[シベリウス生誕150年記念]クレルヴォ交響曲を聴こう その1

 もう11月も終わり…。12月…2015年が終わってしまう。今年はシベリウス生誕150年記念年。CDに加え、オンデマンドのライヴ録音も色々と聴いています。シベリウスの誕生日の12月8日も近い。
 来年になっても、シベリウスは聴く気満々なのですが(むしろ12月8日で150年。来年の12月7日まで延長でもいいんじゃないかと前にも書きましたが、本当そう思ってます…w)、何か特集企画をやりたい。

 ということで、「クレルヴォ交響曲」op.7の聴き比べをやります!

 これまで、シベリウス作品の中でもとっつき難いと感じていた「クレルヴォ」。交響曲なのか、どうなのかともよく議論になるみたいですが…。演奏時間は大体70分(ベートーヴェンの第九と同じぐらいと考えればそれほどでもないか)。ソプラノ(またはメゾソプラノ)とバリトンの独唱と男声合唱が入る、声楽つきの規模の大きな曲。シベリウスというと私は4番以降の後期の交響曲を真っ先に思い浮かべるので、初期の、しかも規模の大きな曲はなかなか親しめずにいたのです。シベリウスイヤーなのに、この「クレルヴォ」はあまり演奏されていないし…(フィンランド語の声楽ソロと男声合唱が難しいのかなぁ。フィンランドは声楽・合唱も強いんだけどなぁ)
 それが、今年のPromsとラハティ・シベリウス音楽祭で演奏された「クレルヴォ」を聴いて、この曲いい!もっと聴きたい!と思うようになり、持っていてもあまり聴かずにいたCDを聴き始めました。

 第1回、取り上げるのは、
パーヴォ・ベルグルンド指揮ボーンマス響
ライリ・コスティア(ソプラノ) 、ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)、ヘルシンキ大学男声合唱団


 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」の「クレルヴォ」の章に基づく作品。クレルヴォはカレルヴォの息子。父の兄・ウンタモに一族を滅ぼされ、幼い頃から復讐を誓う。力も精神力も強い。成長したクレルヴォは、鍛冶師のイルマリネンの家で働くことになるが、イルマリネンの妻の悪戯に激怒して殺してしまう。その後、クレルヴォは死んだはずの両親と再会、妹も生きていると聞かせれる。両親と暮らし、ある日、森の中で可愛らしい少女と出会う。その少女はクレルヴォの妹だった。それを知らず…。真実を知ったクレルヴォの妹は自殺。クレルヴォも激しく後悔、自分を責め、ウンタモ一族を滅ぼす旅に出る。ウンタモ一族を滅ぼしたものの、両親も亡くなり、家もなく…クレルヴォはこれまでの人生を振り返り、自殺する。

 この救いようのない物語も、「クレルヴォ」は親しみにくいと感じていた理由だったと思います。悲劇の英雄。英雄扱いになっていますが、実際にフィンランドの人々はクレルヴォをどんな人物と見ているのだろう?第3楽章「クレルヴォとその妹」で男性合唱とソプラノ・バリトン独唱、第5楽章「クレルヴォの死」で男声合唱が入ります。

 シベリウスの出世作になったのに、シベリウスは演奏されることを嫌がり、スコアも出版しない。シベリウスが死去した後に全曲演奏され、1970年、このベルグルンド&ボーンマス響盤が初めての録音になりました。今私が接することのできる最初の「クレルヴォ」がこのCDというわけです。さすがはベルグルンド先生。

 第1楽章「序章」、第2楽章「クレルヴォの青春」と重々しい音楽が続きます。第2楽章の静かな雰囲気は、やわらかさもあるが、やはり緊迫している。そして第3楽章。「カレワラ」をカンテレで歌う「カンテレンタル」と同じように5拍子で、軽快に明るめに始まり、「Kullervo Kalervon poika」と男声合唱が。このヘルシンキ大学男声合唱団の歌が、人の声の呼吸、やわらかな「人間の声」を感じられていい。それでいて、クレルヴォとその妹の悲劇を語る険しさ、迫力や緊張感も十分。フィンランド語の歌詞も聴きやすい。「カレワラ」は元々韻を踏むように書かれているのですが、その韻のリズムが心地いい。いい合唱だなと思いながら聴いています。

 声楽ソロの2人もいい。妹役のソプラノは甘さも持ちつつも、悲しみに。バリトンの「クレルヴォの嘆き」の部分の重さ、迫力もたまりません。

 この合唱が、第5楽章ではただならぬ雰囲気に。冒頭、オケの音は小さくひっそりとしていて、合唱がメインで聴こえる。幼い頃から誓っていた復讐を果たしたのに、何もかも失ってしまったクレルヴォの計り知れない悲しみがストレートに伝わってきます。徐々にクレッシェンドしてゆき、クレルヴォの最期が…。とても重い。重い演奏です。聴いた後、ぐったりとしてしまいます。いい意味で。クレルヴォの悲劇は救いようがないけれども、救いがなくても、過酷な運命を背負っていても、歯を食いしばり生き、そして劇的な最期を迎えるクレルヴォの生涯をちゃんと聴きたいと思う。やはり「クレルヴォ」はオペラのような部分があります。

 第4楽章「クレルヴォの出征」も、颯爽としているけれども突き刺さるような鋭さがある。弦のざわめきがいいです。シベリウスの弦のざわめき(ささやき)はいい。角笛のようなホルンや、ファンファーレのような金管もアクセントになっている。

 あと、打楽器陣も、迫力があり、演奏をビシッと引き締めている。

 「クレルヴォ」という作品を世に広めることになったこの録音に感謝です。この後に続く録音もどんどん聴いていきます。そのうち聴きどころや魅力をどんどん見つけられたらいいな。
 ちなみに、ベルグルンドはヘルシンキフィルとも「クレルヴォ」を録音しています。こちらも聴けたらいいな。

・関連記事:Proms2015 シベリウスプログラム&シベリウス音楽祭 まとめ
 このPromsとシベリウス音楽祭で演奏された、サカリ・オラモ指揮BBC響の演奏が「クレルヴォ」をもっと聴きたいと思ったきっかけでした。迫力と疾走感満点のいい演奏です。声楽陣もいい。この記事のリンク先(「動画その2」)、まだ聴けます。(BBC Radio3のは11月29日まで。中身は同じです)
[PR]
by halca-kaukana057 | 2015-11-28 23:20 | 音楽


好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


by 遼 (はるか)

プロフィールを見る

S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

お知らせ・別サイト

管理人HN:(はるか)
 熱しやすく冷めにくい、何が好きになるかわからない好奇心のかたまり。このブログでは好きなものを、好き放題に語ってます。

プロフィール
*2014.9.5:更新
はてなプロフィール:遼(halca-kaukana)



web拍手を送る






日々のログ:今、ここ、想うこと
または:Twilog

はてなブックマーク
Mielenkiintoinen!

気になること、関心のある記事や参考にしたサイトなどのブックマーク集。コメント多め。

◆ピアノ録音置きブログ:Satellite HALCA

☆「はやぶさ2」、小惑星リュウグウ目指して順調に飛行中!☆
管理人・遼も小惑星探査機「はやぶさ2」を応援しています。



あかつき特設サイト
JAXA:金星探査機「あかつき」特設サイト

☆祝!「あかつき」は金星の衛星になりました☆
金星軌道上で観測準備中!

最新の記事

理化学研究所創立100年記念..
at 2017-04-26 22:11
「星の物語」切手 第5集 押..
at 2017-03-11 21:47
星の案内人 4 [完結]
at 2017-03-07 22:30
最後は南天 「星の物語」切手..
at 2017-03-04 22:44
2017:あけましておめでと..
at 2017-01-05 21:45
クリスマスの再会 クインテッ..
at 2016-12-24 21:50
【予告】「クインテット」のク..
at 2016-12-17 22:09
一緒に音楽を楽しもう Pro..
at 2016-12-17 16:43
指揮者特印! 冬のグリーティ..
at 2016-12-08 20:58
師走の一息のISS&月&金星観望
at 2016-12-03 21:53

カテゴリ

はじめにお読みください
プロフィール
本・読書
宇宙・天文
音楽
奏でること・うたうこと
Eテレ・NHK教育テレビ
フィンランド・Suomi/北欧
イラスト・落描き
日常/考えたこと
興味を持ったものいろいろ
旅・お出かけ
information

タグ

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
more...

検索