A Case of Identity 人形劇「シャーロックホームズ」第4話

 今週も行きましょうか。NHK人形劇「シャーロックホームズ」感想。第4話「消えたボーイフレンドの冒険」

 冒頭、221Bで読書をしているワトソン。読んでいるのは、チャールズ・ディケンズ「二都物語(A Tale of Two Cities)」。ディケンズと言えば、「クリスマス・キャロル」や「大いなる遺産」が有名ですが、何故この作品なのか…しかも、タイトルがはっきりとわかるように見せているのは何故か…それはまた後で。

 ここで、小説を読む気が知れない、とホームズ。ホームズにとって、人間による作り話なんて興味は無い。目の前にあることをしっかり観察すること。「現実が僕の先生さ」と。前回第3話「困った校長先生の冒険(元ネタ:「ボヘミアの醜聞」)」では、観察しないで先走ってしまったためにアドラー先生に負けてしまった。今回は元のいつものホームズです。ベイカー寮の前でうろうろ迷っている女子生徒…メアリー・サザーランド(ディーラー寮2年)をよく観察して、その心理を見抜いています。痛い目に遭って、基本に立ち返ったのかな?

 ところで、この小説なんかよりも現実の方が面白い、という意味のホームズの台詞。原作(正典)「花婿失踪事件」の冒頭でも、ホームズはこんなことを言っています。
「ねえ君、人生というものは、人の考えだしたどんなものにもまして、不可思議千万なものだねえ。われわれの思いもよらないようなことが、実生活では平凡きまわる実在として、ごろごろしているんだからなア。
(中略)
それにくらべたら、小説家の考えだした月並ですぐ結末のわかる作品なんか、気のぬけた、愚にもつかぬたわごとにすぎないと思うよ」
(「シャーロック・ホームズの冒険」より「花婿失踪事件」 延原謙:訳、新潮文庫 105ページより)

 延原謙氏の訳は19世紀末の英国の雰囲気を伝えていていいですなぁ。

 平凡なようで、思いもよらないことばかりの現実世界。ホームズはそんな不思議なことを観察して、真実を導き出すのが面白くて仕方ない。1話で、怪我でラグビーが出来なくなり失望していたワトソンに「この世はつまらないものじゃない」と言っていたのを思い出します。

 さて、その依頼人・サザーランド嬢の相談とは…。突然消えたボーイフレンド・ホズマ・エンジェル(クーパー寮6年?)の行方を捜してほしい、と。突然サザーランド嬢の前に現れたホズマは、サザーランド嬢と好みが何もかも一緒。理想のボーイフレンド。交際をしていたのに、「僕のことを忘れないで」と言い残し洞窟に入って行き…出てこないと追いかけたら、姿が無かった、と…。

 このサザーランド嬢がコミカル。大柄な女子で、リアクションが大きい。惚れっぽくて、案の定ホームズにも…勿論、ホームズは軽く、冷たくあしらうwこんなサザーランド嬢と、ホームズの間をうまく取り持つワトソン。心配するサザーランド嬢を「大丈夫」と励まし、ホームズとの仲を取り持つ。立派に探偵助手、相棒してます。やはり誰とでも仲良くなれる性格なんだろうなぁ。
 ちなみに、サザーランド嬢はディーラー寮。お金持ちの息子たちが入る寮、と2話で説明がありましたが、女子でも入れる模様。原作どおりならサザーランド嬢は裕福ではあるので、入れるということか。

 サザーランド嬢にいくつか質問をして、ホームズとワトソンが向かったのは、ラングデール・パイクのところ。制服は紺のベイカー寮。学園の情報通。ホームズはホズマという生徒がいるかどうか、調べて欲しいと頼む。また、パイクは男子が好きそうな女子の色っぽい写真を売っている。それを見たワトソンの反応が、実に15歳の思春期の少年w一方、ホームズは無関心。パイクは他の生徒にも写真を売っているのだろうか。ディーラー寮の金持ちの息子たちが買い漁ってそうだな…。
 原作では、「三破風館」(「シャーロック・ホームズの事件簿」)にちょこっと出てくる。5話で登場するあのキャラクタもですが、原作ではほんの少ししか登場しないキャラクタが、人形劇では他の話でも活躍するのが面白い。

 次に向かったのが、ホズマが消えた洞窟。この洞窟に入る前、走るホームズとワトソン。しかし、ワトソンは脚の怪我のせいかホームズに追いつけない。そんなワトソンを振り返って待ち、ワトソンも頷いて、2人で洞窟へ入っていく…ほんの少しのシーンですが、2人の絆・友情が垣間見れる?シーンです(多分)
 洞窟には隠し出口。ここからホズマは逃げたのか?そして、パイクの調査では、この学園にはホズマなんて生徒はいない、と。最初から予想して、検証、事実立証のためにパイクを走らせていたホームズ…。完全にホームズのペース。ホームズの予想→検証・事実立証→結論、という推理の筋書きが、物語を追うごとに見えてくるのが面白い!

 さて、いよいよ謎解き。221Bにはサザーランド嬢と、幼馴染の男子・ウィンディバンク(クーパー寮)が。全ては、惚れっぽいサザーランド嬢を他の男子にとられないように、ホズマという架空の存在を作る…なりすましていた。ここで、ウィンディバンクの苦悩が。ホズマになって、サザーランド嬢と交際できたのはいいけど、それはウィンディバンク本人では無く、架空の存在・ホズマ。自分がなりすましていたけれども、自分じゃない。ホズマは好かれているけど、サザーランド嬢はウィンディバンクのことをしつこいとホズマに話した。ホズマが羨ましい…。2人の自分で揺れ動くウィンディバンク。狂気にも近いウィンディバンクの自白…ウィンディバンク役の藤原竜也さんの気迫のこもった演技は見どころです。

 この「消えたボーイフレンドの冒険」の元ネタ「花婿失踪事件」の原題は「A Case of Identity」。アイデンティティ、自我同一性。自分が自分自身であること。ウィンディバンクはサザーランド嬢のために、自分が自分であることを放棄して、ホズマという存在をつくりあげた。でも、やっぱり自分は自分自身だった…。サザーランド嬢を好きなのはウィンディバンクだし、ホズマじゃなくてウィンディバンク、自分のことを好きになってほしい。でも…。だから、「僕のことを忘れないで」と言い残して、ホズマを消し去ることにした…。

 一言で言えば、執念深い、ストーカーな一面があるウィンディバンク。ここで、ワトソンの出番。2人の恋心、心理を完全に見抜いて、代弁し、優しくフォローしている。ウィンディバンクは反省もして、サザーランド嬢を傷つけたことを謝罪する言葉を引き出している。お互い、本音、本心が言えなかっただけ…。221Bを出て行き大騒ぎする2人、ワトソンは「幸せになってほしいね」と言うけれども、どうなることやら。ワトソンは本当に優しいなぁ。

 ワトソンは原作では「三大陸にまたがる女性遍歴」(「四つの署名」)があると語り、ホームズにも「女性は君の領分だ」(「第二の汚点」)と言われている。人形劇の15歳の時点では、まだガールフレンドは多くなさそうですが、その片鱗は見えました。今回は、小説から学んだ、とドヤ顔で語ってますが(声もドヤァ全開で爆笑しましたw)。「二都物語」は、2人の男がひとりの女性を愛する物語。ということで、「二都物語」だったんです。2話でホープ君の特技を見抜いたワトソンですが、女心、恋心を読むことに関しても、ホームズ並みの観察力と洞察力があると見た。「四つの署名」を元にする回が楽しみです…。

 さて、今回から、原作解説クイズコーナー「シャーロッQ!」がお目見えです!待ってました!!原作の解説をしつつ、原作ホームズの推理を垣間見る。これで、原作にも興味を持って、読む子どもも大人も増えればいいなぁ。私もまだ全部読みきれてない。入門中の身だけど…面白いよ。今後も、原作も読みたくなる「シャーロッQ!」期待してます。
 しかし、アニメのホームズとワトソンが可愛い。アニメのホームズのお茶目な表情は、本編では見られません。うん、ちょこまかしていて可愛い。
 アニメーションはアダチマサヒコさん
アダチマサヒコ-Maccha Cafe-
 最近だと、「みんなのうた」の「おつきさまのうた」のアニメを担当されてますね。柔らかく、あたたかな絵ですね。好きです。

 そういえば…と気になった。ワトソンが読んでいる本はわかったけど、サザーランド嬢とホズマが読んでいた本は何だ?
f0079085_23255670.jpg

画像から「Les M…」まで読み取れる。多分、「レ・ミゼラブル(Les Misérables)」じゃないかと。うん、ドラマティックですなぁ。「レ・ミゼラブル」も「二都物語」も、フランス革命が関係してくる話ですな。

 人形劇本編では語られない背景なども楽しみたい方は、是非ノベライズ(2巻)をどうぞ。「二都物語」についても詳しく書かれています:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎←私の感想記事。

 最後に、お知らせ。NHK渋谷放送センターでは、11月1日~3日まで、NHK文化祭を開催中です。そこに、人形劇「シャーロックホームズ」のブースもあるそうです。パペットや、原画など展示してあるそう。お近くの方は是非どうぞ。明日までです!
NHK文化祭2014
 「リトル・チャロ」のチャロがマスコットキャラクタ。チャロもNHKの顔になりましたね。

 さらに予告。NHKスタジオパークで、「シャーロックホームズ」展もやります!
NHKスタジオパーク:イベント情報:NHKパペットエンターテインメント シャーロックホームズ展
 11月30日(日)~12月28日(日)
 日曜にはパペットの実演ステージもあるそう。…2週間前なら、NHKスタジオパークに行ったのに……残念!!お近くの方、行く予定のある方は是非どうぞ。

 さて、次週は「赤毛」回です。
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by halca-kaukana057 | 2014-11-02 23:45 | Eテレ・NHK教育テレビ


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