思い出の"発掘" 山岸凉子「ツタンカーメン」再読

 先日、NHKで放送されたこの番組。
NHK番組表(12月14日):「ダウントン・アビー」の舞台 ハイクレア城の秘密

 20世紀初頭のイギリスの伯爵家を舞台にしたドラマ「ダウントン・アビー」。気になってはいましたが観ておらず。この番組の放送の後の放送回を観てみました。

 今回の記事はドラマの話ではなく(紛らわしくてすみません)…その舞台となった「ハイクレア城」にまつわる話。この番組の予告を観て、「ハイクレア城」という名前に記憶がありました。どこかで聞いたことある。あれ、あれ…あ、もしかして…?そして、そのハイクレア城に住んでいる8代目カナーヴォン伯爵、ということろで、はっきりと思い出しました。
 カーナヴォン卿、ツタンカーメン王墓を発掘したひとりで、イギリス人考古学者・ハワード・カーターのパトロンの5代目ジョージ・ハーバート伯爵のことだ!!(番組内では「カナーヴォン」でしたが、一般的には「カーナヴォン」表記で普及していると思う、ああややこしい)とんでもないところでつながり、自分でも驚いていました。勿論番組はしっかりと観て、今もカナーヴォン伯爵家が続いていること、5代目伯爵のことを「曽祖父」と語る現8代目カナーヴォン伯爵とハイクレア城に残るツタンカーメンや古代エジプトの記録に興奮していました。すごいなぁ。ここにカーナヴォン卿が住んでいたのか…。

 と、何故こんな詳しいのか、思い入れがあるのか。この漫画が始まりでした。

ツタンカーメン (1) (潮漫画文庫)

山岸 凉子/潮出版社


 漫画界の巨匠・山岸凉子先生の作品「ツタンカーメン」。ちなみに、私も間違えていたのですが、山岸先生のお名前の「凉」は「にすい」。「さんずい」の「涼」ではないのですね。あと、「モーニング」で新連載が始まりましたね!読みました!この「ツタンカーメン」も歴史ものですが、新連載も歴史もの、読みます!

 話がずれましたwこの「ツタンカーメン」が、ハワード・カーターが主人公のツタンカーメン王墓発掘物語の漫画なのです。連載開始当時から読んでいました。ただ、その頃はタイトルは「封印」というタイトルで連載され、第1部が終わった後、待てども待てども第2部が始まらず…。数年後、本屋で単行本を見つけた時、掲載誌とタイトルが変わっていたことをようやく知りました。

 時は20世紀初頭。エジプト。考古局査察官で、発掘の現場監督もしているカーター。生真面目で正義感が強く、社交下手。絵が得意でその腕を買われ、17歳の時壁画を写し描きするためにエジプトに渡った。考古学も学び、発掘にも携わるようになる。そのカーターの前に事あるごとに現れる不思議な少年。紆余曲折ありながらも、カーターが巻き込まれるように、導かれるように、その瞬間に向かって時も人々も、カーターも動き出す。遺跡発掘にはお金も必要。そこへ、古代エジプトに魅せられ出資者となるカーナヴォン卿との出会い。アメリカ人で考古局の職員を現場監督に雇い(かつてカーターも一緒に発掘をしていた)「王家の谷」の発掘権を長年握っていたセオドア・デイビスがその発掘権を放棄。カーターとカーナヴォン卿の王家の谷発掘が始まる。
 その頃、王名表にも名前が無く、でもたまに王名のついたものが出土する"ツタンカーメン"という謎の王が考古学者たちを悩ませていた。まだ墓は見つかっていない。本当に存在したのか?何故王名表にも無い?もしかしたら、その"ツタンカーメン"の王墓はまだ見つかっていない…?しかも、"ツタンカーメン"は未盗掘の王墓かもしれない。当時、王墓を発掘しても既に盗掘され、金目のものは泥棒たちに奪われてしまっていた。カーターはその存在を信じ、粘り強く発掘を続ける。カーナヴォン卿が資金も尽きてきたので発掘をやめる、王家の谷発掘権を手放す、と言っても捨て身で説得し、あと1シーズンだけ、と続行を認めてくれた。
 その、発掘をやめると言われたカーターがカーナヴォン卿を説得しに向かったのが、邸宅のハイクレア城(作中では「ハイクリア城」と表記)。その他の場面でも出てきて、それで覚えていたのです。

 当時、連載を読んでいた10代の私は、この漫画で古代エジプトをはじめとする考古学に惹かれていきました。今思えば、史実は元にしているけれども、半分ぐらいフィクション入っている。第一カーターのキャラデザは史実と随分変えてある(後でツタンカーメン王墓発掘に関する本を読んだ時、史実のカーターの写真を見て全然違う!!と驚きました…w)、年齢も変えてある。それでも19世紀末から20世紀初頭のエジプト考古学の重鎮の学者たちも次々と出てくる。そして、作中でカーターが語る古代エジプト史、発掘と盗掘の歴史が活き活きと描かれ、魅了される。古代から既に始まっていた盗掘との闘いにはショックも受けました。歴史の勉強にもなる漫画です。
 また、カーターの周囲の人々も、皆いい味を出している。カーターにとって、カーナヴォン卿のほかに鍵となる人物が2人。カーナヴォン卿の愛娘のイーヴリンと、謎の少年に眼が似ているエジプト人の少年・カー。番組を観て、懐かしくなり再読したのですが、この2人とのエピソードがたまらなくグッと来ます。惹き込まれます。切ないです。イーヴリンとのエピソードは、前にも増して、切なく、やるせなく感じてしまったのは年齢のせいだろうか…。

 見事発掘しても、その後の方が大変というのもこの漫画で知りました。発掘したものの取り扱いと保存は最も重要。そのための資金も重要。しかも、発掘当時はエジプトの政治も変化していった時代(今もですね)。次々と困難が立ちはだかるも、精神的に強くなってゆくカーターの姿を応援したくなります。困難の中で、ひとつひとつ細かく記録し慎重に作業を進め、出てきたものから当時のことを紐解いてゆく。発掘の場面でも、ただ掘るのではなく、わずかな手がかりや観察して得られた考察を元に発掘してゆく。探偵の推理のよう(ちょうど「ホームズ」シリーズにハマっているので。どちらもイギリス人が活躍する話だ)。遺跡発掘の現実が興味深い。

 ハイクレア城が鍵となって、漫画を再読して、魅了された当時のことを思い出しました。私の思い出が発掘された気分です。と、同時に、大人になった今だから読み取れたことも沢山あるな、と感じました。私にとって、とても思い出深い作品です。

 この漫画を読んだからには、この本を読まねばなるまい。

ツタンカーメン発掘記〈上〉 (ちくま学芸文庫)

ハワード・カーター:著/酒井伝六、熊田亨:訳/筑摩書房


 カーター自身による記録。図書館で少しは読んだのですが、難しくて全部読んでいなかった。文庫化されていることを最近知り、もうこれは読むしかない。パラパラと読んでみたら、そんなにドラマティックな書き方はしていないのに、ワクワクしました。今ならきっと読めると思う。

【追記】読みました:ツタンカーメン発掘記
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by halca-kaukana057 | 2014-12-30 23:13 | 本・読書


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