[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 消えた生徒たち

 人形劇本編の感想に続けて、人形劇ノベライズ3巻の感想を。人形劇「ホームズ」三昧です(正典、他の映像作品も楽しんでますよ。ちなみに後日書きますが、正典全60編読了しました!)

・1巻(1~3話収録)感想:[NHK人形劇小説版]少年シャーロック ホームズ 15歳の名探偵!! +NHK人形劇版
・2巻(4・5話収録)感想:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎

【3巻収録の人形劇本編感想】
・6話「生真面目な証人の冒険」:ホームズを観察せよ、もしくはホームズ操作術 人形劇「シャーロックホームズ」第6話
・7話「イヌ語通訳の冒険」:論理的事実か幻想か 人形劇「シャーロックホームズ」第7話
・8・9話「愉快な四人組の冒険」
 恋するワトソンは前途多難? 人形劇「シャーロックホームズ」第8話
 事件に流れる不協和音、調和の終止? 人形劇「シャーロックホームズ」第9話

少年シャーロックホームズ 消えた生徒たち
アーサー・コナン・ドイル:原作/三谷幸喜:番組脚本 / 時海結以:著/千葉:絵/集英社・集英社みらい文庫/2015

 表紙はホームズ、ワトソン(ようやくワトソンのカラーイラストが!)、トビィ。可愛い。
 上記の通り、6話「生真面目な証人の冒険」、7話「イヌ語通訳の冒険」、8・9話「愉快な四人組の冒険」を収録しています。「愉快な四人組」は前後編なので入るかな?と思っていたのですが入りました。
 以前も書いた通り、人形劇本編とあらすじは同じです。でも、ノベライズは正典と同じくワトソンが執筆・語り手で完全ワトソン視点。人形劇本編にはない追加シーンや、詳しい描写も加えられています。

 人形劇本編は1話20分(実質それより少ない)。なので、どうしてもカットせざるを得ない描写や台詞、シーンが出てきてしまう。それを補うかのようなノベライズ。しかも、正典(原作)と同じようにワトソンが執筆・語り手の小説・物語であるところがいい。正典「白面の兵士」(「事件簿」収録)で、ワトスン(正典表記はこちらで)の小説的描写が気に食わないと言ったホームズに対して、ワトスンは「だったら自分で書けよ!(意訳)」と怒ってしまった。そこでホームズが自分で書いてみるのだがうまくいかない、やっぱりワトスンでないと…というのがあります(詳しくは正典で)。話はそれましたが、設定が15歳の学園もの、しかも人形劇の「ホームズ」でも、やっぱり執筆・語り手はワトソンだからこそ「ホームズ」なんだな、と感じます。

 6話から9話までは、新たな主要登場人物も登場し、ビートン校をめぐる物語の世界がまた深くなります。
 6話、レストレードとベインズ。思えば、レストレードは1・2話で登場した後、この6話まで登場していなかった。ノベライズ1巻では真面目で成績優秀な生徒が選ばれるという生活委員のレストレードが、ユーモラスな面もあり、数学のテストが5点だった…というのについてもワトソンのフォローが入ります。そしてベインズ。ベインズに対して、ホームズがどんな態度、心境でいたのかワトソン視点で語られます。ホームズの表情、視線、態度をよく観ています。観察することが大事、とホームズは言っている、特にこの3巻の6・7話では強調されることですが、ワトソンはホームズをとてもよく観察している。僅かな眼の動きも見逃していない。ワトソンも観察することを大事にしている、というわけだ。人形劇本編ではコミカルな演出になったベインズの推理劇場も、文章で書かれるとまた違う味わいになる。ラストは本編とは少し変えてあります。追加されたワトソンの想いが、今後を物語っているな、と感じます。
(遠くから観察しているよりも、直接関わるほうが、人間がわかることだって、あると思うな。ホームズは、いろんな感情を、知ったほうがいいのかもしれないよね)
(59ページより)

 しかも、観察することにかけてある。

 7話はマイクロフト。本編でもマイクロフトとシャーロック、ホームズ兄弟の仲、マイクロフトがしたことが強調され、暗い影を落とす回になりましたが、ノベライズではホームズ兄弟の心の溝、確執がより際立って描かれています。マイクロフトに対して、かなりよそよそしかったシャーロック。ここでもワトソンのホームズの僅かな変化もしっかり観察し捉え記録する力が発揮されています。そして、イヌ語を話せる人間など存在しないという事実から、事件をもみ消すマイクロフト。あがなえないシャーロック。事件後、シャーマンの飼育小屋の前でのシャーロックの言葉に本編を観た後で絶句したのですが、同じように絶句したワトソンに対してのシャーロックの反応が…本編以上に辛い。親友のワトソンにもどうにもできないものを、シャーロックは抱えている。だからこそ、その後のシーンは爽快でした。
 7話の本編の感想で、目隠しされて連れ去られても脅えたりか弱く振る舞ったりしないシャーマンを肝が据わっていると書いたのですが、実際のシャーマンは怖かった。怖いけど、強く振る舞っていたのか…。こんな心境が読めるのもノベライズのいいところ。

 8・9話は歌が鍵となる回なので、音楽が流れない本はちょっと不利?いいえ、本だからこそできる表現、そして聴覚からの情報は無くても、想像力でカバーすることだって出来ます。本編は視覚聴覚で、本は文章で、表現できるものがあります。8話のあるシーンが前袖にカラーのイラストがあります。可愛い。
 8・9話は依頼人のメアリーに一目惚れして、かっこよく見せたいけれども空回りしているワトソンを応援したくなりますが、屋根から落ちるシーン(ワトソンだけでなく)やラングデール・パイクから買った塗り薬などの詳しい描写に、本編だけではわからなかったことになるほど!と思いながら読んでいました。アドラー先生再登場のシーンでも、何かをかじっていたのは本編でわかったのですが、はっきりと何かはわからなかった。明記されています。
 自白のシーンでも、ホームズのこの台詞が気になっていたのですが、
「ボクらは敵じゃない。あなたがどんなにくやしい思いをしたか、だいたいわかっているつもりです」
(190ページ)

この「くやしい思い」がどれほどのものか…本だとじっくりと味わえます。そして、「あなたは宝物」の本当の意味、メアリー宛の差出人不明の絵葉書の謎の解決…これは、ワトソンにとってはショックだったんじゃないのか、と思っていたのですが、本編でもワトソンは微笑んでいた。ノベライズでは更に詳しい心境が語られています。ワトソン、本当に君はいい子だ…なんて優しくて素直で寛大なんだ…!
 その後のシーンは…その余韻ぶち壊しの本編では爆笑のシーンでしたが、文章で読んでも酷かったw「もはや、暴力だ!」これを読めて嬉しいですwしかも、ワトソンがこんなところで元ラガーマンスキルを発動していたり、ホームズが本編とはちょっと違う行動をしていたり、今日も平和な?221Bな描写でした。
 あと、ジョニーが見事なテノールの持ち主、と表記されていて、声楽をやっている身としては嬉しい表記でした。

 正典の特徴がもうひとつありました。物語の冒頭では、221Bでのホームズとワトスンの何気ない会話や行動が描かれることが少なくないのですが、人形劇ノベライズでも各物語の冒頭は、221Bの何気ない情景が描かれます。ワトソンは宿題や勉強をしている。一方、ホームズは相変わらず奇妙な実験をしている。化学実験に限らないところが面白い。「愉快な四人組」冒頭の実験は、わかっていても、文章で書かれると余計どんなシーンかは想像するしか無く、怪しい雰囲気で…大丈夫です。児童書ですから、すぐにネタばらしされます。

 ノベライズのお楽しみはイラスト。パペットのキャラデザを周到しつつ、アニメ調で子どもたちや若い子たちにも親しみやすく。レストレード、シャーマン、メアリーのイラストは見たかった。ベインズ、マイクロフト、ショルトー兄弟はどうなるかなと思っていましたが、うまいことアレンジしているなぁ。ロイロット先生も。
 2巻までにはあった巻末の人形劇本編の説明は無くなりました。井上文太さんのスケッチ画も載っていたのですが、3巻からはそれも無くなってしまった。残念です。

 ちなみに、この3巻は発売日は1月5日だったのですが、年末年始の書店の入荷の関係で、12月末に入手することが出来ました。twitter経由で教えていただきました。ありがとうございます。
 4巻は来月、2月5日発売です!

少年シャーロック ホームズ こわい先生たちのヒミツ (集英社みらい文庫)

コナン・ドイル / 集英社


 月一発売ですかwもう表紙も公開されています。メアリーとアガサが可愛い!
10話「失礼な似顔絵」、11話「まだらのひも」、12・13話「バスカーヴィル君と犬」の3話を収録とのこと。おお、4巻も前後編のバスカヴィル回を入れてくれるのか。嬉しいなぁ。ノベライズはおそらく全6巻になりそうです。
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by halca-kaukana057 | 2015-01-15 22:24 | 本・読書


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