見えているもの、見えないもの、見せないもの 人形劇「シャーロックホームズ」第10話

 思えば、もう第10話まで来たんですね、NHK人形劇「シャーロックホームズ」(全18話)。
第10話「失礼な似顔絵の冒険」。原作は、「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」(「帰還」収録)。「犯人は二人」、「恐喝王ミルヴァートン」の邦題もあります。むしろ、「犯人は二人」の邦題が一般的。何故、この邦題に?それは、本編を観てわかりました…。

 今回は、オープニング前が長めだった。221Bにやって来たのは、1話の石膏像破事件の犯人、ベッポ(ベイカー寮2年)。転校してきたばかりで、偶然通りすがったワトソンに罪を着せようとした…。「その説はご迷惑をおかけしました」と謝って、「似顔絵を取り返して欲しい」と依頼を。ベッポが持っているのはスケッチブック。中には、先生たちの似顔絵が描かれている。オルムシュタイン校長、モリアーティ教頭…似てる。ページをめくると、ホームズの似顔絵も…これはひどいw爆笑しましたw鼻を強調し過ぎ、眼はとんがっても口もおかしい。福笑いみたい。爆笑するワトソン。おいおい、親友に対していくらなんでも笑い過ぎなんじゃないのか、ワトソン。ホームズは勿論憤慨。ワトソンが笑いながら、またページをめくると、これまたおかしな似顔絵が。「まぬけな下膨れのおじさん」と笑いが止まらないワトソンに、ベッポ「あんただよ」…ひどいw落描きレベルwしかも、ベッポ「自信作なんだ」wこれには笑うホームズ。仕返しのつもりか?wワトソンは言葉を失って似顔絵を凝視…。依頼なのに、何だろうこのワイワイ賑やかな雰囲気。

 さて、本題の似顔絵を取り返す相手は、学園一怖いと嫌われている、歴史のミルヴァートン先生。歴史の授業中、似顔絵を描いていたらミルヴァートン先生に見つかって、取り上げられてしまった。ホームズも授業は受けたことはないが、ミルヴァートン先生のことは噂で怖い、と感じている模様。似顔絵なんてまた描けばいいじゃないか、というワトソンに対して、ベッポはうまく描けた絵はそうなかなか無い、と。わかる。もう捨てちゃったのでは?という質問には、それならその場で見せしめにもなるので破り捨てているはず、とホームズ。似顔絵は、ミルヴァートン先生がまだ持っている可能性が高そうです。

 こういう時は、学園の情報通・ラングデール・パイクの出番。ミルヴァートン先生について聞き出すホームズたち。これまでの、生徒に対する怖い指導の噂を語るパイク。パイクは「あくまでも噂だけどね」と言っているが、生徒たちからは嫌われているのは事実の模様。今日は、モリアーティ教頭のところへ行くらしい。…ミルヴァートンとモリアーティが一緒…正典を読んだ人なら、恐れおののいたと思います…。モリアーティも怖い相手だが、ミルヴァートンはまた違う方向で怖い…。その留守の間を狙って、ミルヴァートン先生の部屋に侵入し、似顔絵を奪い返す。今回は強硬手段のホームズ。ワトソンも少し怖がりつつも、「ホームズ行くところ、ワトソンありだ!」と一緒に行くと言い切ります。怖いけどワクワクしてきた!
 今回のパイクへのお礼は、ベッポの描いた似顔絵。パイクもそっくりでうまい。どこか不満なワトソン…w
 正典では、ミルヴァートンの家に侵入するのに、ホームズとワトスンで話し合いをするのですが、人形劇ではすんなりと決まりましたね。

 夜。マスクをつけたホームズとワトソン。正典の挿絵でも同じようなマスクをつけているのですが…バレバレですよ…。ミルヴァートン先生の部屋の鍵を、針金を使って器用に開け、中に入って引き出しを開けようとするワトソンにこういう時の引き出しの開け方を指南するホームズ。「君は泥棒にもなれるね」多分、これまでも何度かやったことがあるのだろうな…。

 その時、ミルヴァートン先生の部屋に入ってきた女子生徒が。「誰かいる?…いないよねー」と明るく独り言を言いながら、部屋の中を歩き回り…2人を見つけてしまった。その女子生徒…アガサ・ライト(ベイカー寮1年)。最初は泥棒!と騒いでいるものの、ホームズの名前を聞くと、ホームズを凝視している。アガサは何をしているのか…引っ込み思案で周りに人がいると集中できないので、ミルヴァートン先生に言われて、ひとりで補習授業を受けている。さらに続けるアガサ。「ミルヴァートン先生は皆が思っているほど悪い人じゃないよ」と。今夜も、モリアーティ教頭のところに行ったのは、校舎が老朽化し、隙間風が入ってきて生徒たちがかわいそうなので改修のお願いをしに行ったのだ、と。意外や意外。アガサ、まだ続けます。ホームズのことを見たことがある、と。ホームズも、アガサを見たことがある、と回想。「雲は何で落っこちてこないんだ?」と何度もつぶやき、疑問に思うアガサの姿。それをベンチで興味深そうに聞いているホームズ。
 正典では、アガサはミルヴァートンのメイド。名前しか出てこない、ちょい役のちょい役です。名前もファーストネームなのか、ファミリーネームなのかわからない。ホームズは鉛管工に変装して、アガサと親しくなり、ミルヴァートンの情報を聞き出した。さらにアガサと婚約までしてしまった!!事件後、原作のアガサはどうなったのかわかりません…。そのアガサが、こんな可愛いお茶目な女の子に。お茶目に見えるけれども、人前にいるのが苦手。雲の疑問からも、独特の発想の持ち主と思われます。1年生が出てきたのも初めてですね。

 ホームズとワトソンがミルヴァートン先生の部屋で探しものをしていることを知ったアガサ。力になれるかもしれない、と。似顔絵…見たことある、でも教えてあげる代わりに、交換条件。ホームズにキスを迫る!?「チューしたら教えてあげる」…大胆な子です…。ホームズ、勿論断固拒否。ワトソン「してあげなよ」おいwそんなドタバタの間に…ミルヴァートン先生が戻ってきた!うろたえるアガサ。一方ホームズは正気に戻って、ベッポの描いた似顔絵を取り返しに来た、と。ホームズ、ミルヴァートン先生にも全くひるみません。1話のモリアーティ教頭に対峙したシーンを思い出します。ミルヴァートン先生は、返して欲しければベッポ本人が来るべきだ、返さないが、と厳しい態度。さらに、ホームズとワトソンに留守の間を狙って忍び込んだな、と問い詰める。これには、アガサが慌ててフォロー。自習してたら、2人はノックをして入ってきた、と。アガサもがんばります。諦めたミルヴァートン先生、もう行け、と2人に言い放ち、おとなしく従うホームズの一方で…、今度はワトソンがミルヴァートン先生に立ち向かいます…!「何で、生徒に厳しく当たるんです?」「生徒は皆あなたを嫌っています」「あなたは本当は生徒思いの優しい先生だ」意外なワトソンの行動に、思わずえっ!?と声をあげてしまいました。

 ホームズは人や現場を観察し、推理してその人の心理を見抜く。それはワトソンには出来ない。だから、ワトソンは直接訊く。相手を怒らせないように、でも本音を引き出すように。今回、ミルヴァートン先生に対してはストレートに。この第10話で、最もドキドキしたシーンです。ワトソン…やるなぁ!
 この人形劇ではワトソンは15歳の学生。父が医師とは言え、原作ワトスンの医師スキルを15歳ワトソンは持っていません。でも、相手を思いやりながら問診するように、ホームズとも、レストレードやシャーマンたちとも、依頼人や犯人たちとも会話する。そして、ミルヴァートン先生とも。ミルヴァートン先生は本当は優しいとわかった。ならば、そのいいところを認めて引き出す。これがワトソンのやり方。

 ワトソンの問いに、ミルヴァートン先生は、それが仕事だからだ、と。学園生活は、規律を守ってこそ自由がある。それを生徒たちに教えるのが仕事。そのためなら嫌われたって構わない。実際、いますね。厳しいけれども、本当は生徒のことを思ってくれている先生。叱る時にはきちんと叱ってくれる先生。当時は嫌われ、煙たがられても、卒業し大人になると、そんな先生の存在が懐かしく、ありがたくも思います。
 でも引き下がらないワトソン「ものには限度があります!」いつになく勇敢。ミルヴァートン先生は「それが私のやり方なのだ!」とこちらも引き下がらない。まさかワトソンがミルヴァートンに立ち向かうとは思いませんでした、本当に。

 そこへ、部屋のドアを乱暴に叩き、怒鳴り声が。3人に隠れろと指示するミルヴァートン先生。やって来たのは、マスクをして棒を持ったディーラー寮の生徒2人…あの2人…バレバレですって。これまでミルヴァートン先生に厳しくされた仕返しに来た2人。ミルヴァートン先生、抵抗せず殴られる…ああ…。黙っていられない、出て行こうとしてホームズに止められるワトソン。怖がるアガサ。カーテンの隙間から、じっと見ているホームズ。2人の生徒が去った後、ミルヴァートン先生は頭に怪我をして血が。ミルヴァートン先生は、アガサにロイロット先生を呼んでくるように言いつける。残ったホームズとワトソンに再び「これが私のやり方なのだ」と言いながら、ベッポの描いた似顔絵を観る。やはり保管していた。保管していた理由…こんなにうまく描いてもらったのは初めてだ、一生の宝物にしたいところだ、と。ベッポにそう言えばいいのに、とまだ引き下がらないワトソン。しかし、ミルヴァートン先生は厳しい口調のまま、長年培ってきたイメージというものがあるのだ、と似顔絵も破いてしまう…。ああ…。このシーンで流れている音楽が、ミルヴァートン先生の心の奥を表現しているような音楽。楽器はツィターかな?ミルヴァートン先生の語りに合わせて、ぽつりぽつりと鳴ります。いい曲だ。

 殴った2人の生徒は必ず見つけ出して厳重に処罰すると言った一方で、ホームズとワトソンのことはアガサのために見逃す、と。アガサはとてもデリケートな生徒。アガサを巻き込みたくない。
 生徒に対して厳しく嫌われるミルヴァートン先生と、人前が苦手で引っ込み思案で独特の感性を持つアガサ。学園という"社会"から、孤立・疎外されている2人。だからこそ、ミルヴァートン先生はアガサのことを気にかけ補修授業もしているし、アガサもミルヴァートン先生の優しいところも知っている。お互いのことを理解し合えている。
 そう、学校は楽しいところとは限らない。現代ではアガサのように集団に馴染めない子は珍しくないですが、19世紀後半のイギリスの寄宿学校にもいたかもしれない。人形劇を観ている子どもにも、大人(親)にも、学校とは、集団生活とは、と問いかけ語りかけてくる。凄い、「犯人は二人」がこんな話になるなんて。
 だから、今回の原作の邦題を「チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン」にしたのか。「犯人は二人」でも、「恐喝王ミルヴァートン」でもなく。

 ミルヴァートン先生の部屋から出た2人…そこへ生活委員のレストレードと生活指導のロイロット先生が!レストレードが警部、というより、岡っ引きみたいw逃げる2人。ホームズは身軽に逃げるが、ワトソンは足の怪我のせいか、うまく走れない。追ってくるレストレードに物を投げ、命中!足は遅いけど、ラグビーで鍛えた腕は確かなようです。
 翌朝、221Bにレストレードが。頭に怪我をしている。昨夜逃げた2人のことを話す。もうひとりはどんくさくて、マスクをしてても下膨れで…ワトソン…今回も散々です…。ホームズに協力を求めるが、ホームズは拒否。相手がミルヴァートン先生なら仕方ない、自力でがんばると221Bを出て行くレストレード。がんばれレストレード。ミルヴァートン先生を殴ったあの2人を捕まえられるか…捕まえて欲しい。頼むぞレストレード。

 「今回は僕の負けだ」ホームズ、3敗目です…。絵は取り返せず、ミルヴァートン先生の心理も見抜けなかった。でも、落ち込んでいない。
「どうやら人間は僕が思っている以上に奇妙で複雑な生き物らしい。それがわかっただけでも収穫はあった」

 ホームズ、タフになりましたね。これから、さらに成長してゆくことを予感させます。そしてこの2人、いいコンビになってきましたね。お互いを補い合っている。15歳のノリで笑い合える親友としても。
 最初の頃は、「変わり者」「問題児」扱いされて、ホームズこそ学校という"社会"から疎外・孤立していた。それが今では親友も、友達も、助けてくれる人も、尊敬・敬愛している人もいる。ホームズのこれまでの成長にも目を見張るものがあります。

 そんな221Bに今度はハドソン夫人。朝ごはん…?やってきたのはアガサ!食堂で食べるのは苦手で、いつも部屋で食べている。ホームズとワトソンのことが気に入ったので、ここで食べる、と。拒否するホームズに、ミルヴァートン先生の部屋に忍び込んだことを見逃してもらったのは誰のおかげかな?とアガサ…「恐喝王ミルヴァートン」じゃなくて、「脅迫少女アガサ」じゃないですかこれでは!!w怒り、震えながら椅子を抱えるホームズ。「それは投げちゃダメでしょ」と抑えるワトソンwワトソン、お母さんですかw

 ミルヴァートン先生も学校に残っているし、アガサも今後221Bに頻繁にやってくることは確実。221Bに、アガサが持ち歩いている黒いクマのぬいぐるみがありましたね。この2人が、今後どう絡んでくるか楽しみです。ミルヴァートン先生をこのような人物に改変したからには、今後何かしらホームズとワトソンとまた会うことがありそうです。

 今回は「ワトソンメモ」も「シャーロッQ!」もあります。ワトソンメモのイラストは、ベッポの似顔絵を忠実に再現していた。ワトソンもかなりの絵の腕前である。あのひどいホームズとワトソンの似顔絵も。「僕はあんなまぬけな顔じゃない。だよね?だよね?誰かそうだと言ってくれ!」と視聴者に語りかけるのに吹きましたw今回のワトソンは、言動はマヌケじゃなかったですよ!
 今回の「シャーロッQ!」は原作を読めばわかります。でも、そこで終わる「シャーロッQ!」じゃない。そこからわかる19世紀後半のイギリス社会、文化の解説が興味深い。「シャーロッQ!」いいコーナーです。

 私もベッポに負けじと、ミルヴァートン先生描きました。
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 厳格さと優しさを同時に表現するのは難しいです…。

 次回は「まだらの紐の冒険」、先行放送第6回ですね。
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by halca-kaukana057 | 2014-12-16 22:31 | Eテレ・NHK教育テレビ


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