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終わりと始まり、失意と希望 人形劇「シャーロックホームズ」第2話

 昨日書けなかったNHK人形劇「シャーロックホームズ」第2話「最初の冒険」(後編)感想です。

・第1話「最初の冒険」(前編)感想:視野が増え広がれば、この世の中はつまらないものじゃない 人形劇「シャーロックホームズ」第1話

 前回、前編の最後に221Bに駆け込んできたレストレード(クーパー寮3年、公式ガイド「冒険ファンブック」より)。…あれ、レストレードは最初上級生という設定じゃなかったっけ?…だったような気がする…一体どこから仕入れた情報だったっけ…?ノベライズにも書いてないぞ…?つまり、ホームズ、ワトソンと同じ3年、15歳だが、3人並ぶとレストレードは随分背が高い。それで上級生に見えたのか…?(迷宮入り)
 ちなみに、レストレードは私のお気に入りキャラのひとりです。

・「冒険ファンブック」に関して:NHK人形劇「シャーロックホームズ」本放送直前特番&「冒険ファンブック」

 そのレストレードが駆け込んできた理由…ディーラー寮のドレッバーが食中毒で病院に運ばれた。ビートン校は全寮制。食べているもの、食事は皆同じ。でも、夕食の時、寮母のハドソン夫人が生徒たちに配っていた手作りクッキーは食べた人と食べていない人がいる。疑われているハドソン夫人。でも、クッキーが原因なら、もっと多くの生徒が食中毒になっているはず。ハドソン夫人のクッキーが原因ではない。ドレッバー、さらに同じくディーラー寮のスタンガスンも倒れた原因は?犯人は?ホームズの推理が始まる。

 2話はとてもテンポがいい。ドレッバーの部屋での現場検証、ホームズの推理、ついて来たワトソンの質問。ドレッバーとスタンガスンにこき使われていたアーチャー寮2年・ジェファーソン・ホープの存在。ドレッバーの情報や人となりを話すレストレードはまさに原作(正典)の警部のレストレードと一緒。その捜査の途中でやって来たのが、生活指導のロイロット先生。ここで、ホームズのもうひとつの面が。1話でも授業中はほとんど寝ているとありましたが、成績は下の下。原作ではホームズは天文学に興味がなく(事件に関係ないことには全く興味が無い)地動説を知らなかったネタがありますが、人形劇でも出てくるかなぁ?ロイロット先生にそんな弱点を突かれているホームズ、サッとワトソンを盾にした!wひどい!w

 そんな笑える場面もありますが、2話の見どころはホープの自白。全く、本当に、ドレッバーとスタンガスンが酷い。ホームズが「憐れみさえ感じない」と言っていたが、私も同じ。お金持ちで、有力者の息子で優遇されている2人。ホープをこき使い、いじめ、校則違反の賭け事をしてホープが大事にしている物を奪い、賭け事がバレたら親が裏から手を回して2人は咎められず、ホープだけが罪を被り、退学処分に…。本当にホープ君がかわいそうで、辛くて、その自白のシーンは見入っていました。

 ここで、思い出すのが1話、ワトソンが前の学校で同級生を殴ったということ。いじめられていた子を助けるためにケンカをして殴ってしまった。その相手は町の有力者の息子。いじめていた子は罪を咎められず、ワトソンだけ罪を被った。まさにホープ君と同じ。(1話でもありましたが、ワトソンが転校してきたのはその事件とは関係ありません)
 そしてもうひとつ。ワトソンは夢中になっていたラグビーを、脚の怪我でやめた。夢中になっていたもの、人生をかけていたものを失い、失意の中にいる。ホープ君も、退学処分になり、大切にしていた物もドレッバーに奪われ、捨て身で勝負を挑み、勝ったのに壊されてしまった。どうせ、もう終わりなんだ…と。

 だから、ワトソンはホープ君に励ましの言葉をかけたのだろう。
「何言ってるんだよ、僕たちの人生、始まったばかりじゃないか」
「やり直すいいチャンスじゃないか。リセットして、新しい自分になるんだ」
ワトソンがホープ君にかける言葉はとても前向きだけれども、押し付けがましくない。声がとても優しくて、あたたかい。言葉だけでなく、すぐにホープ君のいいところ、長所、特技を見抜いている。この点に関しての観察力・洞察力はホームズ並みと言ってもいいかも。そしてダメ押しの一言
「神様が、なぜ君にホープという名前をお与えになったか。HOPE,希望。君にはバラ色の未来がある」

 原作「緋色の研究」では、こんな台詞は出てきません。愛する人を殺され、ドレッバーとスタンガスンに復讐の賭けをした、という点は同じです。失意の中にある点、権力・強いもの・避けられないものから逃れられなかった点(原作ワトスンはアフガニスタンでの戦争に軍医として出征し、撃たれて帰国した)。そこに、ホープという名前から、失意から希望へ、というアレンジになった…三谷さん、脱帽です。ドツボです。

 あと、ワトソンがホープ君を励ますことができたのは、ホームズに出会い、ホームズと同じように学校の中の「奇妙なもの」に興味を持ち、それで新しいスタートを切れたから。ラグビーはもう出来ないけれど、新しい楽しみ、やりたいこと、やりがいのあることを見つけることが出来た。「リセットして」とありますが…全くのリセットではない。ワトソンは文章を書くこと、ホープ君は手先が器用なこと。得意だと思っていることを、新たな場で伸ばしていく。ワトソンは今後その特技を活かしていきますが、ホープ君もそうなってほしい…退学しちゃったけど…(「冒険ファンブック」をお読みの方は、この「けど…」の意味がわかりますね?)。ホープ君の未来に希望と幸あれ。切ない幕引きでした。

 石膏像事件も謎解明、無事解決。ハドソン夫人も無罪になり、221Bでのラストがまた笑える。ホームズ、ソファの下くぐったwでも、ハドソン夫人からは逃れられないw最後、ワトソンと笑い合うホームズが印象的です。いつもはクールで感情を表に出さないけれど、笑い合う友達ができた。ホームズもワトソンと出会ったことで、これから変わってゆく。そしてこのコンビで学園の謎・事件に挑む。2人のチームワークが楽しみです。

 ところで、指先は器用、というホープ君の長所は、石膏像破壊事件の原作「六つのナポレオン」のベッポに由来しているのかな。人形劇ベッポも器用かどうかは、今後出てくるかも…。

 それで、ホープ君が卵をどこから持ってきたのか、どこで手に入れたのか…人形劇ノベライズにはちゃんと書いてあります。他にも本編に追加されたシーン、説明多数。もっとハマりたい方、ビートン校についてもっと知りたい方は是非!
・感想記事:[NHK人形劇小説版]少年シャーロック ホームズ 15歳の名探偵!! +NHK人形劇版

 あと、細々とした点箇条書き。
・1話から気付いてましたが、ホームズのピロピロ笛(吹き戻し)は、机の上に4本並んでますw気分によって使い分けるとか?コレクションかも?wピロピロ笛コレクター…w
・卵の殻、よく見ると白身も付いているのがわかる。美術が本当に細かいこの人形劇…!
・ホープ君の部屋は「117A」
・ホープ君の自白のシーン、ドレッバーとスタンガスンと”勝負”している時の音楽がかっこいい。サントラまだかな?
・ベッポがホームズの石膏像をカバだと認識した…あのピーナッツカバをwベッポの美術の成績が気になりますw
・オープニング映像は何度観てもかっこいい。最初、真っ白なホームズの像に、原作の文章が入り、原型が出来る。そこに井上文太さんのキャラクターデザイン設定が書き込まれ、色が塗られ、水の音と共に眼が、瞳が開く。この部分がたまりません。
 後で調べて知ったのですが、学校の建物に「踊る人形」の暗号が。うまいです…!「踊る人形」に基づく回もあるらしいですよ?

 以上、ここまでが2話の感想。以下オマケ。

 オマケその1.東京に行って、NHKスタジオパークにも行ったのですが(この記事参照)、そこで素敵なものを貰って来ました!
終わりと始まり、失意と希望 人形劇「シャーロックホームズ」第2話_f0079085_22532060.jpg

 番組ポスターデザインのポストカード!!このデザインがとても気に入っています。美しい。ルーペに写るキャラクタたち。幻想的です。魅入ってしまいます。
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 裏は番組制作スタッフ名簿。皆様、素敵な作品をありがとうございます!これからも楽しみにしています!

 オマケその2.またしてもイラスト描いた。
終わりと始まり、失意と希望 人形劇「シャーロックホームズ」第2話_f0079085_2255375.jpg

 レストレードとホープ君。1・2話の2人。この2人は描きたかった。ホープ君が意外に難しくて、苦戦しました。可愛くならない!!
 レストレードは困り顔が印象的です。

 思い切り長文になりました。ああ、好きな作品について語るのは楽しいなぁ(「クインテット」での長文感想以来の再来か?)
by halca-kaukana057 | 2014-10-20 23:06 | Eテレ・NHK教育テレビ

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