音楽を共有すること

 このカテゴリで書くのは1年以上ぶりです。しかも、カテゴリ名が変わりました。変えました。その経緯などを、これから書こうと思います。

 まず、ピアノを弾くことから、ずっと離れています。たまに、ブルクミュラー25やシューマン「見知らぬ国々」などを軽くさらう程度。後述するソナチネアルバムや、シューマン、シベリウスの他に、弾いてみたいと思う曲が何曲か合って、黙々と練習していたこともありました。が、続かず、未完成のままです。練習がだんだん退屈に思えてくる…。かつての、楽譜と鍵盤に食い入るように練習して演奏いていたあの熱心さ、情熱はどこへ行ってしまったのだろう…。

 思えば、転機となったのが、腕の手術と、ブルクミュラー25を終えてソナチネに入ったこと。腕の手術を受け、しばらくピアノを弾けず、練習から離れたこと。ブルクミュラーとは性格も形式も異なるソナチネアルバムを始めたはいいが、最初のクレメンティ7番から壁にぶち当たってしまった。簡単そうに見えるのに弾けない。どう弾いたらいいのかわからない。次にクーラウ4番に進み、クレメンティ7番よりは親しみやすいなと感じたのですが、やはりソナチネは何か違う。ならば大好きなシューマン「ユーゲントアルバム」…シューマン先生、難しいです。指遣いや響かせ方が単純じゃない。ずっと弾きたい憧れの曲である、シベリウス「樅の木」…まだ手が届きません。こうして、どんどんピアノから遠ざかっていきました。

 でも、ピアノからこのまま遠ざかる、離れる、さよならするのもかなしい。部屋には子どもの頃から弾いてきたピアノがある。弾かないままなのも勿体無い、かわいそう。そう思って、ピアノに向かうのですが、演奏しようと思って楽譜を開いても、何も出て来ず、そのまま蓋を閉めてしまうことばかりでした。

 でも、音楽は好きだ。クラシックからポップスまで。それは変わりませんでした。昨年あたりから、これまで長い、何を歌っているのかわからない、物語に馴染めない…と敬遠してきたオペラも聴き始め、今年は声楽全般強化年になりました(続行中)。さらに、以前は苦手意識のあったフランス近代ものも、フォーレをはじめとして聴いています。フォーレでも、「レクイエム」や宗教曲、歌曲と声楽曲を中心に聴いています。

 去年あたりから、ピアノのレッスンを受けてみようかと考えていました。子どもの頃は大手の教室に通っていた。教室・先生選びや体験レッスンを受ける時のことを、ピアノレッスンを受けているネットで知り合った方々に質問し、アドバイスをいただきました。しかし、ピアノ教室は大手から個人まで結構ある。体験レッスンを申し込むのもなかなか勇気が出ず…結局受けずにそのまま昨年が過ぎてしまいました(アドバイスしてくださった皆様、ありがとうございます。そして、ごめんなさい)

 そして今年に入ってから、ピアノが難しいなら、今まで興味はあったけどやったことのないものを一からやってみたらどうだろう。逆に、ピアノをやっている人は多いから、ピアノよりも別なものをやりたい(天邪鬼)。そう思って、何をやりたいか…と出てきたのが、うたうこと。オペラや声楽曲を聴いて、同じ人間なのに、どうやったらあんな声を響かせられるのだろう?自分の身体そのものが楽器になるって、どういうことだろう。歌うのは元々好きです。運転中に好きな音楽を聴いて、合わせて歌うことも多いですし(でも安全運転で)、カラオケも好きです(ただしひとりカラオケ・ヒトカラ。なかなか友達と都合が合わない、そして歌う歌がマイナーな曲が多い…)。ポップスもいいけど、マイクなしで大きなホールに声を響かせる声楽に興味がありました。合唱も興味があったのですが、一からボイストレーニングも受けてみたい。音楽の基礎となるソルフェージュにもなるだろう。声楽の教室は少なく選択肢がほとんど無かったので、すぐに決まりました。体験レッスンでも、この先生の元でレッスンを受けてみたい、と思えました。

 というわけで、今は声楽をやっています。練習曲のコンコーネ50番と、イタリア歌曲集をメインに歌っています。声の大きさには自信がありましたが、「大きな声」と「響く声」は全く違うことに、発声を一からやってみて気付きました。息の吸い方、吐き方、響かせ方、姿勢、使う筋肉、口の開け方、発声する際のイメージ。声のトーン、ピッチ、表情。まだはじめて1年経っておらず、うまくいかず戸惑うことも少なくありません。最初の頃は、高音はよくひっくり返るし、かすれる、安定しない。ピアノはその鍵盤を押せばその音が出る。声楽は、弦楽器と同じでその音は出せていても、ピッチという触れ幅がある。ピッチが少し違うだけで、全くその歌の表情が変わってしまう。ずっとピアノだけやって来たので、難しいけれどもとても新鮮でした。今は、イタリア歌曲集(全音の第1巻)を歌っています。ヘンデルの「Ombra mai fu(オンブラ・マイ・フ/なつかしい木陰)」など。イタリア語の発音もまだまだこれからです。イタリアものはこれまでほとんど聴いてこなかったので、最初はその明るさが眩し過ぎて慣れませんでしたが、探すとイタリア歌曲やオペラアリア、イタリア民謡にも様々な曲があることを知って、面白いなと思っています。
 でも、いつかはやりたいドイツリート。そして北欧もの。やっぱり北の音楽に惹かれますw

 発表会もあり、1曲歌う機会がありました。ピアノ演奏ではないけれど、人前で演奏するのは何年ぶりだろう…。発表会まで、細かい修正が続きました。そして、声楽はピアノ以上に体調に気をつけなければならない。風邪を引くなんて言語道断。自分の身体が楽器になるということは、体調そのものが演奏にあらわれてしまうことなんだと実感しました。
 発表会は、高音が少々かすれたところがありつつも、無事に歌いきることができました。曲に合わせた歌い方も出来たと思っています。そして、他の方々の演奏を聴くのも楽しかった。普段は個人レッスンなので、会ったことのない方ばかり。曲も違えば、声域も違う。声質も違う。同じピアノでも、弾く人によって音色は変わりますが、声楽はその人の声が楽器になる。人それぞれ声域も声質も異なる。その幅広さと深さが楽しかった。クラシックだけで無く、ポップスを歌う人、合唱もあり、また、ピアノや他の楽器もあり、自分が歌う以上に、聴くのが楽しかった発表会でした。

 その発表会の後、私が発表会で歌った歌を、他の生徒さんが歌いたい!と歌っている、と先生から聞きました。私も、他の生徒さんの歌もいいな、いつか歌いたいな、と思っていました。また、先生と先生の音楽仲間さんたちのコンサートを聴く機会もあり、憧れの歌も聴け、モチベーションが上がりました。

 以前、ピアノを一人で弾いていた頃。とにかく弾きたい一心で、レッスンに通えなくてもいい、誰も聴いてなくてもいい。そうして一言で言うと「独学」を選び、自分と楽曲・楽譜・作曲家の一対一で向き合いながら演奏するので十分だと思っていました。その分、自分の演奏には極限まで客観的に向き合う。わからないことがあったら「適当」で終わらせない。それで、ひとりで練習・演奏しても、カバーできると思っていました。

 その一方で、レッスンや練習オフ会などを心の奥で本当に羨ましいと思っていました。今でも、羨ましいと思っています。そんな環境が、直々に会って演奏し合える仲間が近くにいるのが羨ましい。演奏する曲も皆レベルが高くて、よく自分を見失っていました。過去の記事に、そんな自分を見失い、立ち上がり、また迷い…の過程が記されています。そんな過去の自分は、随分と意地を張っていました。置かれている環境…ひとりで演奏するしかない状態だったから、それでもやるんだ!、と強く思わないとすぐ折れてしまうから。熱心だったけど、腕の手術で少し離れた時期もあり、ソナチネに入って勝手が変わり、壁にぶち当たったところで折れた。

 今、ようやく、意地張っていた、頑なになっていた自分に気付きました。確かに、確固たる意志を持っていないと保てない状況だったけど…。他者を羨ましいと思いつつも、拒否している部分もありました。レッスンを受けている人には、仲間にいつも囲まれている人には、この私の置かれている状況、孤独なんてわからない。理解されてたまるか。私はひとりでも、ひとりだからこそ、自分に向き合って演奏するんだ。でもその演奏は、行き場がありませんでした。ブログに練習記録や録音をアップしても、そこが着地点ではありませんでした。

 今は、誰かと共有する音楽もいいなと思っています。一人で演奏したり、演奏会やCDを聴くのも、もちろんいい。ソロで演奏する時も、誰かと合わせる時も、聴く人がいる時も、音楽は特定の人がいるいないに関わらず、誰かに向けて演奏している。声楽は、基本的に伴奏がいないと歌えない。伴奏も共有。共有して、先生や聴いている人たちの反応を受け取って、音楽はまた深く広くなるのかな、と声楽レッスンや発表会などを通じて、思えるようになって来ました。特に、歌は、外国語であっても、雰囲気で伝わるものがある。発表会前、どうしたら、どう歌ったら、聴く人にこの歌に込められているものを伝えられるだろう。勿論、基礎基本の発声も大事。でも、歌の意味を頭に入れて表現を考えることで、発声も変わってくる。おのずとついて来る。先生にそうアドバイスされ、考えながら練習していました。

 先日感想を書いた「BBCプロムス ラスト・ナイト・コンサート2014」。指揮のサカリ・オラモのスピーチに、こんな内容のものがありました。
音楽は(中略)聴く者にとっては世界共通の言語です。
(中略)
物事を見る目を養い、人の心を癒します。
音楽は驚くほどの速さで人に伝わり、心の奥底にある感情に訴えかけます。
だから私たちは、こうして集まるのです。

 音楽は、共有してもっと楽しくなる。その時しか奏でられない、聴けない(録音録画しても、その時の空気感や熱気、雰囲気までは完全に伝えきれない)音楽を、共有したい。自分が演奏して聴いた人は違うことを思うかもしれない。その逆もある。それでもいい。その異なる想いも共有したい。

 ピアノは、今は声楽の練習の際に音を取る時に使っています。「演奏する」というものではありません(ごめんよ)。今は、声楽だけで精一杯なので、とにかく歌います。でも、発表会でピアノも聴いていいなと思ったので、またピアノを弾くこともあると思います。今度ピアノを弾く時は、意地を張らないように。

 声楽のレッスン記録は基本的に書きません。練習中の曲についても書きません。後でさらりと書くかもしれません。ただ、レッスンで学んだ面白いことや、何か気がついたら書きます。

 これが、今の私の奏でている音楽です。こうやって書くこともまた、共有ですね。
[PR]
by halca-kaukana057 | 2014-12-22 23:41 | 奏でること・うたうこと


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

プロフィールを見る

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

お知らせ・別サイト

管理人HN:(はるか)
 熱しやすく冷めにくい、何が好きになるかわからない好奇心のかたまり。このブログでは好きなものを、好き放題に語ってます。

プロフィール
*2014.9.5:更新
はてなプロフィール:遼(halca-kaukana)



web拍手を送る






日々のログ:今、ここ、想うこと
または:Twilog

はてなブックマーク
Mielenkiintoinen!

気になること、関心のある記事や参考にしたサイトなどのブックマーク集。コメント多め。

◆ピアノ録音置きブログ:Satellite HALCA

☆「はやぶさ2」、小惑星リュウグウ目指して順調に飛行中!☆
管理人・遼も小惑星探査機「はやぶさ2」を応援しています。



あかつき特設サイト
JAXA:金星探査機「あかつき」特設サイト

☆祝!「あかつき」は金星の衛星になりました☆
金星軌道上で観測準備中!

最新の記事

ラハティ シベリウス音楽祭2..
at 2017-11-09 23:03
「しきさい」(GCOM-C)..
at 2017-09-30 23:07
超巨大ブラックホールに迫る ..
at 2017-09-18 23:48
西洋文化に触れた驚き 「遥か..
at 2017-09-03 23:01
BBC Proms(プロムス..
at 2017-09-02 17:07
土星堪能星見 + 今日は伝統..
at 2017-08-28 21:58
BBC Proms(プロムス..
at 2017-08-18 23:48
惨敗。 ペルセウス座流星群2..
at 2017-08-14 21:43
BBC Proms(プロムス..
at 2017-07-31 22:32
BBC Proms(プロムス..
at 2017-07-14 23:08

カテゴリ

はじめにお読みください
プロフィール
本・読書
宇宙・天文
音楽
奏でること・うたうこと
Eテレ・NHK教育テレビ
フィンランド・Suomi/北欧
イラスト・落描き
日常/考えたこと
興味を持ったものいろいろ
旅・お出かけ
information

タグ

以前の記事

2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 12月
more...

検索