はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙開発

 昨年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は順調に飛行を続けています。イオンエンジンも4基異常が無いことが確認されました。
 昨年11月12月あたりに怒涛の勢いで「はやぶさ2」関連本が次々と出版されました。ようやく読み始めています。まずはこの本から。「はやぶさ」「はやぶさ2」に人一倍強い思い入れを抱いて取材してきた松浦晋也さんの本。


はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査
松浦晋也/講談社・講談社現代新書/2014

 「はやぶさ」と、「はやぶさ」「はやぶさ2」に繋がるこれまでの日本の宇宙科学衛星・宇宙機での探査を振り返りながら、「はやぶさ2」とはどんな探査機か、初代「はやぶさ」とどこが違うのか、どこが強化されたのか。小惑星「1999 JU3」でどんな機器を使って探査を行うのか。わかりやすく書いています。「はやぶさ2」は初代「はやぶさ」とどう違うの?そもそも初代「はやぶさ」ってどんな探査機だったっけ?という素朴な疑問にもわかりやすく応えてくれる本です。

 でも、この本のメインは、「はやぶさ2」がたどって来た紆余曲折、打ち上げまでの苦難の道のりのこと。「はやぶさ2」ほど、政治や予算、社会や世相に翻弄された宇宙機は無いと思います。予算が打ち切られそうになったこと。予算はついても全く足りないこと。打ち上げるロケットを海外で見つけて来いということも。「1999 JU3」に打ち上げるためのリミットが近づく。それまでに機体を完成させられるのか。読みながら、そう言えばそうだった…と思い出すことばかりでした。

 思えば、私も「はやぶさ2」の予算が打ち切られそうになった時に、文部科学省・宇宙開発委員会宛にメールを出しました。
「はやぶさ」&「はやぶさ2」を応援します![2007年11月8日]
 この時は、「はやぶさ」は帰還の道の途中。「はやぶさ」が切り拓いている小惑星探査をここで止めないように。次に続けて欲しい。そんな想いでメールを出しました。その後、予算は出たものの十分な予算ではなく…。宇宙開発は科学や工学の世界だけのものではない。政治にも経済にも、社会全体に関わってくると痛感しました。

 その後、「はやぶさ」の帰還フィーバーで、「はやぶさ2」に対する見方は随分と変わりました。「はやぶさ2」だけでなく、宇宙開発や宇宙科学、研究に対する見方も随分変わったと感じています。5年前、金星探査機「あかつき」が燃料バルブのトラブルで金星周回軌道投入に失敗した時も、「はやぶさ」のように諦めないでまた挑戦すればいい、という見方に、世の中変わったな…と感じました。「はやぶさ」の満身創痍の冒険と、最後まで諦めなかったプロジェクトチームの情熱と信念、「はやぶさ」本体は大気圏再突入でまばゆい光を放ちながら消えていった…。地球に無事帰還したカプセルには、見事小惑星「イトカワ」の微粒子が入っていた、ミッションを完遂できた、というドラマティックな展開が、人々を惹き付けた。それをJAXAも工夫して伝え、宇宙ファンたちも様々な方法を使って草の根で表現した。「はやぶさ」フィーバーが「はやぶさ2」への追い風になった。

 そして、2014年12月3日、「はやぶさ2」は、海外のロケットでは無く、H2Aロケットで種子島から打ち上げられた。打ち上げ前に機体公開された時、本当に「はやぶさ2」が実現するんだ…ととても感慨深かったのを思い出す。あんな茨の道を歩んできた「はやぶさ2」の機体が完成したことに。そして、天候不良による延期はあったものの、その日1秒しかない打ち上げウィンドウで、オンタイムで打ち上げられ、無事宇宙の旅へ船出した。今、「はやぶさ2」が何の異常も無く飛行していることに安心している。このまま、順調な飛行を続け、「1999 JU3」でもひとつひとつ探査をこなし、無事に2020年カプセルを地球に帰還させて欲しい。トラブルによるドラマティックな展開は初代「はやぶさ」、そして「はやぶさ2」の打ち上げまでの紆余曲折で十分だ。「1999 JU3」の観たことも無い画像や、タッチダウンにはドキドキしたい。興奮しながら見守りたい。

 「はやぶさ2」は順調な飛行を続けて欲しい。でも、忘れてはいけない。「はやぶさ2」が、政治や予算に翻弄され、実現できるかできないかの瀬戸際に何度も何度も立たされていたことを。もし中止になったら、初代「はやぶさ」や、それ以前の宇宙機による積み重ねが途絶えてしまう。今後、日本が小惑星探査、深宇宙探査をやることはなくなってしまうだろう。私たちの生活には何の関係の無いような遠い宇宙の小さな星を探査することが、生命や太陽系の起源を探ることになる。やっぱり関係が無いわけじゃない。そのための手段を、私たちは持っている。絶やさないために、「はやぶさ2」の二の舞を繰り返さないために、記憶に留めておくだけでなく、活かされる記憶として記録されなければならないと思う。この本は、その記録です。

 さて、まだまだある「はやぶさ2」関連本…読みます。
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by halca-kaukana057 | 2015-02-02 23:32 | 本・読書


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