[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ こわい先生たちのヒミツ

 テレビの人形劇本編放送は終わりましたが、ノベライズはまだ完結していません。人形劇「シャーロックホームズ」のノベライズ4巻です。

・1巻(1~3話収録)感想:[NHK人形劇小説版]少年シャーロック ホームズ 15歳の名探偵!! +NHK人形劇版
・2巻(4・5話収録)感想:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 赤毛クラブの謎
・3巻(6~9話収録)感想:[NHK人形劇ノベライズ]少年シャーロックホームズ 消えた生徒たち

【4巻収録の人形劇本編感想】
・第10話「失礼な似顔絵の冒険」:見えているもの、見えないもの、見せないもの 人形劇「シャーロックホームズ」第10話
・第11話「まだらの紐の冒険」:15歳ホームズに足りないところ 人形劇「シャーロックホームズ」第11話
・第12話・13話「バスカーヴィル君と犬の冒険」
 どちらが本当?どちらが嘘?ワトソンの冒険 人形劇「シャーロックホームズ」第12話
 すれ違う想いの着地点+踊る人形暗号の謎 人形劇「シャーロックホームズ」第13話


少年シャーロック ホームズ こわい先生たちのヒミツ
アーサー・コナン・ドイル:原作/三谷幸喜:番組脚本 / 時海結以:著/千葉:絵/集英社・集英社みらい文庫/2015

 3巻で表紙にワトソンが加わりましたが、4巻はメアリー・モースタンとアガサも!女の子2人、可愛い!!
 上述の通り、第10話「失礼な似顔絵の冒険」、第11話「まだらの紐の冒険」、第12話・13話「バスカーヴィル君と犬の冒険」(前後編)の4話収録。3巻に続き4巻でも前後編を収録しているのは嬉しいです。あと、10話「まだらの紐」は先行放送の6回。先行放送で昨年夏に観て、ようやく小説化されました。待ってました。4巻の副題が「こわい先生たちのヒミツ」。まさに、ビートン校の怖い先生たちの内面が伺えるお話が、10話と11話に。
 今回も、人形劇本編の加筆、詳しい描写や追加シーンで物語をよりたっぷりと楽しめます。セリフへの加筆もあります。

 10話「失礼な似顔絵」。学園一怖いと噂されるミルヴァートン先生を、生徒たちが非常に怖がっている描写が伝わってくる。パイクも、レストレードも。ホームズも最初ベッポから依頼された時は顔色を変えた。ワトソンは転校生で、ミルヴァートン先生の授業も受けていないので、聞いた話でしかミルヴァートン先生のことを知らない。鞭を持って生徒を有無を言わさず叱る怖い先生、とだけ。だからこそ、ミルヴァートン先生に立ち向かった。
(ホームズ、それでいいの?何も手に入れずに引きさがるなんて…)
ホームズでも、こわくて、しっぽをまいてにげ帰るってことが、あるんだろうか。
そんなんじゃ、事件は解決しない。
みんな、ミルヴァートン先生を嫌ったまま……何も、解決しない。
ぼくのむねのおくに、小さな怒りが生まれた。何に対して怒っているのか、うまく言えないんだけど、とにかく、このままじゃだめだって思う。
(43ページ)

 ワトソンの怒り。温厚で優しく寛大なワトソンが怒るなんてことはあまり無い。ミルヴァートン先生がどんな先生なのかをアガサから聞いて知り、実際に接してみて、何かをしなくてはと勇気ある行動を起こすスイッチが入った。おそらく、ビートン校に来てから、初めての怒りだったのではないかと思う。1話でベッポに冤罪を被せられた時も怒ってはいたけど、その時はそれよりもホームズが助けてくれたことに重きを置いている。今回はこのワトソンの怒りからの行動が、ミルヴァートン先生を、そしてホームズをも動かすことになる。事件の翌日の221Bでのホームズのセリフ
「…どうやら、人間は、ぼくが思っている以上に、『奇妙』で、『複雑』な生きものらしい。それがわかっただけでも、収穫はあった」
(65ページ)

 本編を観た後、これはミルヴァートン先生とアガサのことだと思っていたのですが、ワトソンのことも含んでいるのだろうな、と。ホームズも、ワトソンがあの時思ったように簡単に諦めるつもりじゃなかった。
 10話は、このミルヴァートン先生とのシーン以外は、ギャグ回になってて読んでて何度も笑いましたwベッポの描いたホームズとワトソンの似顔絵を見た2人の反応のシーン。ワトソンのあの「下膨れのおっさん」の似顔絵を載せ爆笑しているホームズのイラスト、ホームズのこんな表情は初めてです。だが、ホームズの似顔絵を載せないのは意図があってですかwワトソンだけwアガサと鉢合わせしたシーンも、かなりコミカル。そして、最後、221Bで勝手に朝ご飯を食べるアガサに怒って椅子を持ち上げるホームズに、ワトソンが…そんなところで元ラガーマンスキル発動しなくていいからwその後のオチもお決まりですwドリフのコントみたいだな(対象年齢のこどもたち、10代の若い子たちはわかるかなぁ…w)

 11話「まだらの紐」、ようやくノベライズで読めた!(2回目)ストーナー先生の描写がいいです。ストーナー先生素敵です。このノベライズは「ホームズ」正典と同じくワトソンが書き手、語り手の、ワトソン視点。だからこそ、ロイロット先生との火かき棒対決を読みたかった。ワトソンはどう思っていたのか。ホームズは出来ると信じているからこそ、火かき棒をワトソンに渡した。その信頼に応えなければ!と力を振り絞り、元に戻した棒をロイロット先生に突き出した。これは本編にはないシーン。ワトソン、カッコイイ!
 ロイロット先生の自白のシーン…本編で観ても切なかったのですが、文章で読むとさらに切ない。
「だろうな。だから、お前はダメなんだ」

このロイロット先生の言葉に象徴される、ホームズに足りないもの…人と心を通わすことには興味が無い。わかろうとしない。人間の心理には興味はあっても、実際目の前にいる自分に関わりのある人が何を思って、誰にどんな想いを抱いて、その想いをどうしたいのか…現実の人間の感情の動きには深く立ち入ろうとしなかった。人形劇本編を観た後、そんなことを思ったのですが、ノベライズ10話、11話を読んでいると、ホームズはかなり人の気持ちに配慮して行動しているところが伺えます。ミルヴァートン先生がホームズとワトソンを見逃してくれたこと、沼毒蛇に襲われたシャーマンを助けたマングースのロイロット先生のことを「通りすがりのマングース」と表現したこと。出来ないわけではないけれども、推理に夢中になっている時はダメということか…?成長の途中なので、ムラがあるということか…?そういうことにしておきます。
 ストーナー先生の研究室で、人形劇本編ではワトソンが実験器具を物珍しげに見ていましたが、ノベライズは…ホームズがそれ以上にノリノリでしたwだよなぁ、221Bには実験道具がたくさんある。化学実験好きのホームズが惹かれないわけないよなぁw

 12話・13話「バスカーヴィル君と犬」。心を通わす、というテーマがここでひとつの点に着地します。ヘンリー・バスカーヴィルが靴下を探していたシーンが、バスカーヴィルの部屋でもなく一体どこなのか不思議に思っていましたが、ノベライズで詳しく書かれていました。ワトソンが拾ったモンスタードッグの毛が何故光っていたのかも、ちゃんと答えが出されています。本編では伏線回収しないまま終わっちゃったからなぁ。
 メアリーとバスカーヴィルの関係を気にし、メアリーへの想いが通じて欲しいとアピールするワトソンですが、どんな行動からもメアリーの優しさや心遣いを汲み取り、メアリーの幸せを願う姿が本当に一途です。そして、やっぱりワトソンは話を盛っていましたw
 4巻のワトソンは、自分の気持ちに正直に行動している。ミルヴァートン先生とのことも、沼にはまったステイプルトンを助けようとするシーンも。事件のことに深入りしないでと言ったメアリーも含めて、辛い思いをしている人を放っておけない。目の前で困っている人がいて、力になれるのならなりたい。そんなワトソンの感情と行動が一致し、力になって表れるのが13話のステイプルトンを助けるシーン。
 一方のホームズは、やはり考えて行動するタイプ。考えて行動したいのに、それを妨げられた時、ホームズも感情的になってしまう。ベインズが仕掛けた暗号をアガサは解読してしまい、ホームズは解読できなかった。ベインズの行動とネチネチとした態度、アガサの無邪気さは、ホームズが考えた行動の想定外。でも、アガサに冷たく当たってしまったことは後悔していて、仲直りしたい。ホームズが心を通わすこと、自分から折れることが出来るようになったのは、本当に大きな成長です。このシーンは、ワトソンは見ていないので、ワトソン視点ではどのように描かれるかと思っていたのですが、そう来ましたか。

 この12・13話、残念なのが「踊る人形」暗号部分の記述。黒板に暗号が書かれ、それをじっと見ているホームズとアガサのイラストのところでしか、暗号を見ることが出来ない。「E」の暗号がどの暗号なのかが本文を読んだだけでははっきりとわからない。本編にあったとおり、暗号の一部が強い筆跡で書かれているはずなのに、イラストではそのように書かれていない。暗号解読のシーンでも、日本語訳だけセリフで書いて、どの暗号がどのアルファベットに対応しているのかわからない。正典(原作)「踊る人形」の表記のようにしてほしかった。あくまでテレビで放送されたもののノベライズですが、テレビで放送されたものを観ないと暗号のことがよくわからないとは…。小説でよりじっくり味わいたいなら、これは逆効果では…。児童文庫なので、英語を載せるわけにもいかない…いえいえ、児童文庫・児童向けの訳の「ホームズ」正典の「踊る人形」では、一般向けのものと同じようにどの暗号がどのアルファベットを意味しているのか、英文もちゃんと記述しています。この人形劇はアレンジはしてありますが、正典に沿った物語になっている。「踊る人形」暗号も正典と同じ。だからこそ、ノベライズでも正典と同じように表記して欲しかった。英文は今はわからなくても、後で英語を習った時に思い出したり、「踊る人形」原作を読んだ時に同じだと気がつけるように。英語を学んでいる10代の子たちにはいい勉強にもなると思う。勿体無い。ここがとても残念です。

 4巻には、パペットデザインの井上文太さんのイラストが載っています。よかった、復活して。

 5巻はいつ出るのだろう?3月にも出るだろうと思ったらなかった。次の巻に14話~18話最終話まで載せるのかなぁ?
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by halca-kaukana057 | 2015-02-23 22:23 | 本・読書


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