけでもかじりたい、わかるようになりたい)、見た目はきれいでも、星雲の中ではものすごい力があちらこちらから作用している。生まれたばかりの星はその力の中で更に育ってゆく。それに加えての、おおぐま座・こぐま座の話。この星座物語はプラネで聞いたり天文書で読んだりするたびに、切なくかなしくなります。そこでおじいさんが90~91ページで語った言葉が印象的です。

 NHKラジオ第1で夏休みに放送されていた「夏休み子ども科学電話相談」で、天文・宇宙の質問の回答を担当していた、コスモプラネタリウム渋谷の解説員・永田美絵さんが、「生命は星のかけら」とよく仰っていました。星は核融合反応を起こして様々な元素を生み出し、超新星爆発によってそれらが宇宙に散らばる。そしてそれらを含んだ星間ガスが引力で集まり、星雲となり、新たな星が生まれ、惑星系が出来る。地球には生命が誕生し、今、こうして多種多様な生物や人類が生きている。
 母親から生まれる子ども、その大元は宇宙でもある(オカルトやスピリチュアルなど、決してそっち系の話ではありません、念のため)。おじいさんの言葉を読みながら、永田さんのお話を思い出していました。

 トキオのクラスに転入してきた洸太も、なかなか面白いキャラクタです。トキオと正反対なようで、トキオと同じように外には出せない感情を抱いている。表向きは明るく強くたくましい子だけれども…。トキオにとっても、洸太にとっても、2人は出会ってよかった、いい友達になれそうです。

 13・14話ではこいぬ座の物語が。このアクタイオン(「アクタイオーン」とも表記される。このこいぬ座の星座物語となったギリシア神話は、バロック期のフランスの作曲家・マルカントワーヌ・シャルパンティエが「アクテオン」というタイトルでオペラ化しています)と猟犬メランポスの物語もまた切なくかなしい物語です。
 この13・14話を読んで、これは星座だな、と感じました。無関係だと思っていた人と人が、とある接点で繋がっている。繋がって、新たな関係が生まれる。ここで心をわしづかみにされました。実際、人間関係はどこでどう繋がっているかわからない。その新たな関係が、人に新たな成長への道を示してくれる。ヴァイオリンのことで悩んでいたトキオにとっても、明るい光になったはず。シリウスやプロキオンのような、冬の凍てつく空気の夜空を華やかに彩る、明るいシリウスやプロキオンのような。

 順序が逆になりますが、8・9話ははくちょう座とアルビレオ。はくちょう座の星座物語は、大神ゼウスが白鳥に化けた姿、というのが有名ですが(私もこちらばかり覚えていた)、これではなく、フェイトーン(エリダヌス座の星座物語での主人公)の親友キクヌスの方で用いたのは巧いなと感じました。
 星座物語は色々な説があるから面白い。しかも、ギリシャ神話だけでなく、世界各地独自の星・星座物語・伝承もある。星・星座にまつわる伝承や神話、物語は調べ始めたらキリがないぐらいたくさんあり、奥深い。それぞれの地域の特色も出ていて面白い。これからも、どんな星・星座にまつわる物語が登場するか楽しみです。
 そして、それらは人類の歴史、普遍的な人間の心を投影しているから、また面白いんだよなぁ。3巻も楽しみです。

 しかし、この「小宇宙」のあるところは、星空がきれいに見える。満天の星空の描写がたまりません。肉眼で天の川を堪能したい…。そんなところで8・9話のように天体望遠鏡を貸してもらったら、夜通し天体観測します。いや、自分のがありますが。望遠鏡無しでも、寝転がって満天の星空を眺めるだけでもたまらないなぁ…。


・参考過去記事:オリオン大星雲について詳しく知りたいなら:オリオン星雲 星が生まれるところ +「コズミックフロント」オリオン大星雲へ ハッブルが見た星のゆりかご
 最近天文書を読んでいないなぁ…。
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by halca-kaukana057 | 2014-09-27 22:38 | 本・読書


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