エジプト学夜話

 古代エジプトに関する本をちまちまと読んでいます。以前読んだ「古代エジプトうんちく図鑑」で参考文献にもなっていた本。
古代エジプトうんちく図鑑
 この本、本当にインパクト強い…w 

エジプト学夜話
酒井傳六/青土社/1997(1980年に出版されたものに加筆した新版)

 著者の酒井さんは、朝日新聞の記者としてエジプトに滞在していたのがきっかけで、古代エジプトに関する著作や訳をするようになった。「ツタンカーメン発掘記」も酒井さんの訳。

 本でもテレビ番組でも、古代エジプトに触れるといつも思うのは、そのスケールの大きさだ。第1王朝は紀元前3000年頃。第31王朝、紀元前332年にアレクサンドロス大王(アレクサンドロス3世)によって征服されるまでを「古代エジプト」と呼ぶ。初期のピラミッドがつくられ始めたのが第3王朝・ジョセル王。クフ王の大ピラミッドが第4王朝、紀元前2500年ごろ。首都がテーベ(ルクソール)となる新王国時代・第18王朝~第20王朝が紀元前1500年~紀元前1200年ごろ。「古代エジプト」と一言で言っても、古王国時代と新王国時代、アレクサンドロス大王に征服されたマケドニア朝では全然違う。まずこの時間軸でクラクラしてしまう。
 さらに、ピラミッドや神殿・葬祭殿などの遺跡もスケールが大きい。どんな本を読んでも、あんな大きなピラミッドを古代の人々はどうやってつくったのだろう…?と思わずにはいられない。そんな建造物のスケールにもクラクラする。クラクラするけれども、古代エジプトには惹かれる。

 この本は、そんな「古代エジプト」を研究する「エジプト学」について描いている本。「古代エジプト」について語る際、2つに分かれる。古代エジプトそのものについて語るのと、古代エジプトの研究や発掘・研究した人々について語ること。古代エジプトそのものについて語ろうとしても、発掘や研究が進んでいなければわからないことだらけ。古代エジプトに魅せられて、発掘・研究した人々がいたからこそ、現在、私は古代エジプトについて少しずつ学ぶことが出来ている。

 古代エジプトについて知ろうとして、まずぶち当たるのが言葉。ヒエログリフが読めないとさっぱりわからない。そのヒエログリフを解読したジャン・フランソワ・シャンポリオン。「古代エジプトうんちく図鑑」でも書かれていたのですが、シャンポリオンには兄・ジャック・ジョゼフがいた。シャンポリオンと言うと一般的には弟のジャン・フランソワで、この本では「シャンポリオン弟」と書いている。兄のジャック・ジョゼフがいなければ、弟・ジャン・フランソワはエジプトに行くことも、ヒエログリフを解読することも出来なかった、と。兄・ジャック・ジョゼフは元々古代エジプトに興味を持ち、実際にエジプトには行けなかったが、論文を書きつづけた。そして、弟・ジャン・フランソワが先に死んだ後も、弟の残した論文をまとめ出版した。シャンポリオン兄弟がいたからこそ、ヒエログリフも解読され、古代エジプトのこともわかるようになった。ここから「エジプト学」が始まった、と。

 エジプト学で面白いのは、論文を書いて博士号をとった学者だけが拓いたのではない、懐の大きさがあること。エジプトに遠征し、ピラミッドなどをヨーロッパに紹介したナポレオンもそうだし、それ以降多くの人々が立場に関係なくエジプトに渡った。19世紀に「エジプト調査財団」を設立し、フリンダーズ・ピートリーらエジプト学者たちを支援し、エジプトに学者たちを送り続けたイギリス人アメリア・エドワーズもその一人だろう。エドワーズ女史は売れっ子小説家。発掘や研究に資金は欠かせない…という話で連想するのは、ツタンカーメン王墓を発掘したハワード・カーターのパトロンのカーナヴォン卿。カーナヴォン卿はパトロン、スポンサーだっただけでなく、カーターと共に論文を出している。その「テーベにおける5年間の発掘」の序文が掲載されているのだが、面白い。序文だけなのが残念…。カーナヴォン卿はこんな風に発掘や、出土した遺物をみていたのか、と伺える。エドワーズ女史もカーナヴォン卿も、資金提供だけでなく、古代エジプトやエジプト学に理解を示し魅せられて学んでいたからこそ、資金を提供し続けられたのだなと思う。
 ちなみに、この本で、カーターによるツタンカーメン王墓発掘の資料がまとまって出版されていない、と書かれていますが、それを補うのがこのブログでも何度か紹介したグリフィス研究所ホームページで自由に閲覧できるデータなのかな。インターネットを上手く活用している。著者の酒井さんは1991年に逝去されています。あのホームページを見たら喜ぶだろうか。

 しかし、懐は大きいけれども、その分失うものも多かったのも事実。遺跡を破壊する乱暴でずさんな発掘(発掘と言えるのか?)。金目のものはエジプト国外に流出し、取り締まっても裏取引もされた。大英博物館のエジプト関係の所蔵品と切っては切れない関係のウォーリス・バッジ。大英博物館に出土品を買い入れたり、最初から大英博物館に収める目的で発掘したり…。大英博物館の光と影を見ているような複雑な気持ちになる。

 また、エジプトロジストたち同士の対立も大変…。学問に人間ドラマは要らないかもしれないけど、こういう話はまた違った見方ができて面白い。エジプトロジストも気に食わない人もいて、人間なんだなぁ、と。

 最後には、ヴェルディのオペラ「アイーダ」についても。第25・26王朝を想定した舞台で、サッカラのセラペウムを発掘し、エジプト考古局を創設したオーギュスト・マリエットが原作というのは知ってはいたが、それを知ってから「アイーダ」を視聴したことはなかったので、俄然観たくなった。まずはハイライトかな。2013年のNHK音楽祭で、グスターボ・ドゥダメル指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団の全曲版をラジオで聴いたが、あれはよかったなぁ。

 古代エジプトのあらゆる意味でのスケールの大きさを実感する本でした。
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by halca-kaukana057 | 2015-06-18 22:40 | 本・読書


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